出会い
なりだした着信音で、無意識にスマホをつかむ。
「ちょっと、大丈夫??」
リサの声だ。
「ん?」
「ん?じゃないわよ。倒れたって聞いたけど大丈夫なの?」
「リサ?」
「まだ寝ぼけているのね。家にいるの?ごはん食べた?何か持っていく?」
「病院で診てもらったって聞いたけど」
「病院?」私は周りを見渡した。
ここは…どこ?
「大丈夫?今どこにいるの?」
スマホが私の手から突然離れ、手を伸ばせば、優しくその手を布団に戻される。
男の人は人差し指を口に当て私を黙らせる。
文字通り声が出ない。ついでとばかりに身体までも動かない。
彼は私から距離をとり、何やらリサと話した後、私の元まで戻ってきた。
「リサさんという方は同僚ですか?」
私は頷き、「あの…」声が出た。
「僕のこと覚えていますか。歩道橋でぶつかったのが僕です。
とっさに手をつかんだのですが、もし落ちていたらと思うと今でも恐怖を感じますよ。
せっかく出会えたのに。体調は大丈夫ですか。擦りむいていた手は治しましたが、ほかにどこか痛いところは――」
きれいな男の人、いや、とてつもなくきれいな男の人から、切れ目なく言葉が発せられる。
「あの、てん…」はっとした。
危うく“天使ですか”なんて口に出すところだった。
私の死の間際に迎えに来た天使なのかと見紛うほど、彼は神秘的なほどきれいだった。
目線がつい、背中(羽)にいってしまうのは仕方がない。
でも、この人の一喜一憂するその表情と声に人間らしさを感じ、私は言い留まった。
とめどなく流れていた話もいつの間にか終わり、彼はじっと私を見つめている。
私も彼をじっと見つめていた。
いや、この光景を見ていたと言った方が正しい。
あまりにも彼がキラキラと輝くから、その不思議な現象に目をそらすことができないのだ。
どのくらい経ったのだろうか、鳥の鳴き声でそれらは消え去った。
そこでようやく言えた。
「あの、ここはどこですか?」
彼は、ロイという名前らしい。ファミリーネームも教えてもらったけど、長すぎて覚えられなかった。
ロイさんによると、私が階段から落ちそうなところを助けたのだが、恐怖からか意識を失ってしまったため、わざわざ専門医に連れて行ってくれたらしい。
問題ないと診断されたが、その間も意識が戻らず、心配性なロイさんの家に連れてきたと説明された。
僕のせいだとひたすらに謝られ、起こった出来事をロイさんの感情も交え、丁寧にお話ししてくれるものだから、説明が終わるまでに長い時間を費やした。本当に聞いているだけで疲れてしまった。
ついでとばかりに、倒れたときに会社から電話がかかってきてため、説明してくれ、遅刻という不名誉を免れたそうだ。
助けてもらったわけだし、とりあえずはお礼を言おうと口を開く。
「運命だと思うのです。」
処々でおかしい人かもしれないと思ったけれど、疲れ切っていた私には「はぁ。」とあいまいな言葉しか出ない。
「とりあえずご飯たべましょう。お昼食べていないからお腹すきましたよね。」
私のお腹が、素直に頷いた。
~リサとの他愛ない話の中のヒトコマ~
「昨日のドラマみた?」
「あぁ、うん。見たよ。」
「偶然居合せたイケメンに助けられるシーン。運命感じちゃうよね。ま、ありえないけど」
「確かに。現実にはありえないけど、運命感じるかも。」
遠くの声が僕の頭の中でこだまする。この人だと全身が訴えてくる。早く僕のところまで来てよ。
それにね、僕らはずっと一緒にいるって約束したから。一人になんかしないよ。




