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Universal Sky and Sea Online 水中のVRMMO  作者: カレーアイス
第三章 クランのわちゃわちゃ
55/110

マ〇カⅠ

歴代最長

怒られませんように。

「次は何に乗る?」

「あれ♡」


 指をさした先は……フリーフォール。

 なんか高い所に上がって下がるやつ……もちろん俺は大嫌いだ。

 というか、ジェットコースターには乗ったことあるけど、フリーフォールは乗ったことがない。


「……あの、ゴーカートとかにしない?」

「えー、先にフリーフォールー」


 ……ま、まだ乗ったことなかったし、もしかしたら、万が一面白いという可能性も無くはな


「無理 無理 無理 無理!」

「大丈夫、怖がってるダーリンも可愛いよ」


 それ何も解決してねぇんだよ!

 ああ、ゆっくりと地上が遠くなって……これ機械壊れたらどうするんだよ!


「俺、来世は鳥になるんだ」

「じゃあ私も鳥になる」


ガチャン


 体が浮き上がるような感覚がして、だんだん地面が近づいてくる。

 激突する!っと思った所で、体に重力がかかって、また地面から離れていき……




 もう二度と乗らねぇ。

 普段ならバスで本を読んでも酔わないくらい、三半規管は強いのだが、フリーフォールから降りた後はフラフラだった。


「すまん、スポーツ飲料買ってきてもらっていい?」

「分かった、ここで待っててね」


 近くのベンチに座って、スポーツ飲料を買いに行く伊織を見送る。

 さて……近くに自動販売機はなかったし、もろもろ考えたら5分はかかるだろう。


「で、何やってるんですか?会長」


 物陰に隠れているが、綺麗な黒髪がはみ出している越湖シャロの方を向いて、そう言い放った。

 あの人何やってんだ?

 言われてから、すぐに髪は見えなくなったが、


「いや、もうバレてますって」


 二回目の呼びかけで、素直に出てきた。

 

「……こんにちは」

「はいこんにちは。で、さっきからなんで尾行してるんです?」

「前あんなことがあったから、心配して見に来てあげたのよ」


 ああ、伊織の家に監禁された時か。

 

「そうですか。でも、最近は結構安定してるから、心配な」


ボトン


「ダーリン、何してるの?」


 声の方へ振り向くと、せっかく買ってきたスポーツ飲料を落として、顔面蒼白な伊織が立っていた。

 俺の完璧な計算によると、あと2分はかかるはずなのに、どうしてもう帰ってきているんだ。


「……会長、責任とって下さい」

「結婚する?」

「今のはそういう意味じゃないでしょ」


 まったく、ボケが下手なんだから。

 現実逃避(PP40)をしていると、


「こんなところで、ラチ」

「(ギロッ)」

「ッ、越湖さんは何をしているの?」


 女同士の、熾烈な言い争いが始まった。

 良かった、俺に矛先は向かないみたいだ。

 会長が暴力に走ろうとした時だけ仲裁しようと思って、少し離れた所から傍観して、10分後。

 とうとう考えることがなくなって、本格的に暇してきた時、


「ちょっと来て、ダーリン」

「拒否権はないわ」


 ようやく何かの結論を出した美少女×2に各腕を引っ張られ、着いた先は……ゴーカート。


「えっと……これで何すんの?」

「ダースケ、あれを見ろ!」

「ええええェぇぇぇ!」


 ダースケって誰やねん。

 とにかく、ゴーカートの看板を見ると……そこに書かれていたのは、


『♡~愛情レース、開催中~♡』


 ……どうやら、なんかイベントをやっているらしい。

 伊織が休日とかではなく、今日行きたいとか言い出したのはこれか。

 辺りを見回すと、俺たちの他にも11組のカップルがいた(3人はうちだけ)。


『ルールは簡単、この愛情計測器が搭載されている特殊カートで、できるだけ速くコースを走れ!もちろん、互いの愛が深いほどカートの速度も上がります。

 そして、一位のカップルには……』


 説明していた係員さんが、何かを掲げて、


『このカート型ペアルックストラップをプレゼント!現在メルカリでは50万円で取引されています』


 なんだこれ。

 今は2050年、そういう機械も徐々に浸透しつつあるのだが、


「……これ、前テレビで見た時は、抽選で出場者を決めるって言ってなかった?」

「ちょっと違うよ。ここの運営に、恋人への愛情作文を送って、そこから選定されるの」


 ああ、思い出してきた。前に東間が、統華に作文書かせたがってたな。


「……俺書いた記憶ないんだけど」

「安心して、私がダーリンの思いを文字化しておいたから♡」


 そ、そっか。つまり、周囲の連中も選りすぐりの恋愛猛者ということか。

 職員さんに、伊織がカッターを見せびらかし、会長が睨みつけるという、勝海舟もビックリの交渉術を発揮し、4席ある特殊カートを用意してくれた(愛情を計れるのは前の二人だけ)。


「ちょっとハンデか?」

「大丈夫、私マ〇カのレートカンストしてるから」


 いや、それとこれとは話が違うというか。


「私は私有地で、時速300キロを乗り回したことがあるわ」


 こっちの方が頼りになりそう。

 でも、会長との愛情って……無くね?

 あったとしても、主従の関係くらいだよ。

 てか、どうして会長乗ってんの?


 とりあえず、伊織の愛情パワーと、マ〇カカンストテクニックで押し切る感じになるのかな?


『では始めます。よーいドン!』


 係員の人がスピーカーで宣言し、12台の特殊カートが走り出した。

 スピードは、どれも大差ない印象。

 ……いや、俺から伊織への感情なんて、ほとんどが親愛と友情だから……ほぼ一人で食らいついてるお前は何者なんだ?


「うーん、思ったよりスピード出ないね」

「愛が足りないんじゃない?」

「ほ、他のカップルも凄いだけだろ」


 本当にマ〇カで培った技術で、ドリフトを完璧にこなして、現在5位。

 そして、見えてきたのは。


「アイテムボックスだ!」

「これ怒られないよね!?」


 ?のマークが書かれている、大きな段ボール。

 1位の車がその段ボールに突っ込んでいったので、俺たちもそれを真似して突っ込む。


「取ってダーリン!」

「え、どゆこと?」


 あのアイテムボックスモドキには、本当に役立つアイテムが入ってたらしい。

 他の車は、少し減速してでもアイテムを取りに行っているが、うちは全く減速してくれないから、もちろん取れる訳がなく、


「取っておいたわ」

「うっそだろおい」

「チッ。じゃあ交代ね」


 こいつらは、アイテムを取ったら運転を交代するらしい。

 けど、会長と俺で、スピードでるかな?


「……なんか速くなってない?」

「どうかしら」

「……嘘だよね、ダーリン」


 何の効果か分からないが、俺たちはさっきよりも速くなっていた、


「これバグじゃない?」

「そんなことないわ。それよりも、アイテムを使ってみて」


 会長が取ったアイテムは……パフェ。

 かなり豪華なやつだ。


「これどうやって使うの?」

「私の番まで待っておいてね」

「隣の車を見ておきなさい」


 会長の言う通りに、隣の車の運転席を見ていると……助手席の女性が持っていたのは、お高そうな香水。

 それを使って、運転手である男魅了し、


ブーン


 凄い加速をした。

 なるほど、愛情を上げて、スピードを上げられるってことか。

 

「……やらなきゃだめ?」

「私、勝負事には常に全力を出すの」


 溜息をついて覚悟を決め、ついていたスプーンでパフェのクリームをすくい、運転している会長の口元に、


「あ、あーん?」

「……(パク)」


ギューン


 モーターが唸りを上げて、凄いスピードで加速していく。

 そのまま、二口目、三口目。

 最後のイチゴを食べさせて、


「……ごめんなさい、手が離せないから、口元のクリームを取ってくれない?」

「……このアイテム強いな」

「うううぅぅぅ(死にかけ)」


ブオー


 もうよく分からない音を上げ始めたカートは、イカれたスピードを出して、3位まで上昇した。

 ここで、次のアイテムボックス。

 まだ運転していたいのか、伊織にアイテムを取らせないように、蛇行して抵抗していたが、


「交代!」

「しょうがないわね」


 再び伊織の運転に戻って、少しスピードが下がった気がしたが、そこまで大きな影響はないだろう。

 そして、今回のアイテムは……某アイドルの写真集。

 どう使うのか分からずに混乱していると、二位のカップルが少し下がってきて……伊織に俺が他の女と並歩している写真画像を見せつけてきた。


「だ、ダーリン?」

「よく見ろ、合成だ」


 すぐに持ち直せたが、それでも少し遅れを取ってしまった。

 なるほど、妨害アイテムか。


「貸しなさい」

「ああ、任せた」


 後ろにいる会長に、アイドルの写真集を渡した。

 渡された会長は、そこそこ速い車の上にも関わらず、大きく身を乗り出して、前にいる2位のチームの運転席に投げ込んだ。


 そして、パートナーにアイドルに鼻の下を伸ばしていると思われ、一気に減速。

 遂に2位になった。


 行ける!

 最後のアイテムが近づいてきて……1位の車が、急に減速した。

 俺は何がやりたいのか分からなかったが、レートカンスト勢の伊織は当然気づいたようで、


「ッチ」


 振り払おうと蛇行するが、キッチリと前に張り付かれて、前のアイテムボックスを割られた。

 そして、すぐ後ろを走っていた俺たちは、もちろんアイテム無し。


「……終わった」


 諦めムードの中、


「諦めたら、そこでレース終了ですよ」


 伊織が何か言い出した。


「アイテムに頼る必要なんてない、一言あれば本気をだせる」


 ……マジか。

 けど、ここまでやって、負けるのもアレだよな……。


「フー、よし」


 深呼吸して、


「伊織」


 運転しながらも、彼女は振り向き、


「愛してる」


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 カートが、言葉にならない音を鳴らして、音を置き去りにした。



 次の日、伊織と会長のバックには、半分にされた片割れストラップがついていて、


「なんだそのストラップ」

「50万の半分で25万のストラップだ」


 悠馬のバックには、割れていないストラップが付いていた。


 勝海舟は「交渉が上手い歴史人物」の検索で、一番上にでてきた人です。

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