なんかネタが細かいな
Universal Sky and Sea Online、略してUAO。
キャッチフレーズは『魚や鳥になって、立体的に世界を楽しもう』で、最初に空か海を選んで、空だったら背中に羽が生え、海だったら足にヒレがつくらしい。
さらに、一人一つ生物の名をしたスキルが貰えて、その生物に由来した能力が得られるとか。
PVでは、【ハンマーヘッドシャーク】がハンマーで大きな岩を破壊し、【クジャク】が綺麗な羽を飛ばしていた。
正直、かなり面白そうだ。
「お、あった」
あれから数日経って、USOが近所のゲーム屋で、再販されているのを見つけた。
初日は売り切れていたけど、大量に生産したとの宣言もあり、割と早めに手に入った。
早速家に帰って、ハードの電源を入れる。
入れっぱなしになっていたDAOを丁重にケースに入れて、新たにUSOを入れた。
さて、やりますか。
ヘルメット型のハードをかぶり、ログインした。
「こんにちは」
「うん、誰?」
なんかダンディな声が聞こえてきた。
電子の世界でペンギンが喋っている。違和感がすごい。
「設定の手助けをするNPCだ。よろしくぅ」
「なるほど」
空と海の中間ということで、泳げる鳥であるペンギンが抜擢されたということか。
にしても、その声は子どもが泣くのでは?
「さて、説明文は読んできたか?」
「はい」
「じゃあ、細かい説明は省く。まず、空か海かを選んでくれ」
視界に選択肢が浮かんできた。
統華にメールで聞いてみたところ、『人魚になってみたい』と返信されたので、海を選択した。
まあ、飛べるゲームはあったけど、海で過ごすゲームはやったことないし、どっちにしろ海だった気がする。
「ふむ、海か。俺も海に住んでいるからな。魚はうまいぞ」
「空バージョンをお願いします」
「ふむ、空か。俺は飛べない鳥だから、俺の分まで飛んでくれ」
やっぱりどっちにしても肯定的な意見を言うのね。
「へい!」
ペンギン君が手を上げた。
すると……釣り堀がでてきた。
「いや、どういうことだよ」
「釣りだ。やったことはあるか?」
「少しだけ」
ペンギン君が釣り竿をくれた。
昔の記憶を思い出して、釣り堀に糸を垂らす。
水は濁っていて、何が食いついているかは分からない。
「で、これなに?」
「これで釣れた生き物が君のスキルになるんだ」
「SSRは?」
「どれも同じと言いたいが、サメかドククラゲ辺りだろうな」
「お願いします、サメかドククラゲ、サメかドククラゲ、サメかドククラゲ……」
「……」
これが俺のソシャゲガチャ必勝法。
割とマジでやった方が良いのがでる。
ガチャ運は良い方なんだ、頼む。
そのとき、釣り竿が引っ張られた。
重い、かなりの大物だ。
クラゲではないだろうが、サメの可能性はある。
ペンギン君が網をとりだして、すくってくれた。
「……なんだこいつ」
俺の身長と同じくらいの、巨大な魚が釣れた。
サメではなさそう。
「マグロだな」
「マグロかよ!」
強くはなさそうですね。
というか、おいしい以上の情報がない。
「ほら、手に取ってみろ」
「重!」
必死に両手でもっていると……マグロが光り出した。
どんどん軽く、小さくなっていく。
光が収まって、そこにあったのは……大きな皿に乗せられた、一切れのマグロの刺身だった。
ご丁寧に醤油とワサビまである。
「食べろってこと?」
「食べれないなら手に持つだけでいい。まあマグロなら食べるか。箸どうぞ」
「ありがとう」
醤油をつけて、マグロを食べた。
うん、回転ずしのマグロより少し美味しいこと以外は普通だ。
すると、テッテテーという効果音がして、スキル【マグロ】獲得と表示された。
さっそく能力を調べてみる。
【マグロ】効果:止まったらダメージを食らう
10秒に一度加速できる
「マグロについて解説してやろうか?」
「お願いします」
どこからか、マグロの映像がうつされた。
普通に泳いでいる。
「マグロは、止まると死んでしまうんだ。これがスキルの自傷効果だな」
あ、映像のマグロが死んだ。
右下に※あとでスタッフが美味しく頂きましたって書いてる。
別のマグロが映った。
「マグロは平均速度は時速7キロくらいだが、瞬間速度は時速80キロだと言われている。これが加速効果だろう。別に加速が速いとかでもないけど、それ以外に特徴がないから付けられた」
そんな裏事情話されましても……。
「これってリセマラできる?」
「無理だ。次は、プレイヤーネームを決めてくれ」
ま、まあ、加速度が高ければ使えなくはない。
それよりプレイヤーネームだ。
一瞬『ツナ』とかにしようかとも思ったが、普通にゲーム名でいいや。
キーボードにイグノと打ち込んだ。
好きな漫画のキャラクターなのだが、マイナー過ぎて誰も分かってくれない。
スキがあれば宣伝してるんだがなぁ。
「ふむ、良い名前だな」
「これが出てくる漫画について語っていい?」
「俺はNPCだから無理だ。最後にキャラメイクをしてくれ」
俺は現実からあんまり変えない主義だ。
身バレが怖いから、髪色と瞳色は変えるが。
「何色がいいと思う?」
「マグロだし、赤色にしておいたらどうだ?」
「それいいね」
ということで、赤になりました。
うん、いいね。
「これでよろしく」
「あいよ。じゃあ、今から始まりの町に送るから、頑張れよ」
「ありがとな!」
後書きで能力について詳しく書いていきます。
読まなくても楽しめるので、細かい設定とか見たい人だけどうぞ。
【マグロ】
能力;加速
動かないと自傷
元ネタについては本文で語ってるので割愛。
加速について掘り下げると、10秒に一回2秒間加速。
加速時のスピードは素早さの値ではなく、レベルで決まる。
ちなみに自傷がなかったら30秒に一回とかになっていた。
自傷の動いてる判定はなかなか厳しく、ちょっと舌や指を動かしてるとかだと一瞬でダメージを食らう。
戦闘面に関しては結構強いけど、日常生活に問題がでる。
……あれ、主人公の能力にするべきじゃなくね?