メンバー増加
帰ってから、いつも通りカップラーメンを用意しつつ、1時半にログインすることを東間に連絡しておく。
ちょうどあいつも昼を食べていたようで、アニメキャラの「了解」スタンプが帰ってきた。
今のうちにアプデ内容を確認しておこう。
ネットで調べてみると、大きく分けて、
・第二の町追加
・サブスキルの増加
などなど、よりボリューミーになった感じだ。
東間たちも待ってくれているらしいし、みんなで第二の町まで行くか。
ログイン!
1時半直前にいつもの場所に沸くと……またドロップキックが飛んで来た。
相手はもちろんアンペル。
「遅イ!」
「なんで俺の周りの女子は時間にうるさいんですか?」
ギリギリセーフなんだけどなー。
まあ、町中だからダメージはないし、現実よりは冷静に話せそうだ。
「で、どうして海外の名家様がうちの高校に来てんの?」
「言っただろ、お前にドロップキックを食らわせるためだ」
うん、言われてないし、非常に迷惑だから止めてね?
「……それなら入学までする必要ないだろ。あとどうやって俺の現実を知ったんだよ」
「運営をちょっと買収しただけダ」
自慢げに言うな。
てか運営買収されたのかよ。これ訴えたら勝てるだろ。
このゲームが衰退するのは嫌だからやらないけど。
「入学の件は?」
「……日本に興味があっタ」
「それならもっと名門いけよ。うちなんて地方の1公立高校だぞ」
「いいだろなんでモ」
……素直に言う気はないか。
まあ、無理やり聞くようなことでもないし、ドロップキックさえ止まればこいつがうちの高校にいるのはなんの問題もない。
「こっちでなら構ってやるから、現実で関わるな。それじゃ」
「待テ」
東間たちと合流しに行こうとすると……止められた。
そろそろめんどうになってきたぞ。
威嚇のためにサングラスを装着し、怒気をはらんだ声で、
「んだよ。ダチ待たせてんだ。さっさと終わらせろ」
その声に、アンペルは少し怯えたようだが、覚悟を決めたように、
「ぱ、パーティに入れて下さイ」
と言って、頭を下げた。
ん?ちょっと待って、脳の処理が追いつかない。
「あー、うちは身内で仲良くやろうみたいなパーティだから……厳しいかなぁー?」
そう返すと……泣き出した!?
その時、
「おいイグノ、遅いぞ」
「何やってるの?」
ガンツとファニーがやって来た。
そして……この小学生モドキを泣かせている現状を発見した。
「……本当に何やってるの?」
「ち、違う。実は……」
動揺しつつも、仲間にこの子がパーティに入りたいと言ってきたことを適当に話す。
「それで断ったら泣いたと」
「ああ、そういうことだ」
「アンペルちゃん、あっちでお話しましょ?」
同性ということもあってか、すんなりファニーの提案に応じる。
近くのベンチでヒソヒソと話して……数分後。
「とりあえずお試しで入ってもらおう」
「よろしくお願いしまス」
ちょっと態度はどうかと思うが、こいつらが反対しないなら俺も別に構わない。
「じゃあ自己紹介してこうぜ。俺はガンツ、スキルは【マンボウ】で……」
「移動しながらやろう。第二の町に行ってみたい」
「……そうだな。案内する」
ガンツとファニーが、マップも開かずに泳ぎ出した。
「あれ、何で場所知ってんの?」
「……待ってる間に調べてたんだよ」
「……そうそう」
目を逸らしながらそう言う二人に対して、俺は溜息をつきながら、
「お前ら先に行ったな」
「「勘のいいガキは嫌いだよ」」
さっすが兄妹、息ピッタリだ。
どうやら、先に行って死んだらしい。
第二の町への入口は海底山の頂上にしかなく、結構強めのモンスターたちが配置されてるらしい。
広い場所で囲まれるとガンツはキツイし、ファニーも持久力はないから、二人で挑んで負けてきたという。
「それで戦力増強の為にアンペルを勧誘したってことか」
「実際これからもずっと3人はキツイしいいの」
……ファニーの言う通りか。
このゲームは、友達と集まってワイワイやるのを想定しているようで、3人だとぶっちゃけ無理ゲー。
「これからも、強くて気が合いそうな人はドンドン勧誘していこう」
「第二位みたいな奴はお断りだぞ」
「絶対合わないから大丈夫。それより自己紹介やろう」
全員の自己紹介と能力の共有が終わったところで、丁度第二の町への山に着いた。
火山のような形をしていて、頂上の火口を通って、地下に行けばいいらしい。
UAOのマップは広大で、どこからでも海面に出ることができる。
だが、火山の周りは高さ制限がされていて、地上のモンスターを無視して火口には行けないようだ。
そして、肝心のモンスターは……虫魚。
「うわぁ。これ子どもが見たら泣くだろ」
ちなみに、アンペルさんは
「日本のゲームは身長まで変えられるノ!?」
と興奮して4メートルに設定したら、バグって現実の身長になった。
イグノのキャラがブレブレかもしれませんが、これ合ってます。
気分屋の性格だから、一瞬でキレたり、聖人になったりします。
人間普通はこんなもんですよ。