表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Universal Sky and Sea Online 水中のVRMMO  作者: カレーアイス
第三章 クランのわちゃわちゃ
49/110

生じる綻び

「店番、長かったね」

「いやー、ちょっと交代の人が遅くてね。これ上げるから許してくれ」


 そう言って、買ってあった可愛い魚のぬいぐるみを渡した。

 ちょっと機嫌が悪い気がしていたが、統華の趣向にジャストミートしてるからか、笑顔に戻って、


「まあ、それなら許してあげる。じゃあ、デートの続きしよう!」

「そうだな。やりたいこと決まったか?」

「うん、あっちに行きたい」


 ファニーが指さした方向は……射的とか、ヨーヨー釣りとかの、ゲームゾーンだった。

 さっき沢山食べたから、当然といえる。


「悠馬、こういうの得意だったよね」

「ああ、沢山取ってやるよ」


 さっきダーツを外して、自信喪失していたが、射的でお目当てのものを当てられた時点で自信を取り戻した(お調子者)。

 

 次は、金魚すくいなんだが……


「これって、金魚すくいなのか?」

「すくってはいないよね」


 その金魚は……速かった。

 凄いスピードで水中を駆け回り、すくうのではなく手づかみ。


「なんだこれ」

「そりゃあ水中なんだから、それを活かした屋台を出すのは当たり前でしょう。

一回500円10秒ね」


 店員さんが説明してくれた。

 確かに、俺たちも水中を活かしたライブをしたわ。

 一回分のお金を払って、


「やっちまな!」

「……加速!」


 飴を口に入れて加速し、2秒後には、全ての指の間に高速金魚が捕えられていた。

 よし、部屋の中にでも放し飼いしよ。


「私の分も取って」

「任せろ、天上まで捕まえてやる」


 3分後、出禁になりました。

 さて、次はどうしようか。

 その時、シェンラさんのからの通話がきて……


『危険です。進行方向にラチックがいます』

「マジか!」

「どうしたの?」


 確かに、ラチックと分かれたのもダーツがあった、ゲームの屋台だったから、この辺にいてもおかしくない。


「あ、あのー、が、ガンツ!ガンツがいたんだ」

「あいつ……戻ろう」

「そうだな。うん、引き返そう」


 ……ごめん、そして、ありがとう、ガンツ(敬礼)。

 さて、そろそろ交代しなきゃいけない訳だが……なんて言い訳しよう。


「なんかアイディアありません?」

『うーん、家が燃えたとか?』

「近所に住んでるから、余裕でバレます。好きなアニメが始まるとかはどうでしょう?」

『「私はその程度だったのね」ってなるだけですよ。急に電波が悪くなったとかはどうでしょう?」


 シェンラさんのかなり似ている声真似に苦笑しつつ、


「あ、ちょっと電波が悪いみたい。ごめんけど、待っていてくれる?」

「えー。早くして」

「ごめんな」


 背中でボタンを押して、一旦ログアウトし、参テルのリス地からラチックの元へと向かった。


「ごめん、食べるのに時間かかっちゃった」

「あなた、食べるの早い方よね?」

「な、何故か冷蔵庫の中が空っぽだったから、買いに行くのに時間が必要だったんだよ」

「ふーん」


 今日だけで、言い訳のレベルが5くらい上がった気がするわ。

 まだ少し疑われてる気はするが、許容範囲だろ。


「じゃあ、行こうか」

「待たされていた分、私の行きたい所に行かせて貰うわ」


 そう言って、ラチックが向かった店は……服屋。


「正直、自分でも服のセンスがおかしいのは自覚してるわ。だから、似合っているか見て欲しいのよ」

「いや、俺も中々センスイカれてるぞ」

「いいのよ。あなただけで」


 確かに、今ラチックが着ている服は、高校の制服みたいなやつ。

 おそらく、彼女も俺と同じように、制服=万人が似合うという認識でこの服を着ていたのだろう。


「俺のセンスが火を噴くぜ!」


 服屋に入ると、ありとあらゆる服が置かれていた。

 これ、自作か?

 ……ちょっと職人としての血が騒ぐな(ない)。

 あと、これを見られたら残業量が酷くなる気がするから、絶対に会長には見せたくないな。


 さて、ラチックに似合う服装かぁ。

 やっぱり、紫の髪を活かす感じにしたいから……黒か白っぽいやつにしたい。


「これはどう?」


 そう言って、俺がピックアップした服は……結局セーラー服だった。

 いや、マジでラチックには制服的なのが似合うと思うんだよなぁ。

 何故か、頭の深い所に刻み込まれている気がする。


「うーん、美しい」

「そ、そう。もう一着くらい選んでくれない?」

「じゃあ、ラチックは俺の服を選んでみてくれよ。まだUAOで、初期装備とスーツしか着たこと無いし」

「面白そうね」


 二着目は、黒い服がいいなー。

 視線を流して行くと……一つの前で、目が止まった。

 これ、着てくれるかなぁ?


「決まった?」

「ええ」

「じゃあ、せーので見せあおうぜ」


「「せーの!」」


 俺が出した服は、メイド服。絶対に似合うぞ。

 そして、ラチックが出した服は……黒の甚平(じんべい)

 黒い服からは逃れられないようです。やっぱり、日本的な服装が好きなのかな?


「……これ着たら、さらにヤクザ感増加しない?スーツだったら、まだマフィアかもしれないってなるけど、甚平はもうアウトじゃん」

「それを言ったら、メイド服って……何?」

「……ちょっと、着てみようぜ」


 服を渡しあって、メニューを弄り、着てみると、


「「やっぱ似合う」」


 結局、両方買いました。ライブとグッズ販売で、かなり稼いでいるから、金銭的には余裕がある。

 今度メイド服でお茶入れて貰おう。


『あ、あー。こちらシェンラ、こちらシェンラ等司令官。イグノ三等雑用官、応答せよ、応答せよ』


 この人も、楽しそうにしているなぁ。

 

「こちらイグノ上等官、指令を求む」

『今すぐミワちゃんの方へ行きなさい』


 時間を見ると、もうそろそろ劇も終わる時間だった。


「もう言い訳のネタ残ってません」

『考えないで、感じるのよ』

「いや意味わからん」


 コソコソ通話していると……誰かが、俺の背中を押した。


「行ってきなさい。どうせ、ミワ辺りでしょう?」

「……すまん」

「埋め合わせは、して貰うからね」

「わーった」


 加速を繰り返して、ミワの元へ向かいつつ、


「どうしてバレたんでしょう?」

『1時間も放置してたらバレるのでは?』

「そうなのかな」

『……そういえば、昨日誰がイグノと過ごすかで、言い争ってました』

「十割それじゃん」


 昨日言い争ってたのって、それかよ。


「なんで俺と過ごそうとするんですかね。ミワは分かるんですけど……」

『……そっかぁ(諦め)』



 っと、ミワがいる劇場に着いた。

 一応適当に飲み物を買って、元の席まで残ったんだが……もう俺の言い訳ボキャブラリーは、とっくにリミットブレイクを迎えている。


「……ほら、飲み物買ってきたよ」

「わー、ダーリンがいるー」


 よかった、もう壊れてるから、言い訳なんていらなそうだ。


「で、どこ行ってたの?」


 だめでした。


「飲み物で迷ってたんだ」

「そんなに私のことが分かってないの?(スチャ)」


 ……やばい、選択肢ミスった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ