DQN
戦闘開始。
こちらの陣形は、前衛にイグノとルケ(古代ガメの盾使い)に、中衛ジャロイー、後衛にガンツってところだ。
まずは相手のスキルを見極めて、ジャロイーのスキル封印を通したい。
それに対して、相手のDQNは前衛三人、後衛一人の、押せ押せ陣形だ。
「切り込み隊長イグノ、行きまーす。ヒュー!」
まだテンションが治っていないイグノが、鱗器の飴を咥えて加速し、前衛の一人に殴りかかった。
しかし……その前衛のスピードも中々のもので、さすがに加速中のイグノには敵わないが、凄い手の動きだ。
だが、今日のあいつは、
「うお、なんだこいつ!?」
「中国100億年の歴史を食らえ!」
寝不足で、酔拳使いになっている。
予測のつかない、不規則な動きで、相手の防御をかいくぐってダメージを与えている。
正直、単純な戦闘力だけなら、いつもよりも強い。
まあ、酔拳状態のときは、あいつの強みである戦略的思考ができないから、しっかりと手綱を握っておかなければならない。
加速が終わっても、ヘロヘロとした動きで、倍くらい速いパンチを避けていた。
……やっぱり、あのパンチは異常だから、何かのスキルが絡んでるかな?
素手のやつの攻撃をほとんど全て避けきり、二回目の加速をしたところで、
「〈蟹の友情〉」
相手の刀持ちがカバーに入って、最後の前衛である、ハサミ持ちがが吹っ飛ばした。
「イグノさん!」
こっちのミケ(盾持ち)が、盾でイグノを止めた。
「ん、センキュッ!」
「は、はい」
大体相手の能力が分かって来た。
素手 パンチ補正
刀 フレンドのカバーがしやすくなる
ハサミ はさみ補正
とかかな?
この中で一番封じたいのは、全員を落としにくくなる、刀のやつ。
とりあえず、素手君を酔拳イグノで抑えて、刀君とハサミ君をミケさんに抑えてもらう。
このままでは、前衛の差で押し切られてしまいそうだ。
そろそろ俺も介入するか。
後ろから、鱗器にしてある弓で、
「〈シューティングスター〉」
相手の前衛を射て、相手の動きを制限していく。
ところどころで当たって、少しずつダメージを重ねていった。
「オラオラオラァ、こんなもんか三下ァ!?」
「おい、挑発すんな!」
案の定キレたDQNたちの動きが活発になり、最後の後衛DQNが何かを取り出して……スピーカー。
「[促音向 ロスアピーカ]!」
ドン!
スピーカーを叩いて、爆音が響いた。
これが最後のやつのスピーカーか。
流石に音速は超えられずに、盾では大して防げず、前衛が結構なダメージをおってしまった。
俺も一回死んだし、けっこうヤバい盤面になってきた。
スピーカー君のスキルを封印したいが、後衛に近づくのは難しいから、やっぱり狙い目は刀のカバー能力だ。
二回目の爆音の用意をしたところで、
「耳を塞いでみてくれ」
「俺が信じるお前を信じる!」
「それただ信じてるだけですよ……」
そう言いつつも、なんだかんだで耳を塞いだお陰で、ダメージは大幅に減らせたみたいだ。
やっぱり、音を遮断すれば、ダメージを減らせるみたいだ。
しかし
「[熱摩手 サーローブ]ぅ!」
素手だったやつが、赤いグローブを装着して、イグノを殴った。
さっきまでと同じ様に、ギリギリでユラリと避けたのだが……熱で火傷して、ちょっとダメージを食らっている。
これは長くは持たないかもしれない。
やるか。
「いけ、イグノ!」
「あいよぉっと。ウィ【リーフィーシードラゴン】」
事前に立てていた作戦通り、
「〈杉森〉ォ」
辺り一面に森を作り出して、視界を塞ぐついでに、一応防音効果も期待してみる。
「フッ、お前が燃えるパンチをしたら……燃えるぜ?」
「クソッ」
まあ、Rexの油が撒かれているなら燃えるのだが、なかったら普通に燃えない。
イグノには、そのままパンチ君の相手をしてもらって、中衛だったジャロイーが、ミケを攻撃している刀君とハサミ君に近づき、
「やれー!」
「ッ、〈蟹の友情〉」
わざと声を出して、刀のやつのカバーを誘発し、
「〈クロック・ノック〉」
ジャロイーがスキルを封印した。
「〈マルチショット〉」
すぐにガンツが追撃し、さらにジャロイーも攻撃したところで、ハサミ君がカバーをしようとしたが、
「〈タートルビット〉」
盾を持っていたミケが、ハサミに噛みついて……離れない。
刀の奴は、せめて一矢報いようと、ガンツの方に向かっていったが……近づけば近づくほど、相手の速度は遅くなる。
ガンツの弓は、[付磁引 NSボウ]。
矢が当たった相手に、磁力を付与できる。相手の速度を下げる使い方もあるが、
「うお」
「バイバイ」
磁力で逆に相手を引き寄せて、
ドッカーン
逃げられない爆発で、刀の奴を倒した。
慌てて爆音を流してきたスピーカー君だったが、草の耳栓で、多少ダメージを軽減し、実質3VS1でハサミ君も倒しきる。
こうなったら、もう数の暴力に任せればオーケー。
俺が弓でスピーカーを牽制しつつ、パンチ君のスキルを封印して、木で刺し殺し、
「……っし、テメェ等、もう一回こんなことやったら、どうなるか分かってるんだろうなぁ、ええ!?」
ヤ〇ザセットフル装備のイグノが、スピーカー君を脅していた。
肩には木刀が乗っていて、完全にヤバい人だ。
「も、もももしもぉ(↑)、初心者狩りなんてするってんなら……俺の組みがお前ら潰しに行くからな」
「は、はい」
「よーし。じゃ、ばいばい」
木刀を脳天に振り降ろして、勝った。
「よし、お疲れ様っしたー。ドロップしたエビいります?おお、カニもいるじゃん」
「……いえ、手伝ってくれたのですから、アイテムは全て差し上げます」
「いやいや、初心者がいなくなって困るのは、俺っちも同じですから。じゃあ、今度カニパーティーやるんで、来てね。てか、来い」
「は、はい」
「ん。さて、そろそろ寝れるかな?」
そう言って、イグノはログアウトしていった。
多分、ジャロイーの顔が赤くなってるのに気づいていないな。
【シャコ】
能力:パンチに補正
DQNの素手のやつ。
元ネタも、すごいスピードのパンチを放ってくる。
他にも色の認識力が人間の数倍あったりするが、いい能力にならなかった。
パンチという広い範囲の定義なので、補正の幅は小さい。
【ズワイガニ】
能力:同性に対して威力上昇
作中ではハサミ補正だと思われていたが、本当の能力はこっち。
雌のために、激しく争うからこの能力。
そのせいで、女のミケを突破できなかった。
【カルキノス】
能力:フレンドをカバーするとき、全ステータスアップ
星座のかに座の元になったやつ。
神話上の生き物で、ヒュドラの友達。
ヘラクレスにやられそうだったヒュドラを助けようとしたけど、気づかれないうちに踏まれて死んだ。
【テッポウエビ】
能力:音魔法に補正
ハサミを鳴らして、銃みたいな音を鳴らせるから、テッポウエビ。
マジで打たれたと勘違いした人もいるらしい。
【アーケロン】
能力:盾の効果アップ
噛む力が上がる
ミケの能力で、元ネタは古代のカメ。
かなり噛む力は強いらしい。
結構簡単に勝ったのは、初心者いびりしているDQNにレベルで勝っていたから。
あと、バカな相手が同性アタックをしなかったせい。