10対10とかいうカオス
「オラァ!」
「まだ甘いわ」
俺の全力の剣技は、何の気もなくラチックに流された。
やっぱりこの人やばいよ。横目でガンツの弓を指導しながら、俺の剣舞(適当に振り回してるだけ)を流しきるんだもん。
「……何かアドバイスはありますか?」
「そうね……今やっているのでも、心得がない人なら押し切れると思うわ。あとは、頭の中で音楽をかけることね」
「音楽?」
「ええ、できるだけテンポが早いやつ。そうすると、無理やり体をリズムに乗せようとして、動きも速くなるわ」
なるほど、今頭に全部入っている曲の中で、一番リズムが早いのは……
「もう一回頼む」
「ええ。ガンツはもっと顎を引きなさい」
「分かった」
頭の中だけでは難しいから、すこし歌詞を口ずさみつつ、木刀を振りかぶって、
ピーンポーン
インターフォンが鳴った。
時計を見てみると、ダンジョンで仕返しをしてから、三時間程たってた。
思ったより遅かったな。
「っし、行くか」
扉を開けると、突撃野郎(桃太郎、リーダー)を先頭に、十人の《メルヘンヒーローズ》のメンバーが揃っている。
予想通りの相手に、俺はあえて満面の笑顔かつ、間延びした声で、
「なんの用でしょー?」
挑発するように質問した。
頭が足りていないリーダー君は、もちろん激昂して、
「テメェらがうちのメンバーを襲ったからだろうが!」
「それもこのゲームの遊び方の一つですよ。あと、あなたたちもうちのメンバーをキルしましたよね?」
「うっ!」
何も言い返せない突撃君を見下す心持ちで、
「こんな言葉をしっているか?」
右手で左目を隠し、
「キルしていいのは、キルされる覚悟があるやつだけだ!」
さっきアンペルが笑いながら買ってきた、赤い鳥のような模様が入ったカラコンを着けた左目を、右手の人差し指と中指の間から見せつける。
結構自信があったのだが……相手に分かる人はいなかった。
「あー、とにかく、俺たちもお前らもやりあってるんだから、差し引きでなかったことにしようぜ」
「ざけんな!」
「こっちの方が二人多くやられてんだろ!」
「そりゃぁ……マグロ、美味しかっただろ?お前らキルしても、絵本しか落とさないんだから、こっちの方が優秀なんだよ」」
こいつら、キルしたら元ネタの童話の絵本しか落とさなくて、全然美味しくなかった。
「こいつ!」
突撃野郎に胸倉を捕まれたが、冷静に
「やめとけ、町中ではダメージ入らねーぞ。あと、口悪くないか?ヒーロー(笑)さんたちよ」
まあ、動きを止められたらダメージ入るんだが、こいつらはそのことを知らない。
そして、予想通り、
「ふざけんな!」
「正々堂々戦いなよ!」
まだギャーギャー食いかかって来るので、こちらも予定通り、
「じゃあ、10対10で、正々堂々と戦おうぜ」
ルール
10対10
場所は決闘場(キルあり設定)
今後故意的に互いに接触しない
負けた方は、クラン資金の3分の2を支払う
「これでどうだ?……まさか、逃げるなんてしねぇよなぁ?」
「当たり前だ!」
◇
合計20人で、広めの決闘場に入っていった。
始まる前に、陣形を組んでいく。
こっちの初期配置は、
前衛 イグノ ミワ マドカ
中衛 ファニー シェンラ ラチック ギコー
後衛 ガンツ アンペル Rex
という感じで、中衛をいつ前に出すかが大切になる構成だ。
「ボコボコにされる用意はできたか?」
「言ってろ」
両方準備ができたところで、
『デュエル開始ィィィ!』
合成音声が響いた。
「〈玉手箱〉」
「〈嘘つきへの天罰〉」
真っ先にこっちに全ステータスダウンと、武器効果ダウンのデバフがかけられたが、
「〈殺戮魚の声〉」
ラチックのバフで補完しつつ、彼女の鱗器である[消怖気 リフェクション」の効果でデバフの効果を下げる。
貴重な鱗器の枠を、メタの為に使ってくれた彼女に感謝。
ちなみに元は俺がイベントの時にあげた、黒いリボンである。
お陰で、力と素早さは少し高く、防御はいつもより少しだけ低いステータスになっている。
さて、まずは相手の前衛3人と接敵する。
イグノVS【鬼六】
ミワVS【桃太郎】
マドカVS【水竜】
「オラァ!」
お得意の加速で突撃したするも、
「〈ウッドハンマー〉」
木のハンマーで防がれた。
こいつ、さっき倒した時はしょぼい壁しか作ってなかったのに……力隠してやがったな。
「〈ウッドアーマー〉」
木で鎧を作り出して、腕を振り降ろしてきたが、そこまで速くない。
余裕で引いて避けれ……伸びる。
「グア!」
「まだまだ!」
ヤバ、吹っ飛ばされた俺を追って、に追撃に伸びてきた木を、
「〈炎上の油道〉」
Rexが焼き切ってくれて、
「〈レーザービーム〉」
アンペルが【鬼六】を削った。
やっぱり電気の通りはいいなぁ。
他の戦いでは、ミワが【桃太郎】を圧倒して、マドカが良い感じに【水龍】を抑えている。
しかし、
「〈黄金の安癒〉」
相手の後衛の一人が金色に輝き、相手の前衛を回復させた。
こっちの回復手段は俺の【リーフィーシードラゴン】だけだし、このままではジリ貧になる。
それを司令官様も分かっている様で、
『ロケット用意!』
作戦名、ロケット。
「〈ラウド・コンフラグレイション〉」
「〈フラッシュ〉」
まずはRexとアンペルが炎と光で目くらまして、背後から[糸伸喰 フィパッシュ]が伸び、ファニーが特攻。
ギリギリでぬいぐるみの噛みつきを躱した【金色の魚】(回復役)だったが、
「〈ポイズンソード〉〈トキシック・ドル〉」
ファニーの追撃で、倒した。
さらに相手の後衛をもう一人くらい持って行って欲し……
「〈蜘蛛の巣〉」
ファニーが、相手陣地のど真ん中で、動かなく……いや、動けなくなった。
しかも、どこから情報を持ってきたのか、倒して復活させてくれない。
実質9対9か。
……戦闘描写下手過ぎない?
分かりにくい部分があったら教えて下さい。