怪奇 メンヘラの恐怖
「……じゃあそろそろ帰らせてもらいます」
「返さないわよ」
「テレポート!(全力ダッシュ)」
3秒で捕まりました。
あの後、何回か海龍に挑んだが、あれ以降は一回も勝てなかった。
全体攻撃のウロコや氷塊を飛ばす攻撃の頻度か高いと、耐久のないアンペル、Rex辺りがやられて、小ドラゴンの処理能力が足りなくなって圧し潰されるんだよなあ。
そして、今はGW明け、第一回中間テストの期間だった。
前回の学年末テストで赤点を5つもゲットした俺は、仕事の後にいつも通り帰ろうとしたところ、
「待ちなさい、辰海君」
会長に呼び止められて、彼女自作の小テストを受けさせられ……ボロボロでした。
元から平均点チョイ下くらいの点数だった上、最近はUAOばっかりやっていたんだから、そりゃそうですよね。
「うわー、お前大丈夫カ?」
「これムズイんだよ。会長、もう一枚ある?」
ディアがバカにしてきたから、テストを受けさせてみたが……満点。
「え、頭良かったの?」
「貴族の嗜みだからナ。うちの国は飛び級できるシ」
……そういえばお前1年だったわ。
そんなこんなで、冒頭のように帰ろうとしたけど、捕まって会長の監視の元、勉強させられることになった。
「基本が甘いのよ。どうして応用問題と基本問題の正答数が同じになるの?」
「よく鈍いって言われます」
「……あと5時間継続ね」
どこかで地雷を踏んだみたいで、何故かキレられた。
「会長、ぶっ続けで勉強するより、休憩とかを挟んだ方が効率いいんですよ」
「大丈夫」
会長が彼女のバックから何かを取り出して…… エ ナ ド リ 。
「これを飲めば2時間休んだのと同じになるわ(ニッコリ)」
「へー(脳死)」
1時間に一本エナドリを飲んで、死にそうになりながら3時間監視付き。
さらにエナドリの追加を買ってくると言って、会長が出て行ったスキに逃げ出そうとしたが……外から鍵が掛けられてる。
今もう深夜11時なのに、まだ生徒会室に閉じ込めようとする会長に戦慄し、俺はこの状況から助けてくれそうな『ある人』にメールを入れた。
瞬間、
「私を頼ってくれてありがとう」
窓(3階)から、連絡したある人、川上伊織が現れた。
どうして連絡した瞬間に現れたのかと疑問を抱いたが、とりあえず窓を開けて、彼女が掴まているロープで脱出した。
「ふう。ありがとうな川上」
「伊織でいいよ。じゃあ、両手だして」
頭に?を浮かべたけど、とりあえず言われた通りに両手を出して、
ガチャ
「ナニコレ」
「手錠♡」
……会長に閉じ込められるのと、どっちが良かったかな?
◇
手錠を掛けられたまま、伊織の家に連れ込まれた。
もしかしたらシェンラさんに会えるかもしれないと思ったが、何故か一人暮らしをしていて、実家は田舎にあるらしい。
俺も一人暮らしだから、家に帰らないこと自体はどうでもいいが、明日の学校はどうなるんだ?
聞いてみると、
「もうあなたにそんなのはいらない」
「ご飯は?」
「私が作る」
「この手錠は?」
「愛の証♡」
会長の方がマシだったかなー。
とりあえず、このままでは深夜テンションで墓穴を掘りかねないので、一旦寝ることにした。
「風呂入りたいんだけど、男でも着れる服ある?」
「もちろん」
男物の服を手渡され……どこかで見たことあるぞ。
少し前に無くして探してたやつと同じ種類の服だぁ(ダサい)。
「……ありがとう。風呂は一人で入りたいんだけど、これ外してくれない?」
「うーん、一緒に入ってもいいんだけど、もう少し後にしたいからね。はい」
片方を外して、風呂場のシャワーに繋がれた。
うーん、逃げれん。普通にシャワーを浴びて、渡された服を着た。
やっぱり、同じ種類だからよく馴染むな。
「……俺のスマホどこ?」
「どうぞ」
伊織から手渡されたスマホには、彼女以外の連絡先が消えていた。
「いらないものは消しといたよ。私も風呂に入って来るから。まだちょっと恥ずかしいけど、入ってきてもいいよ、ア・ナ・タ」
「うん、入らないから安心して」
「ないと思うけど、逃げたら人質がリスカするからね」
人質(自分)とはたまげたなぁ。
なんとか連絡先を復元して、会長からの大量メールを目の当たりにし、無言でホームボタンを押した。現実逃避を含めたソシャゲのガチャで爆☆死しました。
必死にガチャ石の回収をしていたら、
「なにやってんの?」
「ソシャゲ。お前を待ってたんだよ」
後ろから抱きしめられた。ちょっと良い匂い。
じゃ、寝るか。当然の如く同じ布団で、抱き合いながら寝た。
「おはよう♡ 朝ごはんだよ」
一瞬どこにいるか分からなかったが、そういえば伊織の家に居るんだった。
深夜テンションに入る前に寝たつもりだったが、3時間ぶっ続けでエナドリ飲んでたらもう無理だったわ。
集中力は短いけど凄い深いタイプです。
「……どうしてこうなった?」
「強いて言うなら運命、かな。キャー!」
リスカされても面倒なので、とりあえず冷える前に、パンと目玉焼きを食べた。
「……美味くて草」
「でしょ!いいお嫁さんになれるよ(ウィンク)」
ちょっと最後の方がよく聞こえなかった(東間の涙ぐましい努力)が、ウィンクはちょっと可愛かった。
食べながら必死に昨日のことを思い返して、爆死が思い浮かんで泣いた。
そんなことをしてると、制服姿の伊織が出てきた。
「できればあなたと一緒にいたいけど、私はあなたを養わないといけないから」
「俺が外に出る選択肢は……ないようですねはい」
なんかメンヘラ悪化してない? リスカ用意スピードが光の速度になってる。
「じゃあ学校行ってくるね。今日の午後にはあなたのUAOも持ってきてあげるから、大人しくしといてね」
そう言って、玄関で目をつぶった。
「……何やってんの?」
「行ってらっしゃいのキス」
おでこをコツンっとだけして、見送った。
「行ってらっしゃい」
彼女は、顔を赤くして退散してった。さて、これからどうしよう。