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Universal Sky and Sea Online 水中のVRMMO  作者: カレーアイス
第三章 クランのわちゃわちゃ
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踊レ 歌エ 一心不乱に回レ

現実バトル回

「踊りましょう」

「は?」

「なに言ってんダ?」


 今日も生徒会室はにぎやかです。



 まだ5月のイベントはやれていない。

 5月5日(子どもの日)あたりに(こい)のぼりを上げて終わりだったら楽だったんだが、4月のイベントが最後の最後だったから、流石にスパンが短すぎるので無理だった。


「で、なんで踊るんだ?」

「ただの踊りではないわ。これを見なさい」


 会長が、某動画サイトを起動して、検索欄に『剣舞』と打ち込んだ。

 一番上にでてきた動画をクリックすると、女の人が刀を振りながら踊り始めた。


「これをやるわ」

「ほんの一週間程度でできると思うか?」

「この人プロだロ?」


 ん?そういえば、会長の今日の荷物は大きかった気がする。


「……重要な用事を思い出した」

「逃がさないわよ」


 俺の首元に、綺麗な日本刀が押しつけられました。

 さらに……会長のバッグから、侍の服みたいなのが出てきた。


「そんなのどっから持ってきた?」

「私の実家」

「日本って刀を持ち歩けるのカ?」

「銃刀法違反だけど、バレなければ問題ないわ。とりあえず着替えるから出ていきなさい。あと、この服あげるから、あなたも着替えてきなさい」



 数分後、侍服を着た会長に、モノホン刀を渡された。

 なお、じゃまだからと言って、髪を束ねた会長は綺麗だった。


「とりあえず私が見本を見せるから、ジックリ見ておきなさい」

「「「はーい(イ)」」」


 珍しく書記さんが喋ったかと思うと、帯刀した会長が、刀を抜いた。




「これを二倍速くらいでやるのよ」

「……いや、普通に無理です」


 いや、気になるひとはYouTbeで検索してみてくれ。無理だから。一朝一夕でできることじゃないから。


「とりあえずやってみなさい」

「まあ、やってはみますけど……」

「頑張レー」

「ダーリーン♡」


 なんか窓の外から聞こえてきた気がするが無視して、会長に一つ一つ動作を教わっていく。


「……上手ね」

「いや、教え方がよかったから」


 意外と何とかなる気がしてきた。




 五月下旬のある夜。

 自由参加でイベントを行ったが、ほとんどの生徒が学校に残っている。


 完全に暗くなった頃、校庭の中央に一つの影が降りてきた。

 校舎のベランダから興味津々に校庭を見ている生徒たちから、一気に歓声が上がっている。

 屋上から、一筋のスポットライトが当てられた。

 影の主は、生徒会長、越湖シャロ。

 侍服を着て、腰には立派な刀が収まっていた。

 

『人間50年~』


 放送から、彼の織田信長が出陣の時に舞ったと言われる、『敦盛』が流れてきて、


バッ


 会長が扇子を広げて、優雅に舞い出した。

 揺れるポニーテールがいい味を醸し出している。

 途中から、刀を抜いて、アレンジまでしだした会長のソロ『敦盛』が終わって、学校中から拍手が巻き起こった。

 だが、本番はこれからだ。

 もう一筋の光が屋上から差し込んで、校庭に入って来た者を照らした。


 そいつの名前は辰海悠馬、つまり俺だ。

 なんかムードをぶち壊して、「キャー、ダーリーン」とか言い始めるヤバい奴がいたが、無視。


 会長のいる、校庭の中心へとゆっくり歩いて向かいつつ、鬼のお面を被って、帯刀している刀に手をかけた。

 会長も、刀を振り上げて静止させ、沈黙がはしる。

 長いようで短い数秒間が過ぎ、


 放送で、某鬼を倒す大人気アニメのOPが沈黙を打ち破り、 盛り上がる所で、俺と会長が同時に動き出した。

 俺が付け焼刃の抜刀術で刀を振るい、会長が上段から刀を振り降ろす。


キンッ


 甲高い音が鳴り響き、顔を近づけてつばぜり合いになった。

 力が強い会長が俺を突き飛ばし、俺は飛ばされながらも反撃し、それを受け止められる。

 そこからはゆっくりと打ち合って、たまに刀を回しやバク宙(会長のみ)などの、見せプをして……


 曲のサビが始まってから、


キン!


 刀の応酬が一気に激しくなった。一気に金属音が5倍くらいに増える。

 少し火花も見えてきた。

 俺が横向きに刀を振り、下からそれを受け止めた会長が、一瞬俺の刀を止めて、彼女の体を射程外にどかしてから、振り上げた刀を振り降ろし、俺が間一髪で横転する。

 

 一泊置いて、俺は全力で刀を振り上げて……会長の刀が真上に飛ばされ、一瞬彼女は素手になった。

 だが、刀がなくても、彼女は俺の刀を全て避けきり、たまに刀の側面を殴って軌道を捻じ曲げる。

 そして、刀が落ちて来る時に飛び上がり、真剣なのにも関わらずピッタリ柄を握って、そのまま俺に振り降ろし……ギリギリ斜めに流した刀が、お面の片角を切り落とした。

 


 サビも終わり、クライマックス。

 両方一歩引いて、俺は刀を振り上げ、会長は一旦刀を鞘に収めて、抜刀術の準備をする。

 最初の状態とは逆になっている。


「ハッ!」

「ヤア!」


 最後に最初の声を出して……会長の刀が視聴者側には見えない角度から、俺の首のほんの数ミリ手前を通り過ぎ、俺は演技で倒れた。

 校舎から、今日一番の拍手が巻き起こった。





「イッツ!」

「黙っていなさい。まだまだキズがあるんだから」


 保健室で、背中のキズ(剣士の恥)に消毒液を塗ってもらっていた、

 あの刀には、他の人の血が付いていたとしてもおかしくないので、消毒しとかなければマジで病気になる。


「というか、全く傷ついていない会長の方がおかしいと思います」

「あなたが下手だから……」

「そりゃ始めて一週間だし、そもそも会長がアドリブし始めるのが悪いと思い痛い痛い痛い!」


 最初は二人で踊るつもりだったが、「斬りあった方が迫力があル」とのことです。

 本当は、劇みたいに完全に決められた演技をするはずだったのに、何故か会長がアドリブをし始めたのだ。

 たまに斬られた時も、すぐに引いてくれたお陰で、ちょっとした切り傷くらいしかないが、刀を上に投げた時は、マジで驚いた。


「あと、あなた勝手に真剣から模造刀に替えたでしょう」


 あ、バレてた。


「会長の綺麗な肌にキズをつけたくなかったんですよ」

「……そういうのは、傷つけられるようになってからやりなさい」

「……はい」


「おーい、生徒会の人いる?」


 担当の原田先生が保健室にやってきた。

 後ろには、ディアと書記さんを連れている。


「いますよ。なんの用ですか?」

「今、近所の方々からクレーム電話が殺到していてな。明日、学校の周りの住居に謝罪してこい」

「え、どうして?」

「あれだけアニソンを爆音で流していたら当然だロ」

「流そうって言ったのお前だからな?」


マジでYouTbeで剣舞って調べてみてくれ。結構面白いから。

一応イグノ君剣道経験者(後付け)。それでも素手で抗います。

ちなみに「敦盛」は刀使わないし、扇子バッもしない。

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