ついに旅立ち
本当に地獄だった。
いや、ここは冥界だけど。
いま思い返せばある意味いい思い出。
「橙里。だいぶ逞しくなったね。あの頃が嘘のようだよ」
「エンネさんに冥王様にだいぶ鍛えられましたから」
あの毒沼などの精神トレーニングから早数百年。
ここでの年月は実世界との時間の概念が違う。
そのおかげなのか普通に訓練していては人生何回分かの訓練がここでは出来る。
体の成長も10代後半で止まっている。
「私は最後の戦闘技術だけだったからほとんどエンネに任せていたけど、よくやり切ったね」
「ははっ、自分でもそう思います」
エンネさんのおかげで普通に過ごしていたら到達しなかったであろう域には入ったと思う。多分。
エンネさんも冥王様も規格外すぎて実はどうなのかはわからない。
訓練はだいぶ出来たのはわかるけど。
「今日は転生するにあたっていくつか伝えておこうと思ってね。なぜここまで訓練したのか、そして今後どうするのか」
「ようやく意味がわかるんですね。今までの訓練とかの」
「あぁ、よくそれでもついてきたね。橙里、君はこの後、転生をさせる。転生先はいわゆる異世界だ、細かいところはそこで過ごし、知るといい」
「はいっ!」
おお、ようやく異世界へ!
ま、ここも充分異世界な気もするけど。
こんな苦労していくのって僕くらいではなかろうか。
「橙里が向かう異世界は魔法やスキルなどと言った特殊なものがあって、これは向こうでは神の贈り物、ギフトとされている」
「ギフト、ですか」
「もちろん誰でも条件を満たせば、スキルに必要な経験値を得られ、取得できる。簡単なモノもあれば難しいのもある」
聞いてる限りでは、特にこの訓練をした意味はわからない。
ただ、ミソとすれば経験値、だろうか。
「ただ、スキルというのは中々手に入るものではない。ましてや魔法もね。普通にしていたら取れても2から3個でね。戦闘系スキルに関しては努力で行けるところと運でいけるところがある」
ここまで聞いて、僕はある回答にいきついた。
おそらく間違いないだろう。
この訓練の意味。
「今までの訓練はそのスキルや魔法を覚えるための経験値ってことですね。あの毒沼だったら状態異常耐性ってところでしょうか。身体能力については、努力で伸ばす面、才能の面、そしてスキル」
「そういうことなんだ。スキル会得のための条件はまだ向こうの世界では解明されていないからね。橙里がここで満たしておけば向こうで会得出来れば念願のチート転生というわけなんだ」
「そうだったんですね。僕はこのまま転生して向こうの世界に?」
僕の問いに、冥王様は頷く。
そして思う。
頑張ってきてよかった!!
「けど、向こうの世界では赤子からの転生になる。理由は冥界からの転生だからね。肉体のまま転生するのはここで出来ないんだ」
冥界は魂の集まるところ。
その魂が次に生を受けて生まれ変わるところ。
理由に納得だ。
「でしたらここでの記憶とかは…?」
「大丈夫。向こうで5歳になるくらいに思い出せるようにしておくから。ただ、どこに生まられるかは指定は出来ない。橙里がいく世界は新たな命が芽生えにくくなっていてね」
「わかりました。となると僕の使命はその原因を解決ですか?」
話が早くて助かる、といった様な笑みを浮かべる冥王様。
「そうだね、冥王候補として頼みたい。そしてその世界を知って新たな人生も楽しんでほしい。それがいつかの糧になる」
「はい!」
心が熱くなる。
こんなにワクワクするなんて思わなかった。
どんな世界なんだろう。
それだけで昂る。
「さて、橙里。まずはこれを受け取ってほしい」
冥王様が手をポン、叩くと。
僕の前に冥王様がいつも持っていた大鎌と同じものが現れた。
「これは冥界の大鎌。これで切ったものは魂となり、その魂の行き先を決めれる。使い方は任せる、橙里なら上手く使ってくれると思う」
僕はその大鎌を受け取る。
重い。
単純な物量ではない、その大鎌にある何かの重さ。
「ありがとうございます」
受け取った後は、粒子となり消える。
冥王様曰く、念じればいつでも現れるとのことだ。
「それでは、これで全てが終わりだね。向こうでの活躍、楽しみにしているよ」
「はい、冥王候補として恥じない生き方をします。エンネさんも今までありがとうございました!」
「いえ、あそこまでついてこれたのです。私も楽しかったですよ。壮健で、橙里さん」
相変わらず鬼だね、楽しかったって。
でも僕も楽しかったな。
「では、良い経験を。立派な冥王となるためにね」
冥王様が僕の額に手を当てる。
心の中で改めてお礼を言う。
【ありがとう】
そう呟いたあと、僕の意識は消えた。
これから始まる異世界へのいくために。
ようやく、異世界編です!
楽しく、なろう系としてのチート系やっていきますー!