消滅的な世界
...ハァッ...ハァ......
必死にもがく...
あぁそうか...
薄れゆく意識のなかで悟った。
俺は死ぬのだと
◆
...........身体が動かなかった
...ぅぅ痛ぇ...
一面に土の匂いがした
...ハハ、ラッキー、生きてやんの...
こわごわと目を開ける
...ここは森の中...か?...
木々が空に向かってそびえ立っている
今いる状況を確かめようと思ったが、疲労や、飲まず食わずが祟り、身体が思うように動かない
...とにかく上半身だけでも...
力の入らない腕でなんとか支え、やっと胴を立てることができた
一面木、木、木だった
...あのあと流されて...なんでこんなところに...
その時だった
蒸気のシューッッッ!っという音と警戒音のような甲高いピーッ!っという音がどこからか自分を威圧した
...な、何だっ....な、何の音なん...
極限の疲れに驚きが重なったからだろうか
意識が徐々に薄れていった...
◆
...でも...信...の可能性......
...まぁ...まえば...
何か話しているのが聞こえる...
次に目を覚ましたのは、扉ひとつに周り一面カビの生えたコンクリートの部屋の中だった
...今度は何て場所だ...
立とうとしたときだった
扉がガラガラと重く開いた
「ふぅ、やっとお目覚めのようね」
現れたのは真っ黒のタイツに白シャツ、おまけにヒールを穿いた女性だった
手には馬に使うための調教具を握っている
舌なめずりをしながらゆっくりと近づいてくる
...ヤバい、これはヤバい 本能的にこの女がヤバいと脳が警告してる
「あの、あなたは...」
名前を尋ねる暇もなく紐が頬にピシャリッと弾けた
「いっ...」頬が腫れるのが熱さと共に感じられる
暇もなく次から次へと調教具が身体に刻まれる
ヒリヒリと皮膚が悲鳴をあげる
「クッ...っててめぇ」
恐る恐る目を開き、そして唾を飲んだ
驚いたのは彼女の冷淡さではない、彼女が頬を赤らめ、興奮していることにたいしてだった
「ごめんなさいね。できたらもっとそう、苦しい声をあげてほしいかも」
どうやらとんでもない変態と出会ってしまったようだ
怪我人に体罰とか鬼畜かこいつは...
それにしてもこれは痛い...
「もう、なにやってるのさっきから?」
そう答えたのは彼女の背後に現れた女の子だった。
「ごめんなさいね、この人変わった性癖持っているの」
どんな性癖だこのババァ
うっかり口から滑り出そうとした悪態を喉で押さえ込み、女の子に助けられ起き上がる
「あ、ありがとう」
女の子に変態から助けられる少年がいるだろうか
ただただ情けなかった自分がいた
「もう、すぐコントロールが聞かなくなるんだから」
これは彼女にとって日常なのだろうか、女の子は呆れ顔でその変態を注意する
「悪い人じゃあないんだけどね、ところで君の名前は?」
ちょっと間を挟み「...上野歩」とだけ答えた
「あゆみ、あゆみくんねぇ...女の子みたいな名前だね」
クシャっと女の子は笑う
今まで何度自分の変な名前を呪っただろうか
思い返せば中学三年の時担任に...
あぁもう思い出すのはやめよう
でも...今の彼女の笑顔は...
「私はソフィーっていうんだ。」
女の子を見るのが苦手だったために、躊躇っていたが
今初めて少女の姿をじっくりと目の当たりにした
それは一目惚れというものなのだろうか
...か、可愛いい...そ、ソフィーっていう名前なのか?...
薄い紫色の髪に真っ白のカチューシャ、そしてイチゴのアクセサリーのついたパイルリングというのだろうか、それがサイドについていた
青く縦じまの入ったシャツの上に白いスーツ、スカートは赤みがかった黒
真っ赤な唇に、少しキツイ目付き
そして、極めつけは真っ黒のタイツ
まるでマンガの美少女が目の前に現れたのかと思うが如く可憐だった。
「あ、そしてこの人がニーヴさん」
彼女はさっきのドS美魔女を指してそういった
罰が悪そうに彼女は
「さ、さっきはご無礼を... 貴殿がボロボロでみっともない姿をしていたために、本能的にでしょうか...手が出てしまいまて...」と言葉にする
恥ずかしげに頬をまた赤らめる
...照れてんじゃねぇよ
しかも弁解になってねぇーよ..,
「あ、あのここはどこなんだ?」
少し時間をおいて彼女は「いうなれば5次元空間」
え?5次...?な、なんだそれ
「まだ5次元を理解できてないようだね?ということは、来たばっかりか...
えーっと、縦と横の2次元に高さという垂直性を加えたものが3次元、そこに時間という垂直性を加えたのが4次元、それに対して時間に含まれる第2元性をさらに加えたのが5次元なんだ。」
当たり前かのように彼女は喋るが全くもって意味がわからない
3次元世界から2次元へと退化していた自分には一層理解不能に見えた
「...ここの空間では過去や未来の物質が集合する、
そう例えば任意の位置に過去、もしくは未来にあったものが現在の位置で交錯する。今君がみているものは過去のものかもしれないし、未来のものかもしれない。」
な、...俺は言葉が出なかった。
俺はなんて異世界、いや異次元にきてしまったのだ...