第二回イベンティアン
『第二回イベント開催』
GW初期、第二回イベントの告知があった。
いつも通り東間から電話がきたが……割愛。
どうやら、今回のイベントはボス討伐らしいので、いつメン(俺 ガンツ ファニー アンペル)とログインした。
「おーい」
いつもより混雑しているユ弐レイだったが、チャットを駆使して合流することができた。俺以外はもう集まっている。
「久しぶりー……なんかやつれてない?」
「言うな、思い出したくない」
4月のイベントがマジで何も思いつかなかった結果、俺の徹夜案、マ〇カ&ス〇ブラ大会が採用されたんだぞ。
4人に一人はスイッ〇を持ってる時代でよかった。
両方とも結構運が絡むゲームなのに、川上伊織が全勝したって話する?
さらに、「ゴールデンウィークだから校舎を金色に染めよウ!」とか言ってくるバカもいて……とにかく最近は大変だった。
校舎の端っこが少し金色になってるのは、目の錯覚だ。
「お金は出してるから、仕事は減ってるだロ?」
「結局お前が増やしてんだよ!」
「え、アンペル、生徒会やってんの?」
何ですかファニーさん、その怒気を孕んだ声は?
「ああ、こいつと同じ副会長ダ」
アンペルが俺の腕を掴んで……水中でも火花って見れるんだぁ。
またガンツ君が死んでいたが、今回ばかりはなんで死んだか分からない。
『みんなーこんにちはー。みんなのアイドル、ザ・フィッシュだよ!』
空中(水の中だけど)にザ・フィッシュのホログラムが浮かんだ。
やっぱりイベント説明はこいつがやるらしい。
『第二回イベントはボス討伐。4体のボスがいる部屋があるから、そこで戦ってもらいます。報酬はドロップアイテムとか、お金とかもあるけど、確率で【生物スキル】をドロップするよ』
4体のボスは初級の河童、中級の水虎、上級の青竜、超級の海龍がいるらしい。
例えば、初級の河童を倒したとすると、【河童】を得られるアイテムが貰えるようだ。
ただ、同じスキルは存在しないので、アイテムが得られるかは早い者勝ちになる。
……書いてはいないが、俺はこれまで何回かマグロ目当てで襲われている。
第一回の表彰台のせいで、大体の人が【マグロ】だと知っているから、無料で上等なマグロが食えるとなると……やるやつはいるわな。
「絶対スキル変えるぞ!」
「……すごいやる気ダ」
「ドロップしたら譲ってあげる」
ザ・フィッシュが指をパチッと鳴らすと、四つの門が出てきた。
ここに入って、ボスに挑めということだろう。
『期限は明日まで。何回でも挑戦できるから頑張ってねー』
ホログラムが消えて、門が光り出し、挑戦可能になった。
早速各門に挑戦パーティが殺到しているが、どうやら同時に挑めるようで、ドンドン人が吸い込まれていく。
「どこから行く?」
「初級はいいから、中級から行こうぜ」
「それでいいと思う」
「よく分かんないから従ウ」
ということで、左から二番目の水虎になりました。
大量に前に並んでいるが、進むペースは早いので、あと1分もすればいけるだろう。
「いつも通り俺とファニー前の、ガンツとアンペル後ろね」
「ちゃんと前張ってくれよ」
「私が信用できないの?」
「全く心配なんてしてないよ」
お前らが会話してるとガンツが死ぬからやめてくれ。
ただでさえ混雑で人にぶつかって、ちょっとストック削れてるのに、これ以上弱体化すんな。
そんなこんなで、俺たちの番になり、
「頑張ろー」
「「「おー--」」」
ファニーの掛け声で、俺たちは中級の門をくぐった。
◇
門の先は、暗いドームの様な場所で、硬い岩に囲まれていた。
ここでボスと対戦するのだろう。
一応振り返ってみたが、門は光っておらず、帰ることはできないらしい。
そして、ドームの中心に、
「GARURURU」
白い体に青色の模様が入った、トラックくらいの大きさの虎がいた。
太い鎖に繋がれていて、まだ攻撃はできな
「〈600ボルト〉」
アンペルの電撃が飛んだが、ダメージは入らなかった。
「何やってんの?」
「え、今ってチャンスタイムじゃないノ?」
「チゲーよ!こっちに陣を組む時間をくれてるの」
「これがメイドインジャパンなのカ……」
そんなことを言っていると、
『じゃあ始めるよ』
ザ・フィッシュの声がドームに響いた。
息を飲みながら、右手の[熊の返り血]を構える。
『よーいー、スタート!』
ザ・フィッシュの声と同時に鎖が粉々に吹き飛んだ。
「GAAAAAAA!」
解放された水虎が重低音の咆哮を上げて……速い。
まだステータスを上げていないファニーの方へ向かって、鋭い爪による引っ掻き攻撃をした。
「チッ」
舌打ちしつつ加速して、腕で爪を受け止める。
ダメージは……大したことないな。
後衛から放たれた、妹を狙われて怒った矢が水虎の肩に当たり、少し怯んだスキに、
「〈トラッシュジェイド〉」
ファニーの毒玉が口の中に入れられた。
さらに、電撃の追い打ち。水虎でも電気は効きやすい様で、一気にHPの20分の1が削れた。
意外と楽勝か?と思ったのも束の間、
「っつ、不味い!」
水虎が、前衛を無視してアンペルへと突撃した。
こいつ、後衛から狙うように設定されてるタイプだ。
まだ加速のCTが上がっていないから、水虎に追いつけない。
ファニーがステータスを調整してなんとか受け止めたが、素早さに割いた分、防御力は低くなっていて、一気にHPが半分以下になり、吹っ飛ばされた。
ようやく使えるようになった加速で、アンペルと水虎の間に割り込み、ついでに攻撃を加えておく。
「大丈夫か?」
「全然。まだ生き返りもあるから」
ファニーの安全確認をしつつ……ここ!
水虎の爪に、[熊魚の返り血]を合わせた。
カンッと軽快な音が響いて……水虎の爪が弾かれた。
〈ジャスガ〉の効果で、ダメージを無効化したのだ(詳細は後書き)。
今回の俺のスキル構成は、水流 ジャスガ ノックバック 瞬転 逆上で、結構防御よりになっている。
しっかり後衛がダメージをだしてくれるから、長く前線を持たせる方向でいきたいのと、普通にこれが一番安定するからだ。
というか、前回みたいなチンパン構成は一発ネタでしかやらない。
そして、俺がヘイトを取っている間に、
「〈650ボルト〉」
「〈トキシック・ドル〉」
アンペルが電撃を飛ばし、ファニーが水虎の背後から猛毒の針で刺した。
さらに、加速で追い打ちをかける。
「ラァ!」
安定のラッシュで、一気に水虎HPを削り、あと4割。
すると……急にダメージが入らなくなってしまった。
「GAAAA!」
これは第二形態ってやつか?
水虎の体が小刻みに震えて……尻尾が3本に分裂した。
そして、分裂した尻尾が回転し始めて……さっきよりもさらに速くなった。
「いやそうはならんやろ!」
あれはスクリューってことか?
機動力も上がっているようで、俺とアンペルをスムーズにかわして……狙いはガンツか。
なら問題ないかな。
水虎がガンツの首にかぶりついて、当然のごとく一回死んだが、
「じゃあな」
腕には、導火線に火が着いた大量の爆弾が。
慌てて離れようとする水虎に抱きついて、
ドッカーン!
残り4割のHPと、ガンツのストックが5つ程消し飛んだ。
幾つかのアイテムと、お金をドロップしたが、スキルを変えられるアイテムはなかった。
スマ〇ラ大会のルールは4人戦アイテム有りのお祭りルール。
足が速くないから、あんまりルールと嚙み合ってないカズヤで優勝してた。
伊織「だって顔にキズついてるじゃん」
〈ジャスガ〉ピッタリのタイミングで攻撃を防ぐと5割でダメージ無効、連続使用不可
ポケ〇ンの麻痺で4連続で痺れた経験から、連続使用不可。せめて連続では痺れなくしてくれ。
それで勝ち筋が残るかもしれないけど、残される側にもなって。