5歳になったら記憶戻った
「ごめんね、ごめんね……。私の赤ちゃん…、私ではあなたを幸せに、出来ないの……。だからあなただけでも、幸せに」
まだ夜が明ける陽が差さないこの空。
あたり一面に広がるのは田畑。
その一部にひっそりと建つ一軒家。
辺りを見てもまだこの家が一番大きかった。
そして何より、私の直感がここと呼んでる。
私は、玄関の前に揺かごに入れ、毛布を包み。
少しでも寒くない様にしておく。
そしてそっと置く。
最低な行為だとしても、この子の為。
私よりもこの家なら。
「ごめんね。幸せに生きて……」
キュっ、と口を結び、家に向かってお辞儀をする。
名残惜しくないように。
決意が揺るがないように。
すぐに赤ちゃんに背を向けて、走り出した。
一切も振り返らず。
それから少し経った時。
―――――――――
外で赤ちゃんのような泣き声を聞いて、この家に住む夫婦が目を覚ました。
「え? なんの声、だ?」
「あなた……泣き声よ。この声は……!!」
女性がすぐに寝室から飛び出し、玄関へと向かう。
声はどんどん近くになってきた。
玄関の戸を開けると、そこには……。
「あなた! 赤ちゃんが……! すぐに暖炉をつけて!」
すぐに揺かごを持ち上げ、触ると冷たい。
まだ冬ではないが、この時期のこの時間。
生まれたてならば危ない。
「お、おう! あ、お湯もいるな!」
バタバタと動き出していく男性。
急いで部屋を暖め、湯を沸かす。
泣いているからまだ大丈夫。
ようやく落ち着いたころ。
スヤスヤと眠る赤ちゃんを見て2人も胸を撫で下ろす。
「どうして、あんなところにこんな赤子が…? 最近めっきり赤子なんて産まれなくなってきてるのに」
「ええ、そうよね。そんな赤ちゃんをどうして…」
「ん?」
女性が赤ちゃんを抱っこしている中、空いた揺かごを男性が徐ろに見た。
すると毛布の他に1枚の紙が入っていた。
「なんだこれ? 手紙か?」
男性は徐ろに紙を持ち、内容を見る。
そのことに気づいた妻も赤ちゃんを抱っこしながら夫の横に行き、隣から手紙を覗き見た。
拝啓。
突然のご無礼を失礼致します。
驚かれたと思いますが、理由は言えませんが私はこの子を幸せにできない、育てられない。
けど、この子に罪はない。
もし願うのであればお2人がこの子の親になってくれればと切に思っています。
男の子で名前はつけていません。
どうか、どうかお願い致します。
内容はこのようだった。
感じるのは悪意あってではないこと。
けど、それでも赤ちゃんを置いておくことは許されない。
「あなた、私この子を育てるわ。誰の子って分からないけど、この子供が生まれにくくなったこの世界、私たちも諦めていたけど、これも運命なのかなって」
「……わかった、お前が言うなら俺も腹を括ろう。今日村の皆んなに伝えよう」
こうして2人は1人の子供を育てる決心をした。
すぐにそのことを村民に告げた。
数十年子供がいなかったこの村は沸いた。
それから翌年、奇跡は更に起きる。
また1人赤子が産まれた。
別夫婦のところで。
2人の赤子は村からとても可愛がられ、すくすくと成長を重ねていった。
そして……。
―――4年後の5歳の誕生日――――
「トーリ、5歳の誕生日おめでとう!」
「わーい! ありがとー!!…………?」
家族に祝われている時、ふと記憶が戻った。
それはもう違和感なく。
「どうしたの、トーリ」
「………ううん、なんでもないよ!」
どうやら冥王様が言ってたことが現実になったんだな。
冥界で5歳くらいから体を使ってたので割に違和感ない。
そして、どうやらこの美人な人が母親で隣の男性が父親。
前の記憶も今の記憶も違和感なく定着してる。
いやぁ、凄い。
「このご飯、美味しいね!」
「そうだろう! パパが狩ってきたんだぞ!」
「スゴイー!!」
「はっはっはっ!!」
「もう、あなたったら」
とても仲の良い夫婦だ。
さて、しばらくして食事も終えた。
「ごちそうさまでした」
お皿を片付けるとめちゃくちゃ褒められた。
褒められると嬉しいな、やっぱり。
そのあと改めて状況の整理等に入る。
とりあえず怪しまれないように両親からは離れる。
「えっとー、自分の状態を見るには…あ、これか」
脳にそう命じるだけで現在の情報が知れる。
これは僕だけだと冥王様が言ってたな。
NAME トーリ・エンハティア
AGE 5歳
SKILL Nothing
EXP POINT 9999+
PHYSICAL CLASS SSSクラス
MAGICAL CLASS SSSクラス
WEPON 冥王の大鎌
「なんとまぁチート能力。まぁ冥界での長い訓練のおかげだから引け目ないね」
さらにある程度知識もあるからやりやすい。
5歳に合わせてやらないとダメだし、ある程度は調整いるかな。
まぁ、せっかくの転生生活、楽しんでいきますかぁ!
少し幼少期書いたら、青年期いこうかなと思います