モノホン貴族だぁー(白目)
実際には、アンペルはツインテールと金色の目で、今何食わぬ顔で座っているのは金髪を下した青目。
だが、その容姿や小学生ボディは、間違いなくアンペルのものだ。
「どうしたの?」
「いや、知り合いに似てる人がいた」
そう、似てるだけだ。もしくは、名家で有名だからアンペルが真似してたとか。
「じゃあ、仕事の用意しておきますね」
「ええ、頼んだわ」
嫌な思考を払拭する様に、仕事に集中する。
倉庫の備品数を確認して、元あった場所を教えてもらい、準備は整った。
その頃には式も終わっていて、どんどん新入生が退場していく。
アンペルらしき人にウィンクされたけど、視界に入った人全員にやってるんだろ(やけくそ)。
全ての新入生が退場したところで、体育館を使う系の部活たちが入って来た。
イスやらマットやらを迅速に片づけていく。
……さっすが運動部、一気にイス五つとか持ってるよ。
俺も、自分の仕事を全うする。
「そのタイプのイスは右側に並べといて」
「分かりました」
「すみません、これどこに持ってけばいいですか?」
「んー、後で俺が処理しとくからそこに置いといて」
「はい!」
「あ、あー(マイク)。倉庫のイスの数が合いません、なにか知ってる人は報告下さい」
「グラウンドにありました」
「なんでそんなとこ行ってんだ?」
「入学初日に一目惚れからの告白で振られたやつが、イラついて投げたらしい」
「ケガ人は?」
「なし」
「ふう」
あとは、このイスの形を少し直して、土を払ったらお終いだ。
ったく、初日に告白って、記録でも狙ってんのか?
力尽くで形を修正し、簡単に雑巾で拭いたら、他のと遜色ないくらいにはなった。
「終わった?」
倉庫に会長がやって来た。
遅いって文句言われそう。
「違うんです、初日に告ってイスを投げた奴が悪いんです」
「あの子、イス投げたの?」
「誰が投げたか知ってるんですか?」
「告白されたし」
アンタかよ。
「会長に告白なら……分からなくはないか」
「え?」
「いや人気者だし。それより他のところは終わってますか?」
「ええ、あなたがイスの捜索程度に手間取ってる内に、他の場所は終わってるわ。
じゃなきゃ私がこんなところに来る訳ないじゃない」
なんかいつも以上に言葉がキツイ。
怒っていらっしゃる?
体育館からは、バドミントンやバレーの音が聞こえてきた。
そろそろ帰ってもいいかな。
「じゃあ、お疲れさまでした~」
会長に挨拶して、自転車を取りに行く。
東間たち待ってくれてるかなぁ。もし待ってなかったら、またあいつに会長立候補させよう。
「で、何やってるんですか、会長」
なんかさっきから無言で並歩してるんだけど。
会長歩きじゃなかった?
「……次の集まりについて話を」
「メールでいいんじゃ?」
「メールでは伝わりにくいものがあるわ。第一、面と向かって話すことが一番のコミュニケーション手段であるということは既に証明されていて、確かにメールにも利点は……」
「もういいです」
会長はたまにオタク並の早口言葉で論破しようとしてきます。
ファンが言うにはそこが可愛いらしいです。
「次は最後の引継ぎですよね?」
「その通りよ。仕事を清算して、次の世代に伝えたいことがあるなら……」
「おりャー------!」
その時、俺の後頭部にドロップキックが飛んで来た。
死角から放たれたそれを避けられるはずもなく、敢え無く道の真ん中に倒れこんだ。
「誰!?」
「そこのヤ〇ザの知り合いダ!」
本日二回目の後頭部への攻撃に怒りを抑えつつ、振り返ると……小学生金髪ツインテールが仁王立ちしていた。
「……もしかしなくてもアンペル?」
「言っただろ、今年で高一だト」
「もしかして、海外の名家さん?」
会長からの質問に、アンペルは胸に手を置きながら、
「いかにも、私はディア・ワトソン。ワトソン家跡取りダ」
「その跡取りが何でうちの学校に?」
「あんたのためだよ【マグロ】ォー」
煽らなければよかった。だってこんなことになるとは思わないじゃん。
「……会長、後は任せた」
「え、ちょっと」
俺は、全力で自転車置き場まで走り、帰りもスピード違反で帰った。
少し走って追って来たが、小学生ボディでは無理があるのか、すぐに息が切れて、
「今日1時半からログインしとケー!」
「負け犬の遠吠えがぁ!」
やべ、また煽っちゃった。
でも、あいつを見るとなんとなく煽りたくなるんだよな。
1時半……現実でドロップキックよりはマシか。
この物語はフィクションです。
現実のワトソンなんにも関係ありません。なんとなく電気っぽい名前にしたかっただけです。
ドロップキックは身長がとどかないから二回から飛び降りた。
退場するときに見つけて、ずっと出待ちしていた模様。
もし人間違いだったら大金が動いていた。
次はちゃんとゲーム回です。