女子会
分かりにくいけど、視点はファニー。
「できたっすよー」
拠点にて、マドカが自作のイグノグッツを持ってきた。
それは簡単な缶バッチのやつだが、拠点にいるみんなが、こぞって貰いに行こうとしている。
今日イグノは寝ていて休みだ。
アンペルに事情を聞いたところ、昨日の誕生日を、全校生徒で祝ったらしく、恥ずかしくて寝込んでるとか。
……確かに、プレゼントを渡しに行った時の悠馬は、疲れていた気がする。
ちなみに、現実のミワは、シェンラさんに頼んで実家に帰省してるらしく、今日もログインしていない。
そんなこんなで、今拠点にいるのは、ファニー、アンペル、ラチック、Rex、マドカの5人だ。
とりあえず、マドカの缶バッチを貰いに行く。
何種類かあるらしく、早い者勝ちだから急がないと。
ざっと見ると……一つだけ、クオリティが飛びぬけてるものがあった。
……こんなウィンクしてる写真、いつ撮ったんだろう?
「私これがいい(イ)」×4
全員が一斉にそのバッチを指さした。
「……私が一番素早さ高いから、私が一番先に取った」
「私の方が反射神経がいいでしょう?」
ギャーギャー騒いで、遂にケンカになった。
力のステータスが最も高い私が有利かと思ったが……柔道か合気道?のような技を使ったラチックが立ちはだかり、気づいたら転んでいた。
他のメンバーも、全てラチックにさばかれて、
「ちょ、平和的に解決してください!」
マドカが缶バッチを収納して、ラチックの進撃を止めた。
あ、危なかった。
渋々彼女は引き下がって、
「で、どうやって決めるの?」
「はい、スマ〇ラ」
「大体の実力分かってるじゃん」
「はい、ピーチ鉄」
「さ、さすがにあれは……別名友情破壊ゲームっすよ?」
「はい、決闘」
「魔法型……っていうか、足がないあたしが不利じゃねーか!」
色々あって……すごろくになりました。
着いたマスに書いてあることを絶対に実行しなくてはならない、特殊ルール。
順番はファニー→アンペル→ラチック→Rex。
「いっくよー」
最初の私がさいころを投げて、4がでた。
4マス先に書かれていたのは……『今日、語尾にニャーをつける』。
「……なるほど?」
「語尾が足りてないゾ」
「……なるほどニャー」
う……恥ずかしい。
「アンペル、早くやって、ニャー」
「ハハハww。分かっタ」
アンペルがさいころを投げて、3が出た。
3マス目に書いてあったのは……『ト〇ピーの声真似』。
すごく声が高いポケ〇ンだ。
「あんな高い声出せないゾ」
「やらなければ脱落よ?」
「クオリティについては言及しないっすから、全力でやってください」
覚悟を決めたのか、喉を抑えながら、声の調整を行って……
「いきまス。ちょぎ、ぷりぃぃぃぃ↑↑」
「うま!」
「よくそんな声だせるね……ニャー」
彼女がはっした声は、思いのほかト〇ピーだった。
これは文句なしで合格だろう。
次は、ラチックがさいころを投げて、2が出た。
お題は……『得意な歌をうたう』。
「これは簡単ね。歌います、曲は×××」
ちょっと旬が過ぎてない?
聞くまではそう思っていたが、
パチパチパチパチ
これも上手かった。全員から拍手が送られる。
ラチックって、こういうこと得意なイメージがあるから……強敵になるかもしれない。
さて、最後のRexはが出した目は、6。
お題は、『語尾にアルをつける』。
「……結構楽アル」
「言うほど楽かしら?」
さて、次は私で……出た目は3。
一番早くゴールした人が、例の缶バッチを貰えるのだが、さっきのと足して、まだ7マスしか進めていない。
ちょっと不安になりつつも、7マス目のお題は……『猫耳カチューシャ』。
「……にゃん!」
「猫ちゃんセットアル」
く、屈辱……。どこのぶりっこよ。
「さて、次は私だナ。よっト」
アンペルの出した目は、2で、5マス目に進んだ。
運が悪いなぁ。
お題は……『10秒以内に即興俳句』
「……エ?」
「はい、10、9、8……」
「ちょっと待て、うーんと……『女々しいな 彼に群がる わが友よ』」
「(ギロッ)」
「あなたの彼氏じゃないにゃー」
「……ねこが様になってきてるアル」
まあ、10秒で考えた俳句だし、ちょっと内容がトチ狂ってても仕方ないかな?
と、友と言っても何言われないことで満足しているアンペルを放って、次のラチックがさいころを投げ、出た目は6。
8マス目のお題は、『メイド服』。
「たまに着るのだから、問題ないわ」
「……それはそれでどうなんダ?」
そんなこんなで、次はさっき6を出したRex。
今度の目は3で、やっぱり一番先に進んでいる。
9マス目に書いてあるのは……『好きな人の似顔絵、似ていたら3マス進む』。
「そんなマスもあるにゃー?」
「ちゃんと実力要素も入れるっすから」
なるほど、こうやって他の人と差を作っていくのか。
そして、Rexの書いた似顔絵は、
「なんだこのグロせいぶツ?」
「まだ中二の子までいるのに、年齢制限が付きそうな絵を描くのはやめてくれないかしら?」
「追加マスはなしっす」
「いや、どう見てもイg」
決定的なことを言われる前に、私は次のさいころを投げた。
◇
なんだかんだで、最終局面。
全員の衣装や語尾や一人称などがカオスになってきて、世紀末みたいな状態になっている。
簡単に説明すると、
2位ファニー 語尾にゃー+ざます 猫耳メイド 一夜5万円と書いてある看板持ち
3位アンペル English(英語) プリ〇ュアコスプレ 顔に×キズのメイク
1位ラチック 字幕しゃべり メイド 一人称それがし
4位Rex 語尾にアル チャイナドレス 右手に痛い包帯を巻いてる
順位はあるけど、そこまで離れておらず、誰でも一位を狙える盤面。
「いくにゃーざます!」
「この語尾に慣れてきた自分がいるアル」
私が出した目は5で、ゴールまではあと2マス。
お題によっては、ワンチャンゴールできるところだが、お題は……『一発芸、誰も笑わなかったらスタート地点に戻る』。
「Oh my gosh」
「んー(みんな、絶対に笑わないで)」
「ちょっと、それずるいにゃーざます!」
少しだけ内容を考えて、
「ちょっとアンペル来て」
「What?(なあ二?)」
一番笑いやすそうな、アンペルを呼び出して、真面目な声と顔で、
「息を止めて君を見ると、胸が苦しくなるんだ」
「Hahaha www」
なんとか笑わせることができた。
昔徹夜明けの悠馬に言われたことを覚えておいて助かった。
「Im next(次は私だナ)」
「早くするアル」
アンペルはあと9マスでゴールだが、出た目は4。
「まだまだにゃーざます」
「But next time, I can finish(けど、次の回にはゴールしてやル)」
相変わらず何故か英語の上手なアンペルが、マス目に書いてある内容を見て……『スタート地点に戻る』。
「Are there any conditions?(何か条件はないの?)」
「いや、無条件スタート地点っすね」
草。
これで、あとライバルは二人か。
「んー(私はゴールしてみせる)」
ラチックは、あとゴールまで4マスだから、それ以上がでるとゴールされてしまうのだが……さいころを投げて、3。
「ギリギリセーフアル!」
「んー(ついてないわね)」
そう言って、ゴールから一歩手前のマスを見て……『全員でポッキーゲーム、勝った人がゴール』。
「……Is it a TV show that gets 1 million points at the end?(最後に100万点貰えるテレビ番組かナ?)」
どこからか用意された、十字のポッキーを4人で咥えて、少しずつ食べていく。
段々近づいてきて、他の人の髪がくすぐったくなってくる距離に。
「んー(そろそろ降参してもいいのよ?)」
字幕で喋れるラチックの文字が視界に現れた。
でも、そんな字幕でだれも諦める訳がなく、どんどん食べ進めていって……もう口が触れ合いそうになり……真ん中に一つのマークが見えた。
「そのマークを食べた人が勝ちっすよ」
マドカの追加ルールが発表された瞬間、一番瞬発力があるラチックが、すぐに本気を出して……マークまで食べた。
◇
「……ラチック、その缶バッチ何?」
「んー(激戦の末に得た、戦利品よ)」
なんだこの字幕?
この後アンペルとも喋ったけど、なんか英語で喋っていたせいで、全く意味が分からなかった(中学英語)。