※軽いホラーあり
……オワタ。
光の速度で頭を抱えた。
何故こうなってしまったのかというと……学校の英単語小テストで、死にました。
最近は《メルヘンヒーローズ》の尾行とか、宴会とかで、勉強できる時間がなかったんだって。
いや、別にたった一回の単語テストなら、カバーできなくもないんだが、最近点数悪いんだよなぁ。
UAOが面白いのがいけないと思うんだよ。だからこそUAOは面白いんだよ。
とにかく、このままでは留年しかねない。
「ってことで、今夜、夜の学校に侵入します」
「「イエー」」
Mission, 夜の学校に侵入して、テストを書き換えろ!
メンバー、悠馬、東間、ディア
会長と伊織も誘えるのだが、会長は真面目だから次のテストの勉強させられそうだし、伊織は……カオスになる気がするからやめとこ。
まあ、多くなりすぎても隠密行動しにくくなるだけだし、これくらいで十分だろ。
「イグノ、アンペル、校舎前に着きました。オーバー」
『こちらガンツ、了解した。校門を乗り越えて、侵入したまえ。オーバー』
「こちらアンペル、了解」
学校の校門なんて、身長の1.5倍くらいしかないから、乗り越えるのはそこまで難しくはない。
先に俺が登って、身長が低いアンペルを引き上げた。
ちなみに、ゲーム名で呼び合っているのは、コードネームの代わりである。
さて、問題はここからだ。
「こちらイグノ、敷地内に侵入成功した。オーバー」
『こちらガンツ、了解した。裏口からで校舎内へ突入したまえ』
「イエッサー」
「おい、了解だろ」
とにかく、バレないように、裏口から校舎に
「……おい、これどうやって鍵を開けるんダ?」
「知らねえの?俺の108の特技その18、ピッキング」
そう言って、ポケットから取り出したのは……ギザギザに折られた、日本の針金だった。
ちなみに、その特技は数字が大きくなるほどショボくなり、108個目は口笛とかになる。
カチャカチャカチャ
10分後、閉まっていた鍵が開いた。
「ピッキングに成功、職員室へ向かう。オーバー」
『十分に警戒して進行せよ』
幸い職員室は近いから、ササっと行って、とっとと寝よう。
適当に進んで
「待テ」
「うお!」
ディア……じゃなくて、アンペルに腕を引っ張られて、尻もちを着いてしまった。
「おい、何すんだ」
「これを着けてみろ」
そう言って渡された眼鏡をかけると……よくスパイ映画で見るような、赤い線が無数に張られていた。
「なんだこれ」
「赤外線センサーだ、当たると通報がいくゾ」
「なんで公立高校にそんなのが張られてるんだぁ!?」
「……どっかから多額の支援があったんだロ」
うん、お前のせいか。
まあ、通らなきゃいけないよなぁ。
幸い体は柔らかい方なので、ゆっくりと乗り越え、下をくぐり、ほふく前進などなどで、なんとか搔い潜っていく。
「おい、アンペルもさっさと来い」
「ちょっと待て、この辺に……」
ったく、何やってんだか。
とにかく、俺だけでも職員室に
「あっ」
足を滑らせて、センサーに触れ……ギリギリで、全てのセンサーが無くなった。
振り返ると、アンペルが廊下の壁の底辺にある、カモフラージュされたスイッチを押していた。
「警備員用の一時停止スイッチがあるんだヨ」
「ありがたいけど、先に言っておいてくれよ!」
てか、警備員までいるのか。
「警備員を警戒していきたいな」
「……ここだけ1月くらいになったのかな?」
一回足を止めて、よく音を聞いてみたのだが……シーンとしていて、なんの音も聞こえない。
今は近くにはいないみたいだ。
「さっさと行ってしまおう」
「そうだナ」
これ以上のトラップはなさそうだし、職員室のドアのピッキングをして、俺の英語担当教師の机から、『辰海悠馬』のテストを必死に改変していく。
だが……今考えても分かんないわ。
「そこfoolだぞ」
「ああ、確かにそんな感じだった気がする」
「そこはcrazyだぜ」
「ありがとう」
背後からアンペルが口出ししてくれて、なんとか英語全ての回答を書き換えることができた。
というか、全部の回答って……考えるのをやめよう。
「よし、脱出するぞ」
「分かっタ」
軽く走って廊下を駆け抜け、
「ッツ、止まれ(小声)」
「んー」
口を塞いで……何かの足音が聞こえてきた。
恐らく、警備員。
「こちらイグノ、警備員が迫ってきてる。オーバー」
『他の出口は使えるか?オーバー』
「いや、センサーのスイッチの場所が分からないから、多分逃げ切れない。打開策が欲しい。オーバー」
『……知ってるか?この学校にはカップルの幽霊が出るらしいぜ』
ああ、あれね。
うちの学校には、そこそこ有名な伝説というか、心霊話がある。
かいつまんで説明すると、昔まだそういう意識が低い頃に、いじめられている女の子がいた。
内容は想像にお任せするが、そこそこハードで、自殺も考えてた時期、転校生の一人の男子に救われたらしい。
彼女を優しい言葉で癒しつつ、しっかりと証拠をとって、色んな所に通報したとか。
何故そこまでしたのかは、昔の知り合いだとか、一目惚れとか、色々な説があるが、真相はわからない。
俺も何故伊織に好かれてるか分からないし、そんなもんなんだろ。
で、通報の仕方が良かったのか、まさかの警察まで動き出し、逮捕も目前という頃、自暴自棄になったいじめグループが刃物を持ってきて、庇った男子が殺され、女子も自分から後を追った。
それから、牢獄のいじめグループが謎の急死をしたり、一部の生徒が変な声が聞こえたとか言い出して……しっかりと伝説になった。
まあそんなこんなで、今でもたまに発見報告がされるような幽霊たちなのだが、
「……お前アニメの見過ぎだろ」
「もうそれしかないんだよ」
マジでやんの?
アンペルの方を見てみたが、
「……祖国にとってはあいさつダ」
「前調べた感じ、そんな文化なかったけど」
「貴族の風習ってやつだヨ」
……Kiss me Kiss me Baby
◇
「ふぁああ」
眠い目を擦って、夜の学校を巡回する。
給料が多いから2か月ほどこの仕事をやってるんだけど、まだ一回も不審者に会っていない。
せいぜい猫が入ってきたくらいだ。
あーあ、同僚は幽霊の話なんてし始めるし、家のローンがなかったらこんな怖い仕事してないのに。
ライトで廊下を照らすと……靴が見えた。
不審者かと身構えて……一組のカップルがキスしていた。
まさか、噂の幽霊!?
そして、こっちに気づいたカップルの男が、自分が刺された刃物を取り出して、襲い掛か
「ギャアアァァ‼」
全力で方向転換して、全力で逃げた。
◇
「危ねー」
ビビりな警備員で助かった。
「お前何で刃物なんて持ってきてるんダ?」
「サバイバル必需品だろ。こちらイグノ、警備員の撃退に完了した。オーバー」
『了解した。迅速に裏口から脱出して鍵を閉め、帰還せよ』
「「ラジャー」」
「ふー。今日はありがとな」
俺の家には伊織、東間の家には統華がいるため、アンペルの家で3人でパーティーをした。
明日は土曜日だし、寝なくても問題なし。
「またなんか映画みようヨ」
「何がいい?」
「英語の映画でも見たら?」
……もう英語なんてやだ。
「君たちは英語分かっていいよなぁ。テストの回答もすぐに教えてくれたし」
「え、私は何も言ってないゾ?」
「……は?」
「職員室の入口で、警備員を警戒してたからナ」
「俺も何も言ってない」
そういえば、アンペル特有のなまりがなかった気がする。
……じゃあ、テストの回答を教えてくれたのは?
テストは100点でした。
この小説も大台(適当)の100ポイントになりました。
いつもありがとうございます。