生徒会副会長 俺☆
現実回です
年度が変わって数日、まだ春休みの真っ最中だが、俺は自分の高校に登校していた。
新入生の何とかで、生徒会の仕事が入っているのだ。
こう見えても俺は、杉丘高校生徒会副会長である。
あれは半年前、後期生徒会委員決めの時、東間が何か言い出したのが発端だった。
「俺、生徒会長になろうと思うんだ」
当時、生徒会系の恋愛アニメが流行っていたから、若干アニオタが入っている東間君は、見事流されていた。
そして、この話をしていたのはDAO内で、徹夜した後のこと。
俺は深夜テンションで、
「おー、じゃあ俺が副会長やってやんよ」
そして、本当に立候補した結果……俺の名前の下にだけ真っ赤な造形花がついていて、東間の名前の下にはない。
つまり、俺だけ当選してしまった。
そして、今。
部活の音だけが響く学校内を通り、生徒会室に着いた。
ドアを開けると、生徒会長、越湖シャロ(どっかの国の人と日本人のハーフ)が会長席に座っている。
いっつもテストの成績はトップで、五か国語を話せる才女。
綺麗な黒髪と、毒舌だが凛とした性格で、落選した東間曰く、『高校の選挙で学校一の美女に勝てる訳ないだろ』とのこと。
生徒会選挙を人気投票って呼ぶな。
「お疲れ様です」
「遅い。10分前には着いておきなさい」
今15分前ですが。
だが、俺はこの人とのレスバに勝ったことがないので、おとなしく謝り、自分の仕事を始めた。
書類に目を通して、印鑑を押すかサインを書き、間違えている場合は修正しておく。
生徒会は案外楽とか言うけど、この学校は結構ハード。
なんだよ『××の奥さんとの不倫で〇〇先生解雇』って。こんな書類生徒に見せんなよ。
流石にこれは紛れ込んだだけだろ。印鑑欄あるけど。
もう慣れたもんだし、いっつも休み時間には読書をしてたのが功を奏したのか、俺の読文速度は結構早い。
気づいたら書類が無くなっていた。
会長の机を見ると……まだまだ書類の山が積んである。
よっしゃ、煽りに行こう!
「自分の分、終わりました。……会長はもう少しかかりそうですね(煽り)」
「そう。お疲れ様、帰っていいわよ(無視)」
「いや、なんか反応して下さいよ。ていうか他の人どうしたんですか?」
うちの生徒会は会長一人、副会長二人、書記一人で構成されており、俺以外の副会長と書記が何故か来ていない。
まあ、あの人たち、仕事はできるけど二人とも会長の友達(女子)だから、俺が圧倒的アウェイになるんだけども。
「欠席よ。私がその分働くから問題ないわ」
「そうですか、じゃあ仕事もらって行きますね」
半分くらい書類の山から取って行こうとして……会長に止められた。
「これは私の仕事よ。あなたはおとなしく帰りなさい」
「これは生徒会の仕事で、俺は役員、つまりこれをやる権利がある。
証明完了QEDィ」
自分の机で作業を再開する。
印鑑が必要な物はチェックだけして、サインが必要な物は……『越湖シャロ』っと。
この半年で偽装サインがかなり上手くなった。
正直今一番得意な漢字は越。
それが終わっても小山が残っていたので、もう何も言わずに全部持っていった。
だが……それが終わっても会長は机に向かっている。
「何やってるんですか?」
「新入生への祝辞の台本を書いてる」
ああ、やけに進みが遅いなと思ったら、そのせいか。
「何も見ずにやっているんですか?」
「どういう意味?」
「こういうのってテンプレートがあるから、それを参考にした方がやりやすいですよ」
流石にゼロから祝辞を錬成するのはキツイだろ。
「多分、探したら去年の文章とかありますよ」
会長は少し考えたようだが……
「そうね。早速探して……」
「俺が探しとくんで、この書類片付けといてください」
一部俺では出来なかった書類を渡し、書庫にテンプレートを探しに行った。
自分では見つけられなかったが、管理している先生に聞いたら、過去数年分の台本を持ってきてくれた。
「ありました。やっぱり、どれも大体言ってることはあまり変わりません」
「そう。助かるわ」
さっそく過去の文章を見つつ、自分の言いたいことを交えていく会長の隣から、助言を出していった。
「それはちょっと表現が硬すぎます」
「じゃあ、こんな感じで……」
「ああ、いいすね」
「いや、そんな言葉中三じゃ分かりませんよ」
「そうね。あなたは分かるの?」
「何となくなら」
すると、2時間かかっても全然進まなかった作業が、たった30分で終わった。
「やった、出来たわ!」
「お疲れ様です」
「ありがとう!」
テンションがハイになっているのか、笑顔で俺の手を握り、上下に揺すった。
数秒後、少し赤くなり、いつもの鉄仮面を取り戻して、
「触らないで」
「酷くない!?」
完全にそっぽを向いて、目を合わせてくれない。
まあいいや、後は担当の先生にでも確認を取れば今日の仕事は終わりだろう。
「じゃ、帰ります。お疲れ様でしたー」
彼女は、何も言わなかったが、そっぽを向いたまま、手だけ振ってくれた。
さーて、帰ったら何しよう。
◇
彼が帰ってしまった。
せっかく木山さんたちが二人っきりにしてくれたのに、特に進展もなく、一瞬で時が過ぎてしまう。
この関係が終わる前に、この気持ちを告白できるだろうか。
いけない、まずは先生に報告しないと。
職員室の扉をノックして、担当の原田先生に仕事の終わりと、文章のチェックを確認してもらう。
先生は、文章を読んで……
「いい台本よ。毎年修正しているけど、今年は必要なさそうね」
「ありがとうございます」
「これは一人で書いたの?」
見上げると、先生はとてもニヤニヤしていた。
「どういうことでしょう?」
「いやね、さっき昔の台本を取りに来たのが辰海だったからね。
進展はあったの?」
この先生、50を過ぎてる割に甘酸っぱい話が大好きで、恋愛に困ったらこの先生に相談すれば9割は成功すると言われ、学校の七不思議に登録されている。
そして……もちろん私のことも気づかれている。
「それが……全く」
「ハァ。もう任期終了も近いんだから、大胆にならないと」
「それは……分かってるんですけど……」
今日だって、無意識に手を繋いでしまったが、つい暴言を吐いてしまった。
やっぱり、私に恋愛は……
「ハァ。あなたほど手のかかるのも珍しいけどね」
たぶん相手が悪いです。
そう思いつつ、口にださないでいると、先生はニヤリと笑って……
「久しぶりに本気をだしますか!」
悠馬君は深夜テンションで頭がおかしくなります。
人気投票で勝てる程度には顔がいいです。
ちなみに、作者は生徒会やったことありません。違和感あったら教えてください。
春休みが終わったら現実回が増える予定。
あとは体育祭や文化祭とかのイベント系はやりたいな。
初めての他人焦視点が初登場のキャラになるとは思わなかった。
ツンデレ入ってるから、本音を出しにくかったのが原因かと思われ……
次は普通のゲーム回です。
原田先生の恋愛講座はもう少し後。