第一形態海龍
次の日。
俺たち《海馬組》の面々は、超級の門の前に集合した。
「戦術は昨日話し合った通りだ。……やるぞー!」
「オーーー!」×8
ちょっと他の門に並んでる人たちに奇異な目で見られたが、これをやるとパフォーマンスが10%上がるという統計があるから、しかたない。
◇
忌々しい空間。
中央には、まだ鎖で縛られている海龍がいた。
「総員、配置について!」
ラチックの指揮に従い、俺、シェンラさん、ミワ、ギコーが海流の正面に鎮座し、残りの人たちは散開した。
「〈殺戮魚の声〉」
ラチックのバフが全員に掛けられて、戦闘準備が完了した。
『じゃあ始めるよ。よーいー、スタート!』
いつも通りのザ・フィッシュの声と同時に鎖が消滅し、
「jqnvpwrhlvbbkzndxbxzyhfb zh!」
咆哮でガンツが一回死んだが、これは必要経費。そして、最初の運ゲーだ。
海龍が、こっちに向かって口を開いて、激流ブレス。
俺が加速を使ってシェンラさんを逃がし、ミワがギコーを連れて行った。
このチーム、激流ブレスを避けれる人が俺、特化ファニー、ミワくらいだから、散開しているメンバーにブレスされたら、一瞬で一人落ちてた。
まあ、人数が多い所にするとは思ってたから。
次の爪攻撃は、シェンラさんに受けてもらう。
やっぱり、完全耐久特化はチゲえや。余裕で受けきっている。
【珊瑚】の自然回復もあるし、通常攻撃ならいくらでも受けられそうだ。
その間に、
「〈サー・ミンチ〉」
「逆刃のナイフ」
「〈シューティングスター〉」
ギコー、ミワ、ガンツの物理攻撃組が海龍を殴った。
若干一名スキルを使っていなかったが、他のに枠を割いてただけだと思う(願望)。逆刃用のスキルなんてある訳ねーだろ。
背中辺りを攻撃していたギコーが、羽で反撃されて少し傷ついたが、すぐにミワがカバーした。
あいつら、耐久がないから心配だが、流石にあの程度では大したダメージにはならない。
ラチックも槍で攻撃できるが、あいつはバフの方が大切だから、生き残りを優先させて貰う。
代わりに、
『そろそろ小ドラゴンが来るわよ』
「了解」
ラチックの声が聞こえてきた。
【シャチ】には、バフ能力の他に、仲間に連絡(一方通行)できる力がある。
海龍のHPの監視と、戦場全体の俯瞰をしてもらっていた。
そして、ラチックの言葉通り、
「ckjb szlhkdfjbrgks rmshkdvsl」
奴が、3体の小ドラゴンを呼び出した。
けれど、こいつらの処理方法は割と簡単だ。
「〈トキシック・ドル〉」
「〈650ボルト〉」
「〈オイル・ファイア〉」
ファニー、アンペル、Rexの魔法三姉妹が、それぞれ小ドラゴンに魔法攻撃をした。
海龍に対して魔法の効きが悪いので、MPが余り散らかしてる。
ちなみに、Rexの【イクチ】という能力は、油を操るというものだ。
みんな忘れてる(作者もよく忘れる)と思うが、あくまでこのゲームは、
Universal Sky and Sea Onlineで、ちゃんとSkyの世界があるのだ。
つまり、しっかり火魔法は存在している。
この海の中で、火魔法が使えないのは常識なのだが……【イクチ】の能力で出した油を燃やせば、火を使える。
油火を食らった緑小ドラゴンは、すぐに丸焼きになった。
その他の赤と黄も、あっけなく魔法にやられたようだ。
『次、竜巻が来るわよ!』
第二の運ゲータイムでございます。
正直、今見えてる技の中だと、竜巻攻撃が一番怖い。
「wjdlbscrxkbshlkrpzwhvljwllpqb」
海龍の魔法で、水中に二つの竜巻が現れた。
作戦通り俺、シェンラさん、ミワ(デコイ)の第一グループ、ギコー、ミワ(本体)、ファニーの第二グループが集まって、竜巻を誘導した。
俺がシェンラさんを加速で運び、もう片方の誘導隊は、素早さがあるミワとファニーの二人でギコーを運んでいた。
なんとか、被害はデコイ一体で済んだ。
『あと5秒はチャンスタイムだけど、攻撃は後にして、配置につくのを優先しなさい』
「はい」
次は……またブレスだったか?
だが、加速が間に合えばどうにでもなる。最初の配置に戻った。
しかし、次の行動は……
「qjnzzljkbrllejbmw pzbnytcwlk bf」
新しい攻撃だった。海龍が叫んだ瞬間、いくつかのウロコがはずれて、四方八方に飛ばしてきた。
俺はシェンラさんの影に隠れてやり過ごしたが、他のメンバーはそこそこ傷ついたようだ。
ファニーとラチックはMPで防御を上げ、ギコーは彼の大きなノコギリにミワと共に隠れて軽傷だったが、アンペル、Rexは2割くらい削られ、ガンツは三回死んだ。
これが何回か続くと不味いな。ラチックもそれは把握してるらしく、
『早めに決着をつけましょう』
伝令がきた。
次の行動は、爪と尾の通常攻撃の連撃だったため、余裕でシェンラさんが受け、また、ギコー、ミワ、ガンツが攻撃し、やつのHPが7割まで削れた。
その時、
「ckjb szlhkdfjbrgks rmshkdvsl qrgjkdszttlxd」
奴が、仲間を呼ぶ咆哮を放ち……小ドラゴン3体と、追加で白小ドラゴンが追加された。
ラチックが各自に伝令をしたそうで、アンペルが赤、ファニーが黄、ラチック自身が白、ガンツが緑、に対処する様だ。
そして、海龍が口を開いて……二回目のブレス。
加速はあるから問題ないハズだったが、
「VAOOOO!」
白小ドラゴンが咆哮を上げ……海龍に白いオーラがついた。
ッツ、ブレスがいつもより早い。
一人なら逃げれるけど、シェンラさんを抱えると避けきれない。
それに、範囲内にギコーもいる。
「いけますか?」
「分かんないけど、やるよ!」
彼女も、覚悟を決めた様だ。いつものフワフワが感じられない。
まだブレスの範囲内に残っていたギコーに〈ノックバック〉を入れて、範囲外へ逃がし、俺はシェンラさんと一緒に盾を支えた。
そして、海龍の激流ブレス。
シェンラさんの大盾に二人で隠れて……凄まじい衝撃。
「キャッ!」
「グア!」
岩の壁に叩きつけられたが、柔らかいところに着地したお陰でなんとか……
「感謝しろよ」
「……お前かよ。サンキュー」
「ありがとね」
柔らかいもの(ガンツ)だった。
結構近くで戦っていたのと、機転が効く司令官に感謝。
お陰で俺の残りHP3割、シェンラさん4割、ガンツストックマイナス4で済んだ。
その間に、小ドラゴンたちは倒されていて、
「〈炎上の油道〉」
「nfmnkvrbvjhglfxbvd!」
Rexの魔法で、海龍の口が燃え上がり、悶えている。
ブレスの後、大きく息を吸い込んだ時に、大量の油を飲ませたらしい。
味を感じる機能がなくてよかった。
魔法はウロコに弾かれてる感じなので、体内を攻撃されると、普通に攻撃が通る様だ。
一気にHPが削れて、残り4割ってところ。
さて、ここからが本番だ。
「lnkhjk rmnlrr clvwrbssrbynprhbdbl prgjgrlhrbqp!」
海龍が相変わらず言葉にならない叫び声を上げ、第二形態に変形していく。
体中に透明な水晶の様な物が生えてきて、周りの水温が下がった。
……今の時代、海龍は氷も使えるみたいです。
【イクチ】
能力:油を出し、操れる。
茨城県辺りに居たと言われる大蛇の様な妖怪で、全身から油を出して船を横切るだけの、結構温厚(?)なやつ。
全長は2キロもあるらしく、横切るのに3時間もかかるらしいけど。
「発火には酸素も必要ですよ」とかの、マジレスは止めて下さい。作者が泣く。
ちなみにガンツの爆弾も油でギトギト。
海龍 圧倒的力から相手を舐めて、多人数を一気に攻撃する習性がある。