十人目
「王手」
「……必殺、ちゃぶ台返し!」
ガチャーン
イベントも終わり、拠点で適当に遊んでいた。
例の埋め合わせとして、縁側でラチックと将棋をしていたのだが……全然勝てん。
何で歩と王だけで負けるんだ?
「にしても、やっぱ似合うな、メイド服」
「あなたの甚平も相当だと思うけど」
「そうかなぁ?」
マジでヤクザ感がやばいから、やめた方がいいかと思ったが……まあ、ラチックがいいならいいか。
「どけ、イグノ。私が相手してやル」
「頼んだぞ天才!」
「で、これって、どうやるノ?」
「ダメだこりゃ」
今回は大きなアップデートはなかったし、《海馬組》のメンバーは、大体拠点で遊んでいた。
ちなみに、イベントの報酬は1000万にもなっていて、もう多分お金で困ることはないだろう。
「おーい、誰か、ミワにスマ〇ラで勝ってくれ」
「よし、3対1でボコボコにしよう」
「えー。ダーリンと私の二人と、他7人ならいいよ」
「やだよ!絶対にボコボコにされんじゃん!」
その時、屋敷のインターフォンが鳴った。
助かったー。それにしても、メンバーは全員拠点で遊んでいるし、そもそもインターフォンが鳴ったのは始めてだ。
誰だろう?
門を開けてみると一人の少女がいた。ファニーと同じ位の年齢かな?
ピンク色の髪と、童顔が可愛いのだが……俺の知り合いではないな。
「えっと……何の用?」
「あの……《海馬組》に入組させて下さい」
入組希望者か……あと一室くらいなら部屋も空いているし、あと一人くらいなら入れることができる。
だけど、安易にクランに入れるのはなぁ。
その時、後ろから
「私が面接しよウ」
なんか聞こえてきた。
◇
「じゃあ、面接を開始すル。私は、面接官のアンペルダ」
「サポートのラチックです」
なんとなく女子の方がやりやすそうなので、やりたそうだったアンペルと、ラチックに任せることにした。
入組希望者の少女は、緊張からかちょっと縮こまってるが……やる気は感じるな。
ちなみに他のメンバーは、俺の部屋からカメラで見てる。
「では、まず名前と【スキル】と、戦闘スタイルを教えてくレ」
「はい。私はマドカっています。【ヒュドラ】で、前衛が得意っす」
前衛か……正直、しっかりとした前衛は俺とシェンラさんと、回避盾のミワくらいだから、前衛は足りていない。
けど、アンペルさんがそんなこと考えてる訳なく、
「なるほど、【ヒュドラ】は強そうだナ。……次は何を聞けばいいんダ?(コソコソ)」
「志望動機とかじゃない」
「志望動機は何ダ?」
「前のアイドルライブで、めちゃくちゃ感動したからっす」
よく見ると、マドカが着ているTシャツは、うちが売ったファングッツだった。
というか、肩に下げてるタオル、ヘアゴム、ペンダント、ブレスレットect…全部うちのやつだ。
バン!
アンペルが机を叩いて、
「押しハ!?押しは誰ダ!?」
「見て下さい、このTシャツを」
彼女のTシャツにプリントされていたのは……[電走駆 エレクトリックBIKE]に乗っているアンペルだった。
「そうだよな、私に決まってるよナ」
しかし、ラチックの目が少し細くなったのを見て、
「見て下さい、このタオルを」
そのタオルに印刷されていたのは……オーラを纏って、槍を持ったラチックだった。
ラチックの顔が少し緩んだ。
その他、全てのアイテムがそれぞれのファングッツで固められていて……ガチ勢かよ。
そして、ペンダントに収められていた写真は、
「なんで俺のグッツがあるの!?」
ラチックにチャットを打って、聞いてもらうと、
「自作しました。リーダーのグッツは持っておきたかったっすから」
「なあ、私のも作ってくレ」
「いいっすよ」
「……私の分も」
「いらねーだろ!」
なんで俺の写真持ってるの!?ストーカー?
「おーい、イグノ、聞こえてるカ?」
「聞こえてるぞ」
「こいつ、採用。入組したら、イグノグッツを作ってくれるらしイ」
「だからいらねーだろ!」
だが、後ろを振り返って、
「マドカを入れてもいいと思う人?」
はい、俺の部屋にいる6人全員が手を上げました。
とくにミワなんて、入れないなら人質(自分)を傷つけるとでも言いたげで……断れないな。
「あい、採用!」
クランメンバーの名前欄に、マドカの文字が追加された。
マドカ 参戦
次はちゃんと戦闘します。
見返してみたら、2,3章って野球回くらいしかPVPやってねーじゃん。
……シャロとの現実バトル回もあったな。