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冥王伝説

―村長宅―


「トーリよ、改めて村を守ってくれてありがとう。お主がいなければこの村は潰れていたと思う」


「たまたまですよ」


「いや、考えればあの日から全ては始まっておったんじゃな」


 村長は少し遠くを見るように窓の外を見ていた。

 この村に伝説なんてあったんだ。


「村長さん、その冥王っていうのはなんなんでしょうか? 私も夫もこの村に住んでいても聞いたことがないんですが」


「それもそうじゃろう。冥王伝説というのはごく一部の年寄りしか知らんのじゃ。村の外、未開の地のハーティアを祀る者として、これは村長とその一部にしか言わない決まりなんじゃ」


「そうだったんですか、その冥王っていうのが今回トーリが持っているというスキルの話なんですね」


 なぜ冥王としてこの世界に転生したのか。

 なぜこの村だったのか。

 

 ようやくわかるんだ。

 冥王様なんも教えてくれなかったし、そのあたり。


「そもそも冥王様とは、この世界を想像した神の1人とされていて魂の転生の管理者としてこの世界の下、冥界に住われていた」


「冥王様はこの世界に新たな命を循環させてくだっている」


「魂はハーティアの森の深淵にある冥界へと行き、その浄化の泉で魂は洗われ、冥王様の下で転生する。これが冥王伝説であり、生命の循環の秘密であり」


「この未開の地の開拓を止めている理由でもある。我らは先祖代々この地を守ってきたのだ。そのために国に属することもなくな」


 冥王様のやってることはこちらも同じなんだ。

 だったら僕がすることは?


「でも、今は新しい命は生まれにくいですよね?」


「そうじゃな。管理者様が言うには転生の輪というものが何者かに機能不全されたようでの。以来、動かなくなっておる。冥王様が消えたというのもあるがの」


「それから世界での出生率も低くなっておるが、冥王伝説には一つ、碑文があるんじゃ」


 碑文?

 なんだろうか。。


「のちにこの世界変革しうるとき、現る。かの者、世界のギフト【冥王】を持つ者。顕現し、変革の夜明け。とな」


「そのスキル、冥王がトーリにあると言うんですか?」


「そうじゃ。冥王様としての証明は冥王の大鎌と管理者の確認を以って証拠となる」


「当初はユリィかと思っておったが、まさかトーリとはの。トーリ、もしかしてわかっておったのか? 冥王を持つこと」


「わかってました。どのような力かはわからないんですけど」


 転生したことは黙っておこう。

 やはり、冥王となって、この世界の転生システムを治すことが僕のやる事か?


「そうか。お前たち、トーリは冥王を得ている。となると必然的にハーティアに行くことになるだろう。これは冥王を持ってしまった者の宿命じゃ。転生の輪を治すために」


「そ、そんな! トーリはまだ小さいんですよ! それに……」


「わかっておる。トーリが15歳になるときまでは行かせんよ。それにわかってくれ、どう止めようともこの運命はもう変えられん」


「と、トーリ、あなたは…」


「お母さん、大丈夫だよ。僕がこのスキルを持つってことはそういうことなんだと思う。だから、もっと修行してお母さん達に安心してもらえるように頑張るよ、だから見てて」


「トーリ……」


「母さん、トーリがこう言ってるんだ。小さくたって立派な男の子なんだ。見守ろうじゃないか」


「あなた…」


 父さんの目は優しかった。

 僕はそれを目に焼き付けて、心配させないようにと誓った。

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