シャロ参戦
みんな大好き(?)シャロちゃん回だぜ!
原田先生は、趣味を合わせることが大切だと言っていた。
ゲームが好きなことくらいは知っていたけれど、やったことがなかったし、ゲームといっても様々な種類があるから諦めていた(聞く勇気はなかった)。
でも、昨日彼と親し気にしている新入生を見て、危機感を募らせた私は、同じゲームをやってみることにした。
どのゲームをやっているかは分からなかったけど、ゲーム友達であろう新入生は、彼のことをマグロと呼んだ(ヤクザは無視)。
調べてみると……魚を基にしたゲームがあるらしい。
すぐに購入して、プレイしてみた。
設定には戸惑ったけど、親切なペンギンのサポートでなんとかなった。
容姿は……気づいて欲しいからあんまり変えなくていいや。
いえ、知ってる人相手だと接しにくいから、ある程度仲良くなったところでカミングアウトの方が良いかしら。
少し面影を残しつつ、接しやすいように……できた。
これであの鈍い男が気づいたらキレる。
最初の町に送られて……早速見つけた。
【マグロ】の人を探せばいいと考えてたけれど、目の前で歩きながら設定をいじってる黒スーツの男は明らかに辰海君だった。
ほとんど現実と変わっていないとはいえ、人混みの中から一瞬で見つけ出した自分に呆れつつ、
「あの……」
気づいたら話しかけてた。
◇
始業式が終わり、帰ってすぐにUAOを起動した。
昨日は第二の町、海底都市ユ弐レイに到着してすぐに落ちちゃったから、探索と他の新要素にも触れていきたい。
ちなみに、東間や会長とクラスが一緒で安心した。まあ会長なのもあと1週間くらいだけどね。
不登校が一人いること以外は平和なクラスだ。
ログインすると……第一の町(グレ壱)だった。
あれ、昨日ユ弐レイからログインできるって書いてたのに。
設定してなかったや。どうやら、一回行けたら町から町にワープできるようだ。
余談だが、あの虫の山は一日でナーフされたらしい。
……冷静に考えればバトロワとはいえ、1位と3位のランカーが相当手こずる難易度ってゴミだわ。
確かに昨日のユ弐レイはすいぶん閑散としてた気が……今探索すればまだ開けられてない宝箱とかあるんじゃね?
さっそくワープしようとしたら、
「あの……」
後ろから声を掛けられた。
振り返ると……まあ、なんて綺麗な人でしょう。
どことなく既視感がある顔立ちに、鮮やかな紫色の長い髪が特徴のJKだった。
「どうかした?」
「えっと、この手のゲームは初めてだから、色々教えてくれる人が欲しくて」
確かに初期装備の彼女は、動きがぎこちない気がする。
このゲーム、先導してくれるNPCとかいないから、初心者にはあんまり向いていないかもしれない。
まあ、今日は暇だし、特に約束とかもない。
新規が入ってこないゲーム(DAO)は廃れる運命だと思うし……付き合ってやるか。
「いいよ。俺はイグノ、【マグロ】だけど美味しくないよ」
「ラチックです。よろしくお願いします」
【マグロ】と聞いて、一瞬安堵したように見えたのは俺だけだろうか。
とりあえず、いつもの犬魚の狩場に誘導しつつ、モチーフについて聞いておく。
「【シャチ】です」
「おお、強そう。説明文出せる?」
メニューを見れる様に設定してもらって、説明文を読もうと、顔を近づけると……
パシィ!
思いっ切りはたかれて、顔を真っ赤にしながら
「ち、近い!」
うーん理不尽。会長みたいだぁ。
流石に初対面ではたくのは不味いと思ったのか、すぐに謝って来たからいいのだが、周りからチラチラ見られてる。
中には……ハラスメント報告してそうな人もいた。
……BANされるかもしれない。
「逃げるぞ!」
「え? キャッ!」
ラチックの手を握って、全力加速し、その場を脱出した。
角を曲がって、路地に入る。
「ふう。ごめんな」
「いえ、私にも非があります」
「……別に敬語じゃなくてもいいぞ」
多分同年代だろうから、俺も全く敬語使っていないし。
「分かったわ」
「……じゃあスキルについて教えてくれない?」
それが素かよ!と思いつつ、話を元に戻した。
武器買うのも面倒だから、手持ちのいらないモンスタードロップ武器を支給したいが、スキルによっては武器が固定されることになる。
何より【シャチ】ってどんな効果か、興味がある。
「味方を強化するスキルよ。シャチはとても頭がいい生き物だから、味方の指揮をとりつつ、強化するスキルになったみたい」
……そっちにいったかー。
最近、スキルの推測をしやすいように、魚について調べていたのだが、シャチは個人戦闘力と群れの狩りを兼ね備えた生物だ。
個人戦闘能力だったら楽だったが、バフ系となると扱いが難しい。
……とりあえず武器は何でもいいか。
本作では、ヒロインは戦闘させます。
某錬金術師のウィ〇リちゃんみたいになるのを避けるためです。