第四十一話 ゴスっと! 異世界懇親会! 略して『イセコン!』④
ドキドキドキ
ドキドキドキ
俺の鼓動が早くなる……ああ、好きだ。
俺がミカに抱き着かれたことにドキドキしているのか、彼女を助けたということに疑問を持っているのかわからなかったがとにかく落ち着こう。
「すぅう」「はぁ」と俺は深く深呼吸をした。
「耳、貸してください」
「え、あ……うん」
彼女は俺の耳元に唇を近づけていくる。彼女の吐息が俺の耳を突き抜けてふぁっとする。柔らかなにおいが俺の痛覚を刺激する。
(あわあわあわ! 俺の頭がおかしくなりそうだ)
「将大さん、あなた私の世界にいましたね?」
「ど、どういう事」
「正確に言えば女人島に行ったことがありますね、男なのに」
「……!」
嫌な感覚が頭をよぎる。
もしかして、この人って……。
「もしかして君は……」
「はい、男です。正確には男でした」
ミカはニカっと天使のような微笑みをむける。
「あなたが温泉で男性服を洗濯機に入れて取り出すのを忘れていましたね。服に田中将大と書いてありました。私が転生したとき、厳重男性警戒の最中だったんです。私はすぐに捉えられ「処刑だ」と言われました。ここは女人島で男性厳禁、男性は殺されると言われました。しかし、この島では「男性」として死ぬだけらしくて「女性」として生きていくことになったんです。」
あ……これ……もしかして……この人、俺がバカンスに行ったことを知っているということは……
「あなたが厳重男性警戒の状態にしていなければ、私は一生男として山に隠れて過ごすか死ぬところでした! だから私はあなたに感謝しているんです。転生したら会えないと思っていたのに、まさか司会者としてお会いできるなんてうれしくて! それで!」
ややややや! やっぱりか!
「私、この世界で一生懸命頑張ります! 応援していてくださいね!」
そういって、ミカは令嬢と獣人の子の話の中に潜っていった。
「すぅ」「はぁ」「すぅ」「はぁ」
俺のドキドキは彼女の「男です」から徐々に収まっていた。
(男に恋するところだったー! 元男だけど!)
(あれ? ということは……)
俺の頭に一線の電流が走る。
もしかして、イセコンに集まった人たちのほとんどは、俺が異世界アルバイトでイセパットに登録した世界のひとじゃないか!
俺は先ほどの自己紹介の記憶を思い出す。
1人目のイケメン君、名前をアダンと言っていた……アダン?
「「ああああああ」」俺は小さく叫び頭を抱える。
こいつ、オークのアルバイトをした後に異世界転生したんだ!
2人目のおデブちゃん……なんかイセパットで見たことある……
(伝説の勇者って……お前、それ何年前だよ)
ああ! そうか! 俺が魔王になった後に異世界転生したんだ。俺が弱点を碑石に書いておいたから、ハイハイで弱点の小指をコツンってやって魔王を倒せたんだ!
3人目の令嬢、4人目の獣人の子に触れ合うアルバイトを今までなかったから除外するとして、5人目の脱イケメン君。
『俺は転生前伝説のレーサーだったらしくて、もう一度俺の記録を超えるのが生き返る条件なんだ』って言ってた。
俺がチート能力で圧勝したドラゴンレースの転生者か! ああ、なんてかわいそうに。チート機器『パラメータ調整器』は俺がアルバイト中に使った天界のチート機器なのだ。もちろんチート機器をアルバイト終了後に回収した。そのため、彼が俺の記録を打ち破るのは相当後になる……が、頑張れよ……。
そして6人目の超絶美少女ちゃん。彼女は俺が女人島でのアルバイトの後転生された人だった。本当は男だったが、女人島で「男性」として殺されて「女性」として生きることに……
「はぁ」
俺のアルバイト、ちゃんと成果がでているのかと嬉しいと思う反面、幸せそうな人、かわいそうな人が出てきているのは何だろうなと不思議な気持ちになった。




