朝起きたら幼馴染が俺のためにめちゃくちゃ料理を用意してくれていた。
10分で仕上げました。
目が覚めた。
起床音楽が鳴る前に目覚められたのは久しぶりかもしれない。
身体を起こして、腕をぐーんと伸ばす。
「……」
何となく、隣のベッドに目を向ける。
何時もなら幼馴染であるジュリアが寝ているはずなんだが、彼女の姿はそこに無かった。
トイレかとも思ったが、電気が着いていない……。
「訓練にでも行ったのか?」
いや、それは無いな。
二度寝も出来そうにないし、起きる事にした。
目を擦りながら部屋に繋がる扉を開ける。
「ストール。もう目覚めたの?」
「何やってんだお前」
そこにはジュリアがいた。
大量の食事が机に置かれている。なんだこいつ。どうした?
朝っぱらから仲間達でも呼んでパーティとかするのか?
「ああ残念。音楽鳴るくらいに合わせて作ってたんだけど……まあいいや。ストール、僕の愛情を受け取ってよ」
「は?」
「君のために一生懸命料理したんだ。頑張ったよ♡ 君はお肉が好きだから、ステーキもハンバーグもチキンも用意したんだ。君だけに食べて欲しい……さあ、座って!」
「え????」
え? どしたのコイツ。
「ジュリア、流石にそれを一人前に数えるのはきついんじゃないかな……」
「大丈夫。完食なんてしなくても……僕は、君が僕の作った食べ物を食べてくれるだけで 嬉 し い ん だ !」
ジュリアが飢えた猛獣が如く抱き締めてきた。
「席に着いて。まだ出来てない料理があるから、席に着いて、食べててね♡」
「めちゃくちゃありがとう。めちゃくちゃ嬉しい。嬉しいけど朝っぱらから単独で肉のオンステージはきついというか……」
「いらない? 食べないんならそれでいいよ……君のために、また作り直す」
「皆を呼んで食べようぜ? 姉妹とか呼ん」
頬が急激に熱くなった。同時に、全身から血の気が引いていく。
火属性の魔法を放ちやがった。俺の横を一瞬で火の刃が過ぎたんだ。
「僕以外の女をここに呼ぶの……? そんなの、僕が許せるわけ無いだろう?」
「ジュリアさん、貴女、そんなキャラでしたっけ」
「あんな姉妹に君を渡せないよ。僕だけを見てほしいんだ!!」
……。
「分かった。分かったよジュリア」
ジュリアの腕を一気に振りほどいて廊下に目掛けて扉ごと突き破る勢いで逃げる!!!!!
後ろからめちゃくちゃ足音が聞こえてくる。めちゃくちゃ追われてる!! めちゃくちゃ追われてる!!
「待てストール!! 僕じゃ駄目なの!? 僕はこんなに君が好きなのに!!」
「いいやジュリアお前が好きだ!!! でも今のお前は気が狂ってる!!! 一旦落ち着こうぜ!?」
「僕が好きなら立ち止まってよねえ!!! 君が食事を終えたら僕と濃厚な時間を過ごすんだ、君は……!!」
階段を滑り落ちた。
「う"お"お"お"お"!!!!」
自由落下と加速の勢いでバゴォオンッ!! と壁を突き破って身体が外にほおり出される。
あれ? 俺、本編でもこうなってなかったか――?
地面に叩き落とされたが奇跡的に無傷だった。何でだ!?
俺が突き破った壁からジュリアが顔を出した。
「ストール……どうしても君が嫌だと言うのなら、僕も強硬手段に出るしかない!」
「二回くらい強硬手段やっただろ!!!」
「君を半殺しにしてあげるよ!!」
「あげるよ。じゃねえ!!」
ジュリアは赤い魔法陣を展開して、めちゃくちゃ火の槍を召喚してきた。
ズゴゴゴゴゴッ!!! 大量の槍が地面に突き刺さる!
どうすればいい!? どうすればいい!? 逃げろとりあえず逃げろ!!!!
空を見ると、そこにはジュリアが浮いていた。
「……お前、飛べたのか……!?」
「ふっ。僕はもう帰らないと行けない……お空にね……」
そう言って彼女は、空に消えていった。
ーーーーーーーーーー
「どういう事だよ!!!!!!!」
「うわー!!! 何どうしたの!?」
「……ゆ……ゆめか……」
夢か。夢だったか……そりゃそうだ。ジュリアはあんな奴じゃないし、三階の踊り場から地面に落ちて無事で済むわけがない。
ジュリアは全力で驚いた顔で俺を見てきた。
「……大丈夫????」
ジュリアだ……。
「ヤンデレじゃないお前の事が好きだよ」
「は???」
本作が結構暗いから、この番外編で遊ぼうと思います。