第二部 第八話 新たなる、理(ことわり)
光は、タイに向かう、バスの中にルルと共にいた。光は、正直ショックだった。あの凄まじい惨劇を自分が作り出してしまったことを、忘れてしまいたかったが、現実に起こってしまった。いや、起こしてしまったことを、今さらどうあがいても、その事実を消すことは出来なかった。唯一の救いが、警察が証拠不十分で、光の罪を問わないとしたことだった。
「光何か食べないと、体に悪いよ」
光の事が、心配で付いてきてしまったルルが、心配している。
「食べたくないんだ、ルル、仕事に戻った方が良い、俺に着いてきても、また酷い目に会うかもしれないからな」
光は、ルルと目を合わせずに、そう言った。目を合わせないのは、ルルの事を嫌っているわけではなかった。ただ、自分の罪を追った目をルルに見せたくなかったからだ。しかし、光は、草薙剣だけは、身に着けていた。それは、カルマの目の業が、怖いのではなく、それに巻き込み、苦しむ人の姿を見たくなかったからだ。
湿度の高い、暑い空気が光やルルの周りにまとわりつき、悲しい気分と一緒にイライラした気持ちも入り始め、光は、どうしていいか分からず、ルルに大きな声で「もう黙ってくれ、構わないでくれ」と叫んでしまうのであった。
「光……」
ルルは、席を光の隣から少し離れた席に座った。
その時だった、サングラスをかけた、一人の男がバスの進行方向を塞ぐように、立っていて、止まれという、合図を送っている。しかし、バスの運転手も気が荒いのか、止まらずアクセルをふかし、男に突っ込んでいく。その瞬間、バスの前方から後方、まで、何か見えにくいものが飛んだと思ったら、バスが、真っ二つになって、ひっくり返った。そしてバスは、止まった。男が光に近づき、何か話しかけようとしたとき、ルルが、光と男の間に、虫の壁を作って、光を隠し、光を逃がそうとする、そして、少し遠くにいたのか蜂の大群がこの男めがけて、襲いに行く。それに気が付いた、男はすっと消えてしまった。まるで、瞬間移動でもするかのように。
「光!」ルルが光に近づくと、光は、受け身を取らなかったのか、気を失っていた。
ルルは、光のお知りに足長バチを、三匹ほど止めると三匹一斉に「射せ」と命令した。
その瞬間、痛みで光は、飛び起きルルが光に説教を始める。
「光!何やってるの?!自分がやったことを悔いてるの?光は、立派に戦ってきたよ。」と説教をしながら、ルルは泣き始めた「あぎらが、そんなんじゃあたし あたし」と言うと、大声で泣き崩れてしまった。
それを見て、光は、自分の顔に思いっきり、平手打ちをする!(バチーン)という大きな音が、周りに鳴り響いた。そして、光は、いつもの光に戻った。そして
「ルル!ありがとな!やっと目が覚めたよ。」「もう心配させないからな」
「光!」と泣いて、光に飛び掛って抱き着いた、ルルであった。
「急いで、タイに行こう!」と光が言うと、壊れたバスの時間を戻して、治してしまった。
「凄い!」とルルもちょっと驚いてしまった。
そして、ルルがジャングルから、薬草を昆虫たちに運んできてもらい、怪我した人たちの治療をしてから、バスは再び、走り出した。
光は、心の中で思った(ガンデンダー)(あの言葉を聞いた瞬間、また、今までと違った、別の世の真理を知ってしまった気がする)
と、新たな力の覚醒というか、今の力の応用が、幾通りも出来るようになったと確信する光だった。
しばらくすると、タイとミャンマーの国境の川が見えてきた。
「ルル、もうすぐタイだ!」
と久しぶりに笑顔を見せる、光にルルも笑顔で返した。