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Universal Sky and Sea Online 水中のVRMMO  作者: カレーアイス
第一章 始まり
14/110

逃げるはとっても役に立つ

 いきなり何もないところに放りだされたらまずかったが、しっかり海藻の中に転移できた。それも、結構茂っている所だ。

 最初はある程度間隔をあけて配置されると予想して、先に海藻の回復効率チェックをしておく。

 わざと止まった判定を受けてHPを減らし、緑色の海藻を千切って口に運んだ。


「うーん、味は悪くないが、やっぱり回復効率が悪い」


 2割のHPを回復するのにかかった時間は20秒。

 ただ、HPがかなり高い俺でこれなら、割合回復のようだ。


「回復の時は気を使わない……」


 後ろから微かに音がした。

 DAOでは透明化で害悪を仕掛けてくる奴が一定数いて、そのせいで耳が肥えてる人が多い。もちろん俺も耳が良い。

 それに、水中では音が伝わりやすい上、動くときに鳴る音も大きい。


「いるな」

「……」


 なにも反応がない。ブラフだと思ったか?

 だが、俺のスキルは基本的にカウンターで使った方が強い。

 まだ完全に位置が掴めていない状態で、迂闊に突っ込むべきではない。


「気のせいか」


 そう言って、わざと背中を見せ、逆方向に泳ごうとしたその時。


 ガサッ


 加速!

 とっさに伏せた俺の頭上を、驚愕した顔の槍使いが通り過ぎていった。

 追おうとしたが……速い、加速時の俺と同じくらいだ。


 おそらく【カジキ】とかそんな感じだろう。俺が加速時に結構な自信を持っているように、あいつも突きに自信があって、躱されたのはショックなはず。

 実際はCTがあり、すぐにもう一度やられるとゲームオーバーだったが、相手は警戒して、また海藻に潜伏した。

 音で大体の位置が分かる。逃げるという手もあるだろうに、槍使いは逃げない。


 ガサッ


 今度は加速しつつ、カウンターを合わせて一発食らわせたが、こっちも肩に傷が付いた。

 こっちの拳もしっかり入った感じはしないし、痛み分けってところだろう。

 さっき取った海藻の残りを食いつつ、作戦を練る。

 このままだと、その内に連続で撃たれて加速が使えず死ぬ。

 相手のスキルもCTはあると思うが、行動が槍に限定されている分、俺よりは短い気がする。


 ……早速あれの出番か。


 よく音を聞いて……今!

 加速して飛び上がり、右からの突きを躱し、頭を爪出しメリケンで殴った。

 加速は終わったが、馬乗りになって殴りまくったら、ポリゴンになって消えていった。


 何故今回は反撃が間に合ったかというと……〈水流〉の使い方だ。

 さっきまでは、(かわ)す補助に使っていたが、それだと反撃には繋がらない。

 だから、相手の進行方向と逆向きに水流を置いておいた。

 これなら相手のスピードが下がり、躱すのも攻撃も余裕ができる。


「さーてドロップ品は……魚だけか」


 イベント中はモチーフの魚以外ドロップしなくなるらしい。

 どうやら、【ダツ】という魚らしく、口が尖っているのが特徴だ。

 あとで食べる用に収納し、いつの間にか聞こえていた戦闘音を避ける様に、緑の海藻を食べながら消えていった。





「スドレイン!」

「クッ!」


 相手の手が伸びて、俺の腕に絡みついてきた。

 それに……だんだんHPが減ってる。HPを吸収する能力もついてるのか。

 だが、俺は一気に勝負をつけるタイプだぜ?


「〈水流〉加速」


 絡まれていない左手にメリケンサックを持ち替えて、思いっ切り顔面を殴り飛ばした。

 光のポリゴンになっていき、残ったのは……虫?


「ヤゴか。虫のモチーフなんてあるんだ」


 トンボの幼虫ヤゴ君、あんな能力持っていたのか。


「さて、君はどうする?」


 振り返ると、光輝く黄緑色の髪をして、盾を持った少女がいた。

 さっきは、こいつと軽く手合わせした所にヤゴが突っ込んで来たんだ。

 少女は、ちょっと考えた後、


「やめておきます。いつまで経っても攻撃できる気がしません」

「いや、君も相当だと思うよ」


 ダメージを与えたりもしたが、たちまち回復してしまった。

 俺以上の耐久特化ステータスに、スキルも多分自己回復系、安定して火力をぶつけなきゃいけないのに、加速のクールタイムがあるから次の加速にはHP満タンになってそう。

 要するに自己回復耐久型VS中途半端アタッカーとかいう不毛でしかない対面なのだ。


「嫌だったら答えなくていいんだけど、モチーフって何?」

「【珊瑚サンゴ】です。能力は防御上昇と継続回復、髪が光っているのもスキルの効果です」

「そんなのもあるのか。俺はマグロで……」


 束の間の平穏の後、俺はまた戦闘を求めて泳いで行った。



 既にイベント開始から1時間半が経ち、俺はあることに気づいた。


「俺のスキル、めっちゃバトロワに適してるわ」


 自傷は置いといて、加速が強すぎる。

 何故なら、バトロワにおいてある意味一番大切な、逃げるという手がほぼ確実に通るからだ。

 敵に囲まれたら逃げる、相性が悪ければ逃げる、一旦落ち着きたいから逃げる、なんでもあり。

 最初のダツは同スピードだったから迂闊に逃げれなかったが、あれ以外なら余裕で逃げ切れてる。

 某FPSゲームの大会で空が飛べるキャラの使用率が異常だったのと同じ理由だ。


 ん?運営から、必読メッセージが来ている。

 開いてみると……


『楽しい楽しいイベントも、もう半分が経過しました。ここからは、順位と撃破数をトップ100まで表示しようと思います』


 今の順位がメニューから見れるようになった。

 早速拝見っと。

 俺は……16位だった。ひたすらキルパくしただけのことはある。

 瞬間火力はあるから、キルパクにも向いている。

 ガンツとファニーは……両方60位後半にいるけど、もうやられてるから、これから抜かされそう。

 もし今俺がやられて、半分になったとしても二人には勝っている。

 最低限の目標は達成した。あとは10位以内に入るだけだ。


『あと、現在十位以内の魚を倒したら100人カウントされるよ。

じゃあ、引き続き頑張ってね』


 ……もう少し後になってもいいか。


 解説

 【ダツ】

 ・刺突時に加速

 ・刺突ダメージ上昇


 刺突に全振りの魚。

 モチーフのダツは口が尖っていて、光る物に突っ込んでいく。

 沖縄辺りににもいるらしい。普通に人を襲うこともある。


 【ヤゴ】


 ・手が伸びる、伸ばした時に素早さ補正付き。

 ・HPを吸収する


 トンボの幼虫で、水中に生活している。

 ヤゴは顎のしたが伸びて、体液を吸収するという特徴があり、流石に人の顎を伸ばすのは気持ち悪いから仕方なく手を伸ばした。

 使用者が脳死で(ネットに従い)攻撃素早さぶっぱしたせいで弱くなったが、能力自体は強いはず。

 耐久にがっつり割いてHPを吸収する立ち回りの方が絶対強い。

 けど、作者のイメージ的にどうしても脆かったんや。


 珊瑚は再登場するのでまた今度。

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