第三十七話 『修羅場回』俺、死んで天界にいるけれど死ぬかもしれない②
「お待たせしました!」
次に俺のビーフシチューがテーブルに並ぶ。
俺が大好きなビーフシチュー、ダリアさんと同じようにがっつくようにいただきたい!
「ああ、おいしかった。ご馳走様」
「は、はや!」
だ、ダリアさん。俺の注文が今来たばかりなのにオムライス完食っって!
「将大、私あなたに言っておかないことがあるの」
なんだ、今度はダリアさんが真剣な目で俺を見つめてくる。
だがしかし、俺は目の前のビーフシチューを「待て」できるほどできた人間じゃない。
「ダリアさん。待ってくれ……」
「え?」
「俺、大好きなんだ」
「え、ええ?」
「ビーフシチューが大好きなんだ! 先に食べさせてくれ!」
ガツガツガツ……
「は……?はは……」
ダリアさんはあきれた目で俺を見つめる。
数分後
「ああ、くったくった! お腹いっぱいだぁ! やっぱりビーフシチューは最高だぜぇ! んで、ダリアさん。言いたいことってなんでしたっけ?」
「……」
「だ、ダリアさん?」
「も、もういい! 私帰る!」
「ええー!」
そういってダリアさんが帰り支度を始める。俺、なんかやっちまったか?
「じゃあ、明日も仕事だからちゃんと来なさいね! じゃ!」
なんだなんだなんだ! ダリアさんがだいぶおかしいぞ。
顔がタコのように真っ赤だ。俺、怒らせることいったか?。
ダリアがそそくさとイスから立ち上がり出口の方に向かう。
「あ、そっか。そういえば、あんたの優勝記念だったわね、おめでとう。これが言いたかったの!じゃあね」
そういってダリアさんはお店を出て行った。
な、なんだったのだろうか……ダリアさんの様子が非常におかしい。
時刻は夜9時ごろをさしていた
(飯を食ったことだし……帰るか)
俺はレジで会計を済ませた後、自宅へと向かった。
◇◇◇
「た、ただいまぁー」
「おかえりなさい、将大さん」
「え……ミミ?」
ゴス! ゴス!
ミミはソファーに向けてゴスゴスしていた。
「ひ、ひぇ」
俺は思わず変な声が出てきてしまう。
「いままでドコニイッテイタンデスカ?」
ミミの瞳が暗黒の眼をしている。
ゴス! ゴス!
「え……えっと……」
ミミがどんどんこちらに近づいてくる。
ぴた ぴた
首をかくんかくんと動かしてミミは、近づいてくる。
た、確かに遅くなっていたのは悪いけど。
「オンナノコ……タブラカシテ遊んでたの?」
え、ええ。
「違う、違うんだ俺は……」
「ニオイカゲバ……わかる……」
そういってミミは俺の目の前に立ち、服をクンクンとした。
「将大さん……」
「は、はい」
(まさかダリアさんと一緒にご飯を食べていただけで、ゴス! ゴス! されることは無いだろうな……)
「だ、ダリアさんのにおいだぁ!」
ぎゅううううううっと俺はミミに抱きしめられた。
「もう! 将大さん、ダリアさんのところで遅くまでアルバイトしていたんですね! よかったよかった」
「ふぇ?」
「帰りが遅かったので、てっきり天界の女の子をたぶらかして遊んでいるんだと思っていました」
「いやいや、それはないよ」
「ダリアさんと一緒に過ごせるって羨ましいです。彼女は私のあこがれのお姉ちゃんなんです。優しくてきれいで最高なんです!」
「は、はぁ」
「ささ! 将大さんの疑いが晴れたところでご飯にしましょう! 私、一生懸命時間をかけて作ったんです」
う、疑いって……なんだそりゃ。
ミミが目をキラキラさせながら俺に声をかける。ここで「夕ご飯を食べてきたからいらない」と断ると先ほどのダークなミミが現れるかもしれない。
「そうなんだ。それじゃあ頂くよ!」
「はい! そう思ってずっと温めていました! はい! 将大さんの好きなビーフシチューです!」
「……わ、わあ! うれしいなぁ!」
(さっき俺、ビーフシチュー食べたばかりなんですけれどぉ。おなか一杯なんですけれどぉ!)
「そ、そうでしょう! 将大さんに喜んでほしくて大量に作りました! ぜひ食べてください! お残ししたらゴス! ですからね」
(ひぃいいいいい)
お、俺はミミの作ったビーフシチューをおいしくいただいた。ついでに最後のパンもしっかり頂いた。
「おいしいよ、ミミ……うぷ……ありがとう」
「いえいえ、どういたしまして!」
ミミはにっこりとほほ笑んだ。
◇◇◇
快晴や3F
ダリア自宅にて
な、なななな! なんなのよ! あいつ!
齢17歳の赤ちゃん同然の男にどうして私はあんなにドキドキさせられちゃうの! 私は278歳なのよ!
どれだけ年の差があると思っているの。 ああ、もうあいつウザイ。私、あいつ嫌いだわ。
早く本当の異世界転生させないと……




