花にまみれた決着
状況整理のお時間です。
イグノ 特に損害無し
ガンツ まだまだストック残ってる
ファニー あと7回
アンペル ほぼMP残ってない
シェンラ 特に損害無し ただ、無敵化は残ってない
ギコー 少し削れてる
ミワ 死
ラチック ちょっとMPが減ってる
Rex そろそろMPがやばい
マドカ 残り4割 腹のキズは再生した
【桃太郎】 特に損害無し
【浦島太郎】 特に損害無し
【乙姫】 死
【泉の女神】 少し削れてる
【カエルの王子】 やばいオーラを発してる
【人魚姫】 死
【鬼六】 そこそこ削れてる
【金色の魚】 死
【女郎ぐも】 相手の陣地が糸だらけ
【水龍】 特に損害なし
人数的には7対9で、結構有利な状況。
それに、ファニーとアンペルは相手の陣地の奥まで潜り込めていて……すごいオーラを出した【カエルの王子】が二人を殺った。
ファニーは生き返るが、すぐにもう一回やられてしまう。
さらに、【女郎ぐも】の糸で動きにくくなり……ピンチ。
すぐに救援に行こうとしたが、【桃太郎】に邪魔されて、行けない。
「っつ、どけ!」
「ヤダね」
クソ、とっておきたかったけど、加速で無理やり……
『待ちなさい。ファニーのことは諦めて』
「見捨てんのか!?」
「いいの。時間を稼いでる間に態勢を整えて」
……超ステータスの怪物に、一人で抗っているファニー自身の言葉もあって、彼女を助けるのは諦めた。
『……態勢を整えます。ギコーはそのまま【鬼六】の相手、マドカとガンツで【水龍】と【泉の女神】を抑えてちょうだい。Rexは【浦島太郎】と【女郎ぐも】を牽制、イグノはシェンラと交代』
「……俺は何するの?」
「私と一緒にあの怪物対処」
責任重大じゃないか。
後ろから来たシェンラさんと【桃太郎】の相手を交代してもらい、少しだけラチックと戦略を練っておく。
シェンラさんはキルレートゼロだから、そうそう突破されることはないだろう。
そして、とうとうファニーが突破され……さっきまで醜い顔をしていた男は、金髪イケメンになっていた。
軽めの鎧を着て、鋭い剣を装備している。
「かかってきな」
「私たちが相手よ」
そう言って挑発してみたら、こっちに向かってきてくれた。
正直、あの超スピードで、他の人たちの方へ行かれると、ゲームオーバーだったので、マジで助かる。
だが、それは2対1でも勝てる自信があるということに他ならない。
奴が剣を振りかぶり、
ザッシュ
俺の木刀が半ばまで切り込まれた。
手にも衝撃が走り、少しだけHPが減る。
「〈ブラックランス〉」
ラチックが俺の背後から剣を抑えて、二人掛かりで抑え込む。
ザッザッ
右からきた剣を、さっき半ばまでいった箇所とは違う場所で受け、切り返して左にきた剣を、ラチックの槍が受けた。
手が空いた俺が、左手の木刀で槍を支え、右手の[クマ魚の返り血]で殴り、少しだけダメージを与える。
なるべく俺が剣を止め、ラチックが背後からそれを補助す形だ。
しかし、段々使っている木刀がボロボロになってきたので、加速して腹を蹴りつけ、吹っ飛ばす。
そして、練習通りアイテム欄を開いて、新しい木刀を取り出した。
このループなら、先に相手を削りきれるかな?
だが、吹っ飛ばされて距離をとられているまま、何かを取り出して……サッカーボールのようなサイズの、金たm。
いや、あれは金色の毬だな。
今まであんまり下ネタ使ってなかったのによぉ……。
そんなこんなで、奴が足を引き……アレはやばい!
「ッツ、ラチック!」
「え、キャッ!」
ラチックの手を取り、ギリギリで溜まった加速を使って、全力で回避運動をとる。
ちょっと力加減をミスって、彼女は脱臼してしまったみたいだが、
「〈王族の遊び〉」
すごいスピードで、金の毬が飛んで来た。
何とか避けられたが、着弾した決闘場の床は、ダイナマイトでも爆発したみたいになっていた。
「……アレには当たりたくないわね」
「加速は大切にしておこう。あと、純愛頼む」
「〈殺戮魚の純愛〉」
彼女の強力なバフを貰って、上段からの剣を受け止めた。
まだ力のステータスは負けているが、なんとか左に流し、
「〈リングス・トライデント〉」
ラチックの突きが、奴の腹に刺さった。
……あの威力なら貫通してもいいのだが、やっぱり防御まで高水準になっている。
ジックリやっていけば、多分いけ……左上の、RexのHPバーが、完全に真っ黒になった。
幾ら糸を焼き切れるといっても、【浦島太郎】と【女郎ぐも】の二人を相手して、MPもそこまで残っていなかったから、しょうがないか。
とにかく、あいつらが加勢してくる前に、こいつを倒しきらなければ。
「アレをやる」
「……成功率は?」
「二割くらい」
分の悪い賭けだが、これしかない。
「大丈夫、俺は勝負強い方だ」
「……カバーはするわ」
「よろしく」
木刀を左手片方で持ち、右手にもう一本の木刀を出した。
そして、まずは加速。
さらに一瞬でスキル【リーフィーシードラゴン】に切り替えて、〈花剣舞〉を発動。
要するに、加速+〈花剣舞〉で、実質2つのスキルで、ラチックに言われた通り、リズムが早い音楽をさらに倍くらいにして頭で流し、
「うおおおおおおおおおおおおおおおお」
少し防がれたが、ほぼ適当に振られているだけの木刀が相手を襲う。
ついでに、加速でものすごいスピードで俺の周囲を回っている花びらが、切り刻む。
これが、俺の最高火力だ!
加速の2秒が切れて、最後に少しだけ残った相手のHPを、
「〈古流槍術・閃光突き〉」
ラチックが削りきった。
「シャア!」
「まだよ、あなたはシェンラの補助をして。私は糸を切れるギコーと交代するわ」
手厳しいですね。まあ、最後の詰めだ。
シェンラさんが抑えてくれている【桃太郎】に、木刀で殴りかかる。
奴も、こっちに刀を振ってきたが、シェンラさんが受け止め、2対1パワーで、押し切る。
「じゃあな。ちゃんと振り込んどけよ!」
そう言って、最早戦意喪失している【桃太郎】を倒した。
交代するつもりだったラチックは、案外優勢だったギコーと協力してさっさと【鬼六】を倒し、糸を断ち切ってギコーが【浦島太郎】と【女郎ぐも】を倒し、最後に人数差で【水龍】と【泉の女神】を倒した。
成功率が低い理由。
脳内で 加速→【リーフィーシードラゴン】→〈花剣舞〉→全力攻撃 のプロセスを、できるだけ早くしなければならない。
加速の時間は2秒しかないからこれに時間を稼ぐほど、攻撃の時間が減る。
さらに、練習は一日一回しかできないとかで……難しいんや。
もう2度と10対10なんてしねえ(死にかけ)。
……もう一回やって欲しいひと「いいね」