お約束展開
ハーティアの大森林の管理者っていうのに会ってから、村に帰る途中。
なぜ、あそこに管理者というのが存在しているのか。
そして魂と冥王との関係があるのか、気になっている。
また成人してからとのことだが、どうやら何か1つの鍵なんだろうと思う。
そう思いながら僕は帰路につく。
子供の足でほぼ10分もかからずに着く村に、いつもなら見ない光景があった。
空に一筋の黒い煙。
焚き火ではない。
さらに何か騒がしい。
「何かあった?」
僕はそう直感し、走り出す。
人も見てないし、少し本気出して。
一方、村では。
「はっーはっは! まさかこんな所に村があるなんてな。大分ちっさいがまぁいいだろう!」
「ここは俺らが縄張りにしてやるからよ、その見返りとして食料と……まぁ若めの女もいるし相手してもらおうかいな」
「なっ、それは困ります! 急に来られてもこの通り何もない村です、守って貰う必要もないので」
村長が前に出て、荒くれ者に抗議する。
荒くれ者、傭兵崩れか山賊か。
人数は10人ほど居る。
「そんなこたぁ関係ねぇな、言うことじゃないとそこの畑見たいに全て燃やすぞ? 頭領はその辺おっかねぇからよ」
「はっは、違いねぇ! 癇に障ったらすぐ殺してしまいそうだし」
「おいおい、お前ら。何を俺を怪物みたいに言ってくれてたんだ。これでも優しい方だぞ。がっはっは!」
「そりゃ失礼しやした、頭領!」
大声で叫ぶ大柄の男性。
これがここのリーダーだ。
少なくともこの村で勝てる人は居ないだろう。
「し、しかし……」
「うるせぇな、殺すか? 改めて要求、いやもう命令だな。食事と女を早く準備しろ。10秒以内だ」
「そんな……。せ、せめて食事だけにはっ!」
「はぁ? 無理に決まってるじゃねぇか。決められねぇならウチの若いやつに適当に選ばせるぞ」
どの時代にもこういう輩は居るもんだ。
村の男衆が前に出て、女性を匿うようにさ。
「はっ、いい心掛けじゃねえか。なら、とりあえず殺せ」
「へい!」
荒くれ者の男達は剣や槍などを抜く。
そして、一気に男に向かって斬りかかる!
「ぐぅ!」
誰一人戦うスキルもなければ経験もない。
手が出ることもなく、あっという間に切りつけられる。
「弱いなら弱いなりに逃げてりゃいいものを」
村人達は覚悟するしかない。
確実に全員死ぬ。
なら、どうやって他の女性陣の逃げる時間を作るか。
それに考えないと行けないが、圧倒的にすべてが不足している。
蹂躙されるのはほぼ決まる。
流石にそれは許さない。
僕はその間に割って入る。
「あん? ガキがわざわざ殺されにきたのか?」
「と、トーリ! 逃げなさい!」
「逃げるわけにはいかなくてね」
正直、今からすることはみんなが驚くだろう。
最悪怖がられてしまうだろうか。
まぁでもみんなを助けられるなら問題はない。
「じゃ死にな」
荒くれ者の剣が僕に向かって振り下ろされる。
普通ならこれで僕は死ぬ。
だけど。
普通じゃない。
なんてったって僕はあんたらの能力から全て上回ってる。
伊達に何百年も冥界で鍛えていたわけじゃない。
僕は相手の剣筋を見切り、軽く避けた。
「あっ!?? ごはっ!!」
避けると同時に相手のガラ空きの腹部に膝蹴りを食らわせる。
メシって音がした。
その衝撃で剣を落としたので拾う。
「何油断してやがんだ! 全員そのガキを狙え!」
「へ、へい!」
リーダーらしき人とこの人を省いてあと8人。
村の皆にはこれ以上怪我をさせない。
敵の位置をまずは認識。
近い方から片付ける。
一番最初に近づいて来た男を躊躇なく斬る。
相手の動きが遅すぎて攻撃すらさせない。
すぐさま剣を振り抜き、しゃがんで相手の横薙ぎを回避。
間髪入れずに斬る。
3人目!
4人、5人、6人、7人。
移動しながら斬りつけておく。
そして後1人。
「な、なんなんだ! このガキはっ!?」
「なんなんだろうね。けどこのまま見逃すことはないよ」
「舐めやがっ………えっ?」
力なく倒れていく。
話してる間に斬っておいた。
にしても本当に動きが遅く感じる。
まぁそれはそうとして、このまま置いておくのもダメだし冥王としても一応弔うか。
それに村の人からの目線痛いし。
「トーリくん、凄いー! あんなおっきな人たちあっという間に倒しちゃった!」
そう思ってたらユリィに飛びかかられた。
それと同時に周りから讃辞の声が広がった。