誰も殺させないという意思を感じる
何パか当ててみてね。
最近は遊び過ぎて、ちょっとレベルが低くなり過ぎたということで、
「ダンジョン行こうぜ」
拠点で遊んでいた、イグノ、ラチック、Rex、マドカの4人で、ユ弐レイの遺跡のダンジョンへと向かった。
なんか古臭いレンガ作りの建物に、草が巻きついている。
ちょっと人数が少ないのがアレだが……まあ大丈夫だろう。
「……で、何その缶バッチ」
俺以外の3人全員は、イグノ写真付きの缶バッチを付けていた。
いや……普通に恥ずかしいんだが?
「イベントの時にアイドルグッズを売ろうって言ったのはあなたでしょう?
人のグッズは売って、自分のグッズは恥ずかしいからダメっと」
「……どうぞ好きに付けて下さい」
お前らがそこまで反論して来なかったから、別にいいのかと思っていたけど、こんな気持ちだったのか。
ま、まあ所詮ゲームキャラのグッズだし。
「これで本人公認グッズアル」
「ラチックさんの字幕は戻っているのに、どうしてRexさんのアルは治ってないんっすか?」
「やってみたら面白かったから、継続しようかなって」
「俺がいない間に何やってたの?」
字幕といい、アンペルの英語といい、本当に何があったんだよ。
「今度イグノさんもやるっすか?」
「「やめて」」
……気になるな。
もっと掘り下げようとしていると……モンスターが一匹。
カタカタ
木と木が擦れあう音がして……所々にカビやコケが付いている、木造の魚が出てきた。
そして、音の正体は、木の歯車の音だった。
……凝ってんなー。
「〈ブラックランス〉」
いつの間にか自分にバフをかけていたラチックが、その木魚を一突き。
そのまま手元に持ってきて、興味深そうに木魚の作りを見ている。
「……これ、貰っていい?」
「別にいいけど」
何か気分が良さそうな彼女は、その後にエンカウントした木魚を、全て回収していく。
凝った作りに対して、弱すぎるだろ……。
順調に進んで、そんなボスが来るのかと創造を膨らませていると、
「止まれ」
全員の足が止まった。耳をすますと……音がした。
「……後ろから他のプレイヤーが来ているみたいだ。一応PKの可能性もあるから、対面から話がしたい」
「……私には何も聞こえないのだけど」
「いや、今私にも聞こえたっす」
と、いうことで、一旦足を止めて、後続の人たちを待つ。
十数秒後、何人かの人が出てきた。
とりあえず挨拶かな。
「こんにちh」
「覚悟ォォ!」
相手の一人が刀で斬りかかって来た。挨拶したら斬りかかってくんのかよ。
とにかく加速して、真剣白刃取り。
白刃取り自体は成功したのだが、
「クッ、つええ!」
「イグノ!〈殺戮魚の声〉」
相手の力が強く、ラチックのバフがなかったら押し切られる所だった。
刀を捕まれて、相手の動きが止まっているところに、ラチックの突きが通ったが、
「〈玉手箱〉」
「〈嘘つきへの天罰〉」
相手チームの、スキル宣言が二つほど聞こえてきて……突撃野郎には、ちょっと刺さった程度だった。
『二重デバフが掛かってるわ』
【シャチ】による通信音声が聞こえてきた。
というか、本来この能力はチーム戦で力を発揮するもので、正直ボス戦とかは大声で話してオーケーだし。
軽くステータスを見ると……全ステータスダウンと、武器の力が低くなるデバフが掛かっていた。
そして……デバフで力が足りなくなって、白刃取りしていた刀が動き出した。
「ッツ、【木錬成】木刀!」
咄嗟にスキルを【リーフィーシードラゴン】に切り替えて、木刀で刀を抑えた。
少しずつ木刀が削れていったが、魔法で再生もできるから、ギリギリなんとかなると思う。
「〈炎上の油道〉」
Rexの炎が突撃野郎に襲い掛かかって、目を眩ませつつ、腹に蹴りを入れて、一旦距離をとった。
そして、冷静に全体を見回すと……相手の人数は、8人だった。
普通にこっちの倍である。
「……ちょ、話し合いませんか?」
「PKに話すことなんて、一つたりともない!」
PKはお前らだろ。
「私たちはPKじゃないネ」
「PKに話すことなんて、一つたりともない!」
ダメだ、話にならん。
しかし、二倍の人数差を、まともにひっくり返す気はなく、
「やれ、Rex」
「〈ラウド・コンフラグレイション〉」
話途中に油を回していたRexの広範囲攻撃で、目を眩ませて、
「逃げるわよ!」
「判断早いっすね……」
「おい急げ!〈杉森〉」
通路に森を作り出だし、視界を悪くするのと同時に、Rexが燃やして追撃できるようにして、逃げ
「そうはいかないよ。〈釣り上げ〉」
「え?」
マドカが何かに引っ張られて……相手の集団にまで引き込まれた。
「ッツ、マドカ返せ!」
180°方向転換して、鱗器の飴を咥えて木刀で殴りかかるが、突撃野郎に阻止された。
ラチックもそれに続いたが、新手の斧使いに阻まれて、通れない。
「おい、可愛い女の子を集団でボコんのか!?それがお前らのやり方かぁ!?」
「こんなヤ〇ザみたいなやつの仲間なんだから、ロクなやつじゃないに決まってる!」
クソ、煽りも効かねぇ。
「みなさん、私を放って逃げて下さい」
「黙ってろ!俺の前では一人も殺させねえ!」
適当な事を言って、
「ラチックゥゥゥ!」
「〈殺戮魚の純愛〉」
最強のバフを貰って、
「〈花剣舞〉」
花びらを纏って、前に会長に教えてもらった通りに、木刀を使って、踊る。
もちろん踊ってる間に防御なんてできる訳なく、ただただ猛攻を仕掛けて、相手を防御一辺倒にする。
そして、尖った花びらが相手に刺さっていき、
「〈油爆発〉」
Rexの爆発で、撃墜した。
しかし、6人から集中攻撃されていたマドカもやられていた。
「仇取るぞ!」
「冷静になりなさい!」
ラチックに頭を殴られて……ようやく冷静になれた。
互いに一人ずつ倒したが、依然状況は3VS7で、むしろ悪くなっている。
「……逃げるか」
「だから逃がさないって」
逃げようと体を反転させたが、進まない。
気づいたら、俺とラチックの足に、透明な糸がついてた。
なんとか木刀で斬れるかやってみたが、ラチックの槍でも斬れない糸なので、殴打メインの木刀で斬れる訳がない。
「Rex、お前は逃げろ」
「……いや、多分私なら焼き切れるネ」
「いや、どっちにしろ無理だ。お前だけでも逃げろ。オイルトラップを撒きながらならおそらく逃げ切れる」
「でも、」
「さっさと行けぇ!」
久しぶりに怒鳴って、なんとかRexを逃げさせた。
UAOのダンジョンは、幾つか入口があるはずなので、そこからなんとか逃げて欲しいな。
「さて……もう一人くらい道連れにするか」
「なんとか後衛に攻撃したいわね」
引き気味に戦って時間を稼ぎ、加速が戻ってから後衛に突貫したけど、無理でした。
《メルヘンヒーローズ》
【桃太郎】
能力:対象のキルレートが高いほど攻撃力が上がる
相手の突撃野郎の能力。能力の元は正義感。
能力から、相手のキルレートが分かるから、キルレート高いイグノ君(モンスターにやられた分はノーカウント)は勘違いされた。
水性生物じゃなくね?とかの文句は受け入れません。
あいつ、桃の中で川から流れてきたから……。
【浦島太郎】
能力:釣り
人数差が多いほど、全ステータスが上がる。
マドカを釣り上げたやつ。
第二の能力は、大人数からいじめられてたカメを助けたこと。
【乙姫】
能力:全ステータスデバフ技が使える
浦島太郎の登場人物。
老化による全ステータスダウンが能力。
【泉の女神】
能力:武器の力を低下させる
斧補正
泉に斧を落として、金の斧と銀の斧……ってやつ。
二つ能力がある分、斧の補正は少ない。
【女郎ぐも】
能力:操糸
イグノとラチックの足に糸を巻き付けたやつ。
「浄蓮の滝の女郎ぐも」っていうお話が元ネタ。
桃太郎とか、浦島太郎って面白くね?から始まって、途中からマジで思いつかなくなった。
これを書くために、昔話とか童話とかを50個くらい読んだ。