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生が続く理由

作者: amakawa saiji

興味のないことにはとことん興味を持たないまま他のことに時間を費やします。

それでもいいと思う。時間は有限だから。

でも、実際は無意味に過ごしている時間って結構あるんですよね。

その時間を少しだけ、興味のないことに費やしてみました。

 夏、僕らは長い眠りから目を覚ます。暗く湿った木の根本のもっと深いところで7年間の眠りから起きる。


 梅雨が明けて夏の到来を僕らは運ぶ。その声で叫び続けるのだ。


 子供たちが虫取かごをぶら下げて虫取り網片手に捕まえる。


 うまく飛べない僕らは電信柱や人間にぶつかり地面で仰向けになる。

体の構造なのか、うまく起き上がれない僕らは足をジタバタさせてやがて動きを止める。

道ゆく人が何かの拍子でぼくらの体を引っくり返してくれるまで静かに待ち続ける。

その過程で人々を驚かせてしまうこともしばしば起こり得るが僕らとしては来たるべき時のために体力を温存しておかなければならない。

そのまま死んでしまうこともあるし、踏み潰される事もある。アリに運ばれて巣に連れていかれる事もたまにある。


 世間の認識として、僕らの一生は短いと言われていた。人間の体感する感覚で言うのならば、七日間くらいだ……とよく誤解されているが実際にはもう少しだけ長く生きている。

一ヶ月くらいは生きて人間たちに夏の到来を運ぶことができる。


 僕らはなんで生まれてきてどうやって死んでいくかを選ぶことはできないしそんなことを考える時間的余裕もない。だからこそ、人間を羨ましく思うことがある。僕らよりも長い時間を生きている。悩み、笑い、苦しみ、楽しみ、欲求の赴くままではなく、理性でその感情を支配して高度な暮らしをしている。そんな姿にはやはり嫉妬も覚えるしその中の一瞬だけでも僕らの求愛の声で煩わせてやる。

なんて気持ちにもなる。

そうやって少しでも貴方の中に存在できたなら僕らの生命は一ヶ月よりも長く存在できる。

 

 今年ももうすぐ夏がやって来る。

7年前に産み落とされた命で今年の夏の到来を生いっぱい告げようと思う。

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