第二十話 異世界アルバイト「ポロリと水着、いざ、バカンスへ⑥」
前回のあらすじ
女人島では名前の通り男子禁制の島である。もし見つかってしまえば処刑されてしまう。男性諸君には恐ろしい島なのだ。
女人化薬を飲んだ将大はマサコとなり、ミミとお風呂を共にした。その後、ミミのいるバンガローで休息をとったのだ。
翌朝
「うぅーおはよう。ミミ……お姉ちゃん」
「あ、おはよう。まーちゃん、よく眠れたかな?」
ジュー
ミミが朝ごはんを作っていた。本来メイドさんに頼んで作ってくれるのだが、料理好きなミミの希望あって彼女自身が作っている。
「うん、昨日はありがとう」
異世界アルバイト2日目、残りはあと1日半だ。その間、俺が男であることを隠し通す必要があるのだ。もし、見つかり捕まってしまえば即刻処刑されてしまう可能性が高い。死んだら天界に戻るというルールだが、それはそれでミミとお風呂に入ったことが彼女にばれて、なんかめちゃくちゃ気まずい。ミミのゴスゴスが待っているであろう。だから、ミミにも、ダリアにも俺が男だということを隠さねばならない。
「んで、この子誰よ」
ダリアが「ふぁああ」と大きくあくびをした後に口を開く。髪もぼさぼさでよだれが服についている。
「このこ? ふふん、私の妹になったのだ! まーちゃんっていうの」
「ま、まさこです。よろしくお願いします、ダリアさん」
「え? どうして私の名前知ってるの?」
「あ、あの!(や、やばい。いつもの癖で)ミミさんが教えてくれたんです」
俺はとっさの嘘をミミに聞こえないように小さくつぶやいた。
「ふーん」ダリアの目がキッっとなった。明らかに怪しまれてる?
「わ、わたし。実はお母さんの部屋で泊まってたら、あの! お風呂に行きたくなっちゃって……でも鍵を部屋の中に置いてきちゃったから、オートロックで入れなくなってしまったの。だから、ミミお姉ちゃんに朝までここにいていいよって!」
ダリアさん、俺が男だって気づいているのか? わからない。
「えっと、まーちゃん。朝ご飯食べたら、まーちゃんが泊まっていた部屋に帰るのよ。お母さん心配しちゃうから」
「はい。わかりました。ダリアさ……ダリアおねえちゃん」
「!!!」
あれ、ダリアさんの顔の表情が変わった。もしかしてバレたか?
「もう一度言いなさい」
「え?」
「私のことお姉ちゃんって呼びなさい」
「あ、はい。ダリアおねえちゃん!」
「!!!」
ダリアの目がハートになっている。どうやらおねえちゃんと呼ばれるのがうれしいようだ。
「ミミ、この子仕事が終わったら持ち帰る事は可能かしら? かわいすぎるわ」
「だめですよ、この世界に生きている人を天界に連れて行くのは違反ですからね」
「うぅう」
(残念ながら俺は天界に帰れます)
シュー
「さあ、ご飯ができました! 今日はスペシャルハムエッグです! といっても普通のハムエッグですが」
「じゃあ普通のハムエッグじゃない」
「いえ! バカンス中に食べる食べ物は全て特別なんです。だからスペシャルです」
「はいはい、わかったわよ」
「それじゃあ、まーちゃん。食べよっか!」
「「「いただきますー」」」
3人でおいしい食事を食べた。
「そういえば、将大さん元気にやっているでしょうか? この女人島で変なことをしていたら、3回くらいゴス! ってしないと気がすみません。」
「まあ、あいつならどこで何をしているかわからないけど大丈夫じゃない?」
(二人とも、俺はここにいるぞ)
シュー
あれ? なんだろう、料理は作り終わっているのに「シュー」って音がするぞ。
「おねえちゃん、なにこの音? シューって音するけど」
俺は音の出所を探す。どうやらミミの方から聞こえてくる。
するとその出所は……ミミの胸だ!
「あ! 大変! 胸が! しぼんでる! 薬飲まないと!」
ミミの胸が風船が割れたように徐々に小さくしぼんでいったのだ。
「薬の効果が切れたのね」
「うう、せっかくの私のダイナマイトボディが……」
「24時間効果が持続するって書いてあったけど、16時間くらいで消えてしまいました」
「まあ、こういう薬って最大値を書いているから結局は個人差によるのよね」
「うう、仕方ありません。最後の1錠を飲みます」
そういって、ミミは謎の薬を飲むと。胸が元通り(いや、元が絶壁だからこの言い方は違うか)になった。
「ふぅ、これで安心。やっぱり胸がある生活は良いですね」
(なるほど、ミミは薬で胸を大きくしていたんだな。絶壁なまな板がいきなりこんな大きくなるなんて、おかしいと思ったんだ)
しかし俺は少し心配だった。薬は個人差があり、この女人化薬も24時間持続すると書いてあったが本当はどのくらい保つことが出来るかわからないということだ。もしかしたら、当初の計画と異なり俺は残りの数時間を男として逃げ回る必要があるのかもしれない。
俺はできるだけ薬の効果が長持ちするように祈りながら、ミミの作ったハムエッグ朝食を頂いた。
◆ ◆ ◆
「じゃあね、おねえちゃん! 後で海で遊ぼうね!」
俺はミミお姉ちゃんとダリアお姉ちゃんとバンガローで別れた。
体裁としてはお母さんのいるホテルに向かうわけだが、とっさに付いた嘘だからばれないように
俺はホテルの部屋帰ったふりをするのだ。そして、うまいことホテルの受付をしよう。
そのあとぶらぶらした後に、二人にあって海で遊ぼう。
見た目は女の子だけど3人で遊べるのは楽しいことだと思う。なにより、俺もバカンスを楽しめるのは最高だ。
あ、そうだ。朝の温泉に入ろう。これぞ贅沢、これぞバカンス!
「あれ? 温泉が閉鎖されている?」
温泉の入り口には張り紙がされていた。
『男物の服が脱衣所内の洗濯機内で見つかった! 男子がこの温泉に隠れている可能性がある。現在調査中の為、温泉は一時的に閉店している。悪いが別の場所でバカンスを楽しんでくれ』
俺の服を洗濯機で回していて回収するのを忘れていた……。
完全に俺の事だ。どうしよう、見つかったら処刑されるかな。
でも、今の体は女の子! 薬の効果が切れない限り大丈夫だ!
でも、効果は人によるから実際いつまで効くかわからない。
俺は緊急用の女人化薬を肌身離さないようにすることを誓った。
この後、ホテルで俺は本当のチェックインを終える。これで今日と明日の寝床を確保する事に成功した。
そして俺は予定通り、ミミとダリアと3人で海で水遊びをした。
一言、「楽しかった」に限る。
途中、特に男子に戻る感覚はなかったが、念のためお昼ご飯の時に女体化薬を飲んだ。
だから明日の昼頃までバカンスを満喫して、残りの半日はホテルの部屋で引きこもっていればいいのだ。それで依頼完了だ。やったね!




