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Universal Sky and Sea Online 水中のVRMMO  作者: カレーアイス
第三章 クランのわちゃわちゃ
48/110

このイベントは続く!

 第三回イベント2日目。

 昨日と同じ10時に、昨日と同じくアイドルライブを行う。


「ねえ、似合ってる?」

「ああ。とっても可愛いよ(妹感覚)」


 ライブの用意ができている、エンペラータイムのファニーが聞いてきた。

 彼女は、少し顔を赤くしつつ、


「今日の午後からは自由行動なんだよね?」

「昨日は、ほぼ自由時間がなかったからなぁ」


「じゃあ……久しぶりに二人で遊ばない?」


 昔は、結構二人(悠馬には秘密)で遊んだりもしていたが、最近は二人きりになることはなかった気がする。


「そうだな。やるか」

「やった!じゃあ、ライブ頑張って来るね」

「おう」


 ファニーとデートか。先に、良い感じの店を探しといてやろう。

 そう思って、メニュー欄の掲示板のようなところから、デートスポットを幾つかリストアップして……


「ねえ」

「ん、なんだ?」


 気づいたら、ラチックが後ろに立っていた。

 こいつも完全武装ができていて、非常にエレガントである。


「今日の午後って、暇?」

「あー、ちょっと用事があるわ」

「……暇よね?」


 謎の圧力を感じる……。

 最初に会ったころは、敬語で下にでている、お嬢様みたいな人だったんだが……まあ、素を出せる様になったってことか。

 とりあえず、先約がいるから断って、


「ヒマデス」

「じゃあ、私と一緒に店を回りましょう」


 色々弁解しようと思ったが、その頃にはもう居なくなっていた。

 ……これ、どうすればいいんだ。

 割と本気で悩んでいると、


「おーいダーリン。今日の午後は暇だよね」

「暇じゃない!全部の宿題が残ってる夏休みの最終日くらい暇じゃない!」

「え、ダーリンがイベントに参加しないなんてあり得ないし、リアルでも用事ないよね? じゃあ、何で暇じゃないの?もしかして……オンナ?」


 同棲してるからって、リアルの用事まで言い当てて来るのはズルだと思うんだ。

 そして、逆刃のナイフがきらめいて、


「いや、あれだ。暇……かもしれない」

「じゃあ、午後は私とデートね♡」


 終わった。断りにくい順に来るのが悪いと思う。

 マジでどうしようかと、絶望のどん底に沈んでいると、


「あーあ。大変なことになってますねー」


 シェンラさんが現れた。どうやら、今件の一部始終を見ていたらしい。

 ……それなら早めに助けて欲しかった。


「……これ、どうすればいいと思います?」

「ふっふっふ。任せて下さい、この熟練恋愛プロフェッショナル、シェンラさんに!」


 もうどうにでもなれ!




 野球大会優勝もあってか、二日目のライブは、満席どころか通路にもあふれだした状態でやることができた。

 昨日頑張ったお陰もあって、一番騒がれたアンペルに感激して(現実逃避)、デート(地獄)の時間が始まった。

 多分デートに地獄なんて読ませるのはここだけだよ。


『まずはファニーとお昼ご飯ですね。まだ10分止まれる【リーフィーシードラゴン】は残すために、いつも通り食べ歩きにして下さい』

「アイアイサー」


 シェンラさんからの通話が聞こえてきた。

 町中だから、幾らでも電話できるので、めちゃくちゃサポートしてもらおう。

 さらに、カメラ魚という、ちょっと怪しいお店から買った物を使って、リアルタイムで見れている。

 初めて俺の部屋のパソコンが役に立った瞬間である。


 まずは、他の二人に「グッズの店番してるよ」と言っておいて、ファニーと昼飯(腹には溜まらない)をいただく。

 集合場所に行くと……鏡を片手に、必死に髪を整えているファニーがいた。


「ごめん、待った?」

「い、今来たところだよ」


 とりあえずテンプレ会話をして、予定通り出店を渡り歩くことにした。


「はい、みかん味のジュース」

「ありがと」

「はい、みかん味の綿あめ」

「わーい、初めて見た」

「はい、みかん味の焼きそば」

「やっぱり、みかんは何にでも合うね」


 俺も食べてみたんだが、綿あめはともかく、焼きそばはちょっと……ただのゲテモノなんじゃ。

 それでもファニーは、とても美味しそうに、タコの代わりにみかんが入ってる、みかん焼きを食べていた。

 とにかく、みかん味の物が沢山あって助かるなぁ。


「ほっぺにソース付いてるぞ」


 人差し指で、ソースを取って口の中に入れ……スッパ。

 これもみかん味かよ。昔はよくこんな感じのこともやったもんだ。


「あ、ありがとね」

『そろそろ次のラチックですよ』

「あー、そろそろ店番だから、一旦戻るね」

「一緒に行こっか?」

「いいよいいよ。次どこ行きたいか決めておいて」


 加速して全力で振り切り、次約のラチックの元まで向かう。

 そこそこ遠い所で、いつも通り凛と立ち尽くしてるように見えて、どこかソワソワしているラチックに合流する。


「待った?」

「いつもだったら(かかと)落としだけど、今回は許してあげるわ」


 う、後頭部が疼く……。早く楽しんでもらおう。


「どこ行きたい?」

「屋台を回りたいわ」

「OK。じゃあ、行こう」


 並んで歩きながら、面白そうな屋台を探す。ちょっと混んでるし、手を繋いでおくか。


「……」

「いや、はぐれないように、ね」

「ええ、そうね(ギュッ)」


 周りの人たちからの視線が痛いなぁ。見よ、これがリア充だ!

 そのまま、手をつないだまま、屋台が並んでいる道を歩いていると……急にラチックの足が止まった。

 視線の先には、ダーツの景品として、カッコいい扇子があった。


「あれが欲しいのか?」

「まあ……」

「俺に任せておけ」


 挑戦料を払って、扇子が貰える内側から2番目を狙って……とう!

 当たったのは、内側から7番だった。


「……思ったより難しい」

「はぁ。自分でやるわ」


 ラチックが、黒いオーラを付けて……綺麗に放物線を描きつつ、お目当ての内側から2番目に当たった。

 俺も器用さには結構自信があったんだがなぁ。

 嬉しそうに、景品群から例の扇子を選び取ったラチック……。

 い、いや、7番目も良いものがあるはず。

 安価アイテム、文房具、その他もろもろ、参加料よりも低い値段のアイテムが置いてあって……どうしよ。

 その中に、ラチックに似合いそうな、黒いリボンが……これでいいか。


「はい、これあげる」

「あ、ありがとう。結んでくれない?」

「んー。ちょっと横向いて」


 ラチックの左髪に、黒リボンを結んで……うん、良い感じのチャームポイントになってるんじゃないかな。


「似合ってる?」

「うん。綺麗だよ」


『そろそろ交代です。次のミワちゃんの所に行って下さい』

「ちょっと短くないですか?妹忖度してません?(小声)」

「何か言った?」

「い、いやー。ちょっとお腹が空いてきて。一旦ログアウトしてくるね」

「分かったわ」


 ちょっとしょんぼりしている彼女に、心の中で謝りつつ、ミワの方へと向かった。

 一番面倒な奴だ。


 集合場所に着いて、見当たらない彼女に、チャットを打とうとしていると……後ろから抱きついてくる人がいた。


「イエーイ、ダーリーン♡」

「はいはい。とりあえず離れて」

『可愛い~』


 満面の笑顔のミワを見てか、シェンラさんの甘い声が聞こえてきた。

 ちょっとこの人、シスコン入ってない?


「じゃあ、行こう!」

「どこ行くんだ?」


 そう言うと、ミワは一つの建物を指さして、


「劇を見に行こう。映画がデートの定番らしいけど……映画はなかったから、劇にしたんだ」


「……あの、劇の途中でどうやって脱出すればいいんでしょう?(小声)」

『もうずっとミワちゃんと一緒にいればいいと思うよ』

「ちょっと、しっかりして下さい(涙目)」

『……冗談です。なんとか言い訳を考えておくから、とりあえず劇場に入って、ミワちゃんを楽しませて下さい」

「頼みましたよ……」


 シェンラさんに祈祷を捧げつつ、ミワの見に行きたがっていた、恋愛劇場を見に行くことにした。

 やっている劇は……なんかシンデレラとか、白雪姫、美女と野獣やおむすびころりんなど、恋愛昔話を繋ぎ合わせたものだった。


「昔々、ある所にシンユキルという、可愛らしい少女と、おばあさんが仲良く暮らしていました。ある日、シンユキルにおむすびを持たせて、城のパーティに行かせることに……」


 結構面白くて草。

 やばい、先が気になるんだけど。


 その時、ファニーから鬼のようにメールが送られてきた。

 気づいたら、ファニーと別れて、もう1時間以上過ぎている。


「シェンラさん、言い訳思いつきました?」

『あ、ごめんなさい、劇に見入ってました。……とりあえず、飲み物を買いに行くと言って、抜け出しましょう』

「それ、嫌なことを後回しにしてるだけじゃ……」

「どうしたの、ダーリン?」

「あー、映画っぽく、飲み物でも買ってこようかなって」

「分かったよ」


 ……もーやだー。


 今年の夏の最後はやばかった。


 シンユキル=シンデレラ+白雪姫+ベル


 映画途中は、足をバタバタして止まってる判定を防いでいた。

 2回くらい、動かすのを忘れて、ダメージ受けてた。

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