ヤンデレート
二連続バトル回書こうとしたら、拒否反応がでた。
ある日の放課後。その日は先生たちがなんかの会議で、午前授業だった。
「ダーリン!」
いつも通り、背後から伊織が抱きついてくる。
もう数えるのが面倒になるくらい、学校でダーリンはやめろって言ったんだが……矯正する気はないらしい。
この光景も見慣れたもので、最初の頃にあった羨望と軽蔑のまなざしは、もう感じられない。
何故か会長が冷気を放出し、東間が笑いだすまでがワンセット。
「はいはい、ダーリンですよ。ほら、さっさと帰るぞ」
「今日、遊園地に行かない?行こう!」
突然だな……。
でも、イベントの時に、適当なことを言って帰らせた分、ちょっとだけ罪悪感が残っている。
「まあ、行くか」
「イエーイ!」
伊織が前から抱きついたまま、悠馬の背後にいるシャロに舌を出し、冷気が強まったのだが……そのことを悠馬は知らない。
◇
寄り道NGの学校なので、一旦帰って着替えてから、近場の遊園地に行くことになった。
「遊園地に着ていく服といえば……これだろ」
俺は、一枚のTシャツを握って、遊園地へと向かった。
伊織の希望で、わざわざ帰宅時間をずらして、分かれて行ったのだが……。
「どう?ダーリン」
後から来た伊織は、
「……ああ、似合ってる。可愛いよ」
お世辞ではなく、水色と白のフリルがついたワンピースを着た伊織は、本当に可愛らしかった。
「えへへ、ありがとう。じゃあ、行こう」
「最初何乗る?」
「遊園地は初手ジェットコースターや!」
「いや、ちょっと待って」
俺は……軽い高所恐怖症だ。
高い所に行くと呼吸が激しくなってしまう。
「今俺が何着てるか知ってる?」
その服は……前面に「絶対にジェットコースターには乗らないぞ!!」って書いている、クソダサTシャツ。
なんとしてもジェットコースターには乗らないという、ダイヤモンドよりも硬く、黄金のように輝く意思が現れております。
「……ダーリンなら、どんな服を着ても、ダーリンオーラが打ち消しちゃうけど、服によっては相乗効果も狙えるんだから、普通に良い服着た方がいいよ」
「ダーリンオーラって、女装とかでも打ち消せない?」
「着ぐるみでも打ち消せないよ。先に服屋さんに行こうか」
そんなこんなで、伊織が俺にセレクトした服は……シンプルな無地のズボンに、スポーツメーカーのロゴだけ入った、普通の服。
それだけでふらふらし始めた伊織を支えて、今度こそ遊園地に入場した。
一人の尾行者を引き連れて。
「じゃあ、ジェットコースター乗ろっか」
「やだあああァァぁぁぁ!」
なんでこいつそんなジェットコースター押しなの!?
とにかく、俺は絶対に乗らない!花境院の魂を賭ける!
ガチャン(安全バーが降りる音)
さよなら花境院。
いや、久しぶりに遊園地に行ったら、「意外と行けるかな~?」って思わない?
けど……3秒で後悔しました。
ジェットコースターが、ガチャガチャ鳴らしながらレールを登っていく。
地方の、そこまで大きくない遊園地のハズなんだが……上からみたら想像の10倍くらい怖いわ。
「……どこかにタイムマシンない?」
「ダイジョーブ。私と一緒に未来へいこう!」
ジェットコースターって、先端部分が下りの所に入った時が、一番怖いよな。
「ギャアアアぁぁァァ!」
「キャ―――(ニッコリ)」
叫びながらも、伊織がもの凄い笑顔で抱きついてくるが……そんな事を気にしている暇はない。
ねえ、これもし壊れたらどうするの!?
このレール低くない!?当たるんじゃないの!?
もうやだ!
なんとか命は無事だったが、こんなライフの危機なんて味わいたくない。
……そう言いながらも、次に遊園地に行く時は、なんだかんだでジェットコースターに乗るんだろうな。
「大丈夫?ダーリン♡」
「ああ……ウェ」
伊織に肩を支えられつつ……べたべたイチャイチャされつつ、ジェットコースターの乗り場を降りた。
なんか気温が低いな、冷や汗か?
「つ、次は俺がアトラクションを決める」
「分かった。それにする?」
「あれだ」
俺が指さしたのは……トロッコみたいなやつに乗って、おもちゃの銃で的を撃つ、シューティングゲーム。
別に得意って訳でもないけど、楽しいかr
「私とダーリンのコンビなら、満点必至だよね!」
「……え?」
「だよね!」
「お、おう」
トロッコみたいなやつに乗り、モンスターに向かって銃を撃つ。
一生懸命、一心不乱で撃ち続けたが、
「お前、本当にゲーム得意だよな」
結果は、まさかのトリプルスコア(負け)。
「おかしい。ダーリンと一緒にやったのに、最高スコアを取れていない……」
いや、お前単体なら月間記録は取れてるよ。
ペアスコアなら惨敗なんですけどね。
「あのー、うん、あれだ。隣の伊織に見とれてちゃって、集中できなかったんだよ」
この前の重複デートでレベルが上がっていたお陰で、すぐに言い訳がでてきた。
すぐに伊織がはっとした表情になり、
「もう一回やろう」
「……ああ、別にいいけど」
二回目では、彼女は俺にピッタリ張り付いて、
「……わー、同じスコアだぁ」
「これは運命に違いないよ!」
絶対お前調整しただろ。
怖えよ!最高スコアよりも難しいだろ。