セーフ(1/3)
「そんなに私のことが分かってないの?(スチャ)」
不味い、やらかした。
テストの時よりも早く頭が回転し始める。
「実は……何故かお金を持っていなくてね。君にカッコ悪いところを見せたくなかったから、ガンツに持ってきて貰ってたんだ」
「そっか。もー、私が悠馬に幻滅する訳ないじゃん♡」
「その辺は……ちょっと男としてのプライドというか、なんというか……。とにかく、こっちではイグノにしてくれ」
「はーい♡」
なんとか、誤魔化せた……か?
劇壇では、王子様みたいな格好をしている男10人程が、シンユキルを取り囲み、鬼の角を生やしたおばあさんが、包丁を持って、王子たちに攻撃していた。
いや、どうやったらそうなったの?
おばあさんが放ったビームを、王子のうち二人で防いで、後ろから襲い掛かった王子をおばあさんが吹っ飛ばす。
後ろの方にいた王子が魔法を撃って、おばあさんがそれを反転させ、逆に前衛の王子が一人倒れた。
それを見た王子たちに守られているシンユキルが、何故か歌い出して……倒れた王子が復活して、前衛に加わる。
そして、王子たち全員が集合して、それぞれの武器を合わせて……リーダー格の王子の剣が、巨大化&虹色に輝いて、
「オールプリンセスバーストォォォ」×10
最初は包丁で防いでいたおばあさんだったが、徐々に押されていき……
ピキピキピキ
包丁にひびが入って、粉々になって、
「ヴァァァぁぁぁぁあ、シンユキルー!」
最後のそう残して、爆発した。
王子たちと観客が湧き上がって、リーダー格王子から順番に、シンユキルに一言づつ声を掛けながら、キスをして、
「ありがとうございました」×11
パチパチパチパチ
舞台上の人たちが一礼し、沢山の拍手を浴びて、劇は幕を閉じた。
「なあ、どうしてこうn……」
横を向いて、ミワにあらすじを聞こうとすると……キスで口を塞がれた。
おい、舌入れんな!
「っ、何すんだ!」
「だって……あんなに目の前でキスされたら、ねえ」
「俺のファーストなんとかを……」
「え?初めてじゃないよ?」
ちょっと恐ろしいことを言われた気がするが、聞かなかったことにしよう。
……明日からは寝室に鍵かけよ。
「次はあそこに行こう」
ミワが指さした先は……ゲーセン。
でもなー。こいつゲーム強いんだよなぁー。
この前、スマブラマリカ大会で圧倒的優勝してたし。
まあ、それで機嫌が良くなるならいいか。
「……なんで300%ハンデで負けるんだ?」
「一撃も加えられてないからだよ」
「なんで一周ハンデで負けてるんだ?」
「打開っていうのがあってね」
一回も勝ててないんだが?
「シェンラさん、そろそろファニーの時間じゃないですか?」
『逃げようとしないの。私も昔は、よくコテンパンにされたんだから』
「全く関係ないですよね!?」
『そうとも言う』
「そうとしか言わねえんだよ!」
あ、敬語抜けちゃった。
まあいいや。とにかく、今考えることは、どうやってミワを誤魔化して、ファニーの所まで行くか。
「もう言い訳思いつかないんですけど」
『思いつかない時は、発想を逆にするのよ』
「……自分も思いついてないだけですよね?」
だが、発想を逆にする、か……よし。
「なあ、今日の夜ご飯って何?」
「えっと、今日は通販でも頼もうかなって」
「んー残念だなー。伊織の手作りが食べたかったのに」
逆転の発想、俺を動かすのではなく、ミワを動かす。
ミワがリアルでご飯を作っているなら、俺がファニーの所に行っても気づかれない。
「……そんなに、私の手作りがいいの?」
「イベント開けだし、豪華なメニューが食べたいなぁー」
「……分かった、楽しみにしててね♡」
よし、これでミワは戦線離脱。ラチックにはもうバレてるし、あとは予定通りファニーとデートしたらOKだ。
ログアウトしていくミワを見送って、ファニーの元へ向かう。
「ようやくネットが繋がったよ。ごめんね、待たせちゃって」
「ふーん。初期リスこっちなんだけど」
そうして、ファニーが指さした方向は……俺がやってきた方向とは真反対だった。
やばい、ミワを返したことで、ちょっと有頂天になっていた。
「……ちょっと迷っただけだよ」
「イグノ、地理感覚はしっかりしている方だよね?」
「……あー、あのー、うん、あれだ。すみませんでしたー!」
加速して頭を下げた。
だって……もう言い訳思いつかないもん。もうむりやん。
そう思って開き直り、今までのことをほとんど全て話した。
「はぁ。やっぱりそうだった」
「すみません、ごめんなさい、許してヒヤシンス」
「……もういいよ。イベントは今日までなんだから、先に楽しもう」
「……ありがとうございます。誠心誠意、エスコートさせていただくでございます」
「ねえ、ラブソング歌ってよ」
「任せとけ、100点取ってやるよ」
『君を愛してるー』
「95か……まあそこそこかな?」
「結構高いけどね。じゃあ、私が超えますか」
カラオケって、楽しいね。
「あそこ行こう、珍しいモンスター園」
「このゲーム、モンスターが結構個性的だからなぁ。そんな中で珍しい猛者とは……気になるー」
さて、最初のモンスターは……魚化された、黄色の某チュウだった。
「……うわー、十万ボルトが得意そうだなー」
「説明見ると、土魔法使うらしいよ」
「真逆じゃねーか」
次は、なんか貝殻があって、近づいてみると……歯が
「ミミカスゥゥゥぅぅぅ!!」
無意識に飴を口に入れて、加速しつつ全力ナックル。
そのままボコボコにして、
「ちょっと、展示品に手を出さないで!」
「だって、ミミカスだもん」
「逃げるよ!」
「ちょ、まだ殴り足りないから」
何だかんだで、楽しかったです。
リアルに戻った時に、伊織から豪勢な夕飯を山ほど出されて、死にそうになったってこと書こうか?
すみません、毎日6~8時投稿に変更させて下さい。
ここまで読んでいただいて、ありがとうございました。
3章はまだ続くのですが、作者のモチベのために、ブックマーク高評価感想extをよろしくお願いします。
噂によると、ブックマークで彼女もしくは彼氏ができるらしいです。
星5評価で宝くじがあたります。