大決戦 イグノとシロン
イグノVSシロンの一騎打ち。
デュオ大会で一度戦ったが、あの時は引き分けだった。
見えない力を操って、イグノとよりほんのり遅いくらいのスピードで移動し、見えない力で高火力攻撃、即死攻撃を繰り出すヤバい奴。
さらに、硬い鎧である程度の防御力もあり、力、防、速の全てが揃っているチートちゃん。
……ホント、バカみたいな性能してるわ。
「〈ゴーストジェット〉〈爆霊覇〉」
「〈木刀打樸〉」
俺とシロンは正面からぶつかり、攻撃の手を木刀で押さえつけた。
シロンの手からは、大きな謎の透明エネルギーが放出されていて、直接触れられるとヤバそうだ。
そして、打撲の衝撃が鎧を伝わり、シロンに少しダメージが入る。
これを繰り返せば……削りきれるはず。
追撃を振り切って躱し、相手の強化領域に気を付けながら振り返った。
シロンも、もう追いつくのは諦めているらしく、次の接敵をおとなしく待っている。
「行くぞ!」
「〈ゴーストジェット〉」
また二人は正面から激突し……
「〈木刀打樸〉」
「〈霊爪〉」
スパ
細長い物に触れた木刀が、一瞬で輪切りになった。
……いや、もうちょい耐えてくれよ。
ついでに、木刀が貫通したせいで、額に浅い傷が付く。
もう少し近かったら、脳が切り裂かれて、即死していた。
「〈霊爪〉」
「ッツ!」
さらに、左手で二の太刀が振られる。
いつも通り抜けても、躱しきるのは難しそうなので、残った木刀の柄を顔に投げつけて防いだ。
そのまま通り抜けて、一旦危機を脱する。
……一発で折れるなら、木刀も有効な手段ではないか。
一応、まだ使うかもしれないので、新しい木刀を取り出して、スーツのベルトに差しておく。
「ここからは……素手だ(メリケンあり)」
何となく、腕を鳴らした。
さっきから、接触の時に減速していたので、そこそこ熱は溜まっている。
……腕を鳴らした時に、左手を軽く火傷したのはナイショ。
そして、今日三度目の衝突。
今回は、シロンの弱点を狙う。
前々回、地味にアンペルがシロンの鎧の一部をレールガンで破壊し……脇腹の装甲は無くなっている。
そこを突けば、一気にダメージを与えられるハズ。
「〈霊爪〉」
「〈紅蓮拳〉」
見えない細長刃物を、熱を全て使い切ってでも破壊し、懐の中に潜り込む。
そして、目当ての脇腹に、手刀を入れ込んだが……
「〈霊鎧〉」
「は?」
見えない壁に止められた。
そういう使い方もあるのか。
そして……弱点を突くのに集中し過ぎて、隙が出来てしまう。
「〈凱正拳〉!」
「グハッ!」
背中を思い切り殴られ、下に吹っ飛ばされた。
とりあえず、いつもの如く逃げて距離を取る。
左上に視線を移し、自分のHPを見たが、まだ7割近く残っている。
防御にリソースを吐いていたから、そこまで攻撃力は無かったのかな?
……脇腹を狙うのは、結構なリスクがある。
弱点のことは、もう忘れた方がいいかもしれない。
「となると……やっぱり、熱い一撃で鎧を貫くしかないか。〈溜摩熱〉」
シロンと距離を取って、右手のメリケンサックに摩擦熱を溜め込む。
どうせ近づいたら逃げられるということが分かっているのか、シロンが追ってくることは無かった。
……っていうか、ガン逃げからのチャージって、かなりの陰湿戦法だな。
まあ……今回は負けられないから、仕方ない。
勝利の為なら、幾ら陰キャと罵られようと構わない。
「ヒート・オーバーチャージ」
「来なさい!」
四度目の交差。
俺は、また真正面から向かっていき……シロンは、動かない。
いつもなら、あっちも向かってくるが、今回は止まっている。
何か仕込みがあると見るのが妥当だが……見てから回避するしかないな。
「〈紅蓮拳〉」
「〈ゴーストジェット〉」
俺が横、シロンが縦の垂直に交わり、俺が熱の全てを使って拳を突き出した瞬間。
ドッチボールで、回転してボールを避ける的な動きで、シロンが回転した。
こちらの方が少し速く、鎧に凹みができるが、本体には当たらず、ダメージは入らない。
そして、そのままの回転で掌拳を突き出し、
「〈爆霊覇〉」
「痛!」
透明エネルギーを俺の中に流し込んだ。
一気にエグいダメージが入り、HPバーが短くなっていく。
あっという間に、残り3割弱になった、
……熱も溜まっていないし、ここは逃げの一手。
もう一度熱を集めつつ、前回の接触について考える。
シロンの回転は反時計回りだったので、右側に向けて打たれた拳しか避けられない。
……俺の、何もなければ真正面に拳を打つ癖が、読まれていたのか。
ゴミみたいな癖のせいで、一気に不利になったぞ。
このHPだと、もうまともに打ち合えないぞ。
たまにやる腕捨て戦法もHPは4割必要で……選択肢が限られてる。
次に削られたら……それはもう負けだ。
「……アレやるか」
リスクが高い作戦だが、それしかない。
熱を溜め切ったのを確認し、ベルトの木刀に手をかける。
そして……最後の交錯。
柄が焦げている木刀をまた投げたが、一瞬で切り裂かれた。
「〈霊爪〉」
ここまでは想定内……というより、誘導した結果。
そのまま、見えない鋭い物が振るわれるが、それが一撃で砕けることは分かっている。
「〈紅蓮拳〉」
熱を解放して、正確に見えない物を破壊した。
そして、『今回はこれで終わり』とでも言うように、いつも通り通り抜けた。
そう、いつも通り。
「解除〈溜摩熱〉」
俺は【終焉まで続く加速】を解除し、さらに鱗器でブレーキを掛け、すぐに止まった。
今、シロンは俺が逃げていると思い、気を抜いて……反応が遅れている。
そこに、通常の加速をして、背後から襲い掛かった。
「〈紅蓮拳〉!」
「うわ!」
ついでに溜まった熱を利用し、装甲が薄くなっていそうな関節部、肩口に手刀を叩き込んだ。
少し熱量が不安だったが、弱点を狙ったこともあり、なんとか装甲の破壊に成功する。
「ッツ、〈ゴーストジェット〉」
「逃がさん!【リーフィーシードラゴン】〈草縛り〉」
加速して逃げられそうになったが、直ぐにスキルを切り替えて、草で俺とシロンをガチガチに固めた。
これで逃げられないし……背後を取れているので、シロンから俺は見えない。
「〈木錬成〉木刀!」
「〈霊鎧〉」
木刀を作り出し、装甲が無い肩口と脇腹を狙ったが、見えない壁に防がれた。
何の為に紅蓮拳で脇腹を狙わなかったと思っているのか。
防がれた時のリスクが大きいのと、この見えない壁を分散させるためだ。
「オラオラ!〈木刀打樸〉」
「うー〈霊界の招き手〉」
この時、世界が分かれた
……嫌なワードが聞こえてきた。
何の感触も無いが、体の節々に悪寒が走り、俺の素晴らしい勘が警鐘を鳴らしている。
……長くやってるとヤバい。
この、【リーフィーシードラゴン】が出せる最高火力といえば……。
「……〈禁木〉100万〈木錬成〉木刀」
金を消費し、金色に輝く、高攻撃力の木刀を作り出した。
「これで……終わりだ!」
背後から金色の木刀を振り降ろし、鎧を貫いてシロンを倒した。
……どうも、最終決戦だけ金の力で勝つ系主人公。
最終決戦だけ金の力で勝つ系主人公。
こうなるのは、大体決まってた。
次回、最終回。