ハーティアの大森林
スキルの勉強を初めて、2年がたった。
ユリィとも遊びつつ、子供なので時間が沢山あったので色んなことを試していった。
「トーリくんはやっぱり強いね!」
今日はユリィと体術練習だ。
スキルがあるとは言え、身体能力に影響するなら練習しといて損はない。
あれからずっとやり続けてるうちにユリィもしたいとなり、ついでに教えながらやることになった。
気づけばユリィも結構動けるようになっていた。
お陰で遊びながらできるから良い。
「ユリィもどんどん動きよくなってるよ! 凄い!」
子供なので力はないが足捌きや反射など、かなり動けてきている。
「………ねぇ、あなた」
「なんだ、母さんよ」
「あの子たちってやっぱり天才かしら!??」
「多分そうだな! 天才だと思うぞ!」
その様子を見ていた両親はいつも騒いでいた。
いかんせん、ほかに出来る人がいないから基準がわからない。
まぁでも客観的には動けてる方ではないだろうか。
「初めの頃はごっこ遊びかと思っていたがなかなかどうして。あれくらいなら町の外も大丈夫だろう」
「……大丈夫かしら?」
「大丈夫だろう。魔物もこの辺ではいまのところ居ないし、森の方は行けても入り口までだ。それにあの子も賢いからね。その辺はしっかりしてるだろうよ」
どうやら、オッケーみたいだ。
まぁ魔物とか居たら許可なんてないだろうから、余程安全なんだろうな。
ちょうど気になってたし、これ終わったら見に行ってみよう。
「隙、ありっ!」
「おおっと!? あぶない、あぶない」
意識が会話の方に行ってたのでユリィの攻撃当たりそうだった。
声あげなかったら当たらなかったけど。
「もう、避けないでよ。トーリくん」
「じゃあ声あげなかったらいいのに」
「あ、つい……」
「ユリィらしいね。じゃあ今日はこれだけにしておこう。いつもありがとうね」
「ううん、私も好きでしてるだけだから♪ じゃあ、今からお母さんのお手伝い行ってくるねー!」
元気よく、ユリィは自宅に帰っていった。
そういえば畑仕事あるって言ってたしね。
ウチはこの前したから、とりあえず森の入り口行ってみるか。
「今から森の方見てきていいー??」
「おお、気をつけていってこいよー! ただ奥に入ったらダメだぞ」
「わかった!」
さて、じゃあ向かいますか。
村から少し出たところ。
本当にすぐ近くなのだが、未開の地であり大人でもあまり入らないとのこと。
森の中には危険な魔物や生物が存在し、奥地に行けば行くほど資源はあるが危険がある。
そこの開拓が出来ず、未だに国に属することが出来ないみたい。
僕は村を少し出て、眼前に広がる広大な木々を目指す。
子供の足でも10分くらいでついた。
――未開の地 森林入り口――
「いかにも鬱蒼とした森だ。たしかに奥から色んな気配を感じる」
森の入り口ですら、かなりの存在感を感じる。
まだ人類が到達出来ていない未開の地。
そして、何より開拓が進まない理由は…。
「方向感覚を狂わせる迷いの森か。この先に何があるんだろう」
そこ好奇心が現れた。
少し入ってみたい。
僕には察知のスキルがある。
奥まで行かなければ大丈夫。
そう思って、森の中へ足を踏み入れた。
その瞬間だった。
(お待ちなさい。ここは人族は立ち入り禁止です)
「!!!?」
な、なに!?
急に声が?
(小さき少年よ。ここはハーティアの大森林です。人族が入れるような場所ではありません。私の声が聞こえるならすぐさま立ち去りなさい)
「声が聞こえる? どこから? 立ち去る?」
頭に響く。
とても綺麗な声だ。
悪意を感じない。
(私の声が聞こえるのですね。少年よ、ここはあなた方が来ていい場所ではない。すぐに戻りなさい)
「この声の人は誰、なの?」
(私はハーティアの大森林の管理者であり、この先の危険に資格なき者を入れるわけには行かないのです)
「ハーティアの大森林……資格?」
(あなたは近くの村の子供ですね。あなた方ではこの大森林を通ることは不可能です。今すぐ帰りなさい。ここは魂の拠り所でもあるのです)
魂の拠り所。
まだまだわからないことたくさんあるが。
なんとか話にはなりそうか。
「魂の拠り所? もしかして冥王と関係が?」
(……冥王を知ってるんですね。……いや、その気配は貴方は冥王ですね。そうですか、この世界に新たな後継者をお連れなさったのですね)
バレてる?
流石は管理者か。
「まだまだ見習いの冥王ですよ」
(ふふふ、そうですね。ですがようやく冥王と会えたのは嬉しく思います。けど、もう少し大人になってからの方が改めていいでしょう。また成人になったら来てもらえますか?)
「わかりました。またその時来ますね」
僕はここで踵を返し、村に戻ることにする。
どうやら、大人になるまではしばらく訓練するか。
色々知ることがあるようだ。