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第六十一話 1915.4.1-1915.4.5 初陣の後で

ヌーヴェ・シャペルの戦いの後の報告が届きます。





1915年4月上旬、先日英国内の軍病院に後送された牟田口廉也少尉の見舞いに行ってきた。


痛々しい包帯を巻いた姿とは裏腹に少尉は案外と元気そうで、命には別条はないとの事でひとまず安心した訳だが、結束手榴弾による攻撃を受けて車外に投げ出された時に叩きつけられた方の腕と足が骨折しているそうだ。


若いとはいえ流石に骨折ではすぐ治る訳もなく、医者の見立てでは完治には二ヶ月は掛かるだろうとの事で、たいして活躍する事もなく初陣で負傷して暫くは寝たきり状態という不運を、ベッドの上で少尉は頻りに嘆いていた。かなり気落ちしていた彼に俺は、運悪く死んでしまえばそれは名誉の戦死なのかも知れないが、死んでしまえばもうお国の為に勤める事は出来ないだろう、との慰めの言葉を掛けておいた。


とはいえ、牟田口少尉がまったく活躍しなかったのかというと、そういう訳でも無く。

少なくとも我が皇軍は、独軍の結束手榴弾の威力と、彼等が我々の装甲車両に対して既に対応してきている事を知ることが出来た。


また少尉は、装甲車や汎用車両を自ら指揮運用して得た貴重な実戦データを、生きて持ち帰ることが出来た。

これらの情報によって我が皇軍としては、独軍の戦術に新たに対処が出来るのであるから、十分な功績といえよう。



牟田口少尉から聞いた実戦レポートでは、装甲車、汎用車両は共に戦地でも機動性に優れており、また作戦行動中にエンジンや搭載機器等の調子が悪くなるという事は無かったようだ。


装甲車、汎用車両の、実戦運用でのこの報告は、開発してからかなりの回数の試験を繰り返して改良を重ねて来た甲斐があったという事だな。


また、これらが搭載している火力に関しても、十分な威力を発揮したとの報告があり、搭乗歩兵が装備する突撃銃と併せれば、装甲車一両と歩兵四名が搭乗する汎用車両三両で構成された偵察小隊の火力は、独軍一個中隊のそれを優に超える威力を発揮したらしい。


半面、防御面では課題が残った。特に汎用車両は。


汎用車両はオープントップであるため、乗車中であっても身を乗り出して射撃を行うことが出来たが、当然ながら戦闘中に敵に身体を曝す事になった。またオプションで取り付けられるようにしていた車載重機の射撃手は、重機を操作する際に無防備になるので、対策として鉄板入りのボディアーマーを用意して車内に搭載していたのだが、これが殆ど使われなかったようだ。


敵からの銃撃については、全ての弾丸を防御できたわけではなく、装甲が薄い部分は近距離で撃たれれば貫通する事があったし、また弾丸をひっくり返して薬莢に取り付ける事で装薬の量を増やして弾丸の威力を増した〝リバースド・バレット〟の使用も確認されているが、この弾丸の場合はある程度距離があっても貫通していた。


そして、最悪な結果をもたらしたのは、開いている汎用車両の上面から車内に手榴弾が投げ込まれたケースだ。

我が皇軍では幸い投げ込まれたケースは無かったようだが、英軍において手榴弾が車内に投げ込まれて炸裂、搭乗員が全滅するというケースが何件か発生した。


また、結束手榴弾による攻撃では、汎用車両の履帯が千切れたり外れたりし、足回りを破壊されて擱座するケースも発生した。当然の事ながら、この大型手榴弾の爆風を食らえば無事では済まない。


今回の作戦では、戦車に関しては被害は出なかったようだが、随伴した汎用車両には損害がそれなりに出たという訳だ。


一方装甲車に関しても、装甲厚を確保していた砲塔や車体前面については弾丸が抜けたケースは無かったが、車体側面や後面などはベースとなった汎用車両と変わらない為、弾丸が抜けた場合があった。


しかし、流石にこの時代では、戦地の修理工場には追加装甲を施すだけの資材も設備も無いので、土嚢を括りつけるとか、その程度の応急処置を施すしかないと思われる。


今回の作戦で我が皇軍は、独軍の防御の隙間を突破してリールの後方に回り込んだが、その隙間は直ぐに独軍に閉じられ、更には英仏軍が作戦を中止した事で敵中に孤立寸前だったが、手薄な南方を抜けて何とか戻って来れた。負傷者は少なからず出たが、戦死者は出なかった。これは装甲部隊の機動力と、そして防御力に因る所が大きいだろう。


ただ、次回もそう幸運とは限らないだろう。


これはある意味、最初から分かっていた事だが、そもそも汎用車両は、装甲車や戦車の様な使い方を想定して作られては居ない。


あくまで前線に投入可能な兵員輸送車であり、または牽引や様々な物資の輸送を担えるユーティリティ車両である事は、その為の牽引用カート等を多数用意していた事からも明らかで、決して歩兵戦闘車では無いのだ。


故に、その機動力を生かして戦車の後ろを随伴しながら敵の陣地を共に突破する事は出来るが、敵の陣地と撃ちあったり、敵に囲まれる様な状況で停車してその場で戦うような運用は、推奨していない。戦闘時には搭乗歩兵は降車して戦闘する事が推奨されており、その際汎用車両はあくまでも後方からの支援に留めるか、或いはその場から一旦下がるべきだ。もしも汎用車両が敵の野砲による射撃に晒されたならば、こちらも当然ながらその機動力を生かしてその場から離れるべきだ。


今回の作戦では、独軍陣地への事前の準備射撃や、砲兵陣地への破壊工作が入念に行われ、また新兵器の投入で敵が混乱していた事もあって、敵側からの野砲の砲撃の量が、皆無では無かったが、大した量では無かった事が幸いし、砲撃による被害はそれ程でも無かったのは僥倖だと言える。これも、次回もそう幸運とは限らない。


今後の作戦では、今回の作戦で判明した諸々を教訓に取り入れた運用を考えてほしい所だ。



仏軍でも少し動きがあった。英軍ではうちの会社が提供している銃器などの装備品は好評の様で、特に軽機関銃などは仏軍からも羨ましがられる程らしい。


それもあってか、仏軍も軽機関銃の配備を進めるらしいが、その軽機関銃というのが、かの有名なルイ・ショーシャ大佐が開発したショーシャ軽機関銃で、これはエンフィールド軽機関銃よりも軽量で性能的にも優れている、と仏軍関係者が話していたそうだ。


牟田口少尉を見舞った翌日、分厚い要求書を携えた英軍関係者がうちの会社を訪れた。前線の英派遣軍から、今回の本格的な装甲部隊の実戦投入での戦訓を元に様々な要求が上がって来た様で、それらを纏めたものだそうだ。


その要求書の中に、何時かは来ると思っていた要求があった。オープントップではない完全密閉式の車体で、十分な装甲を持ち、装甲車に搭載していた様な砲塔型の銃座を持つ、最低半個分隊が搭乗可能な本格的な兵員輸送車の開発要求だ。


それも、可及的速やかに。



銃器は知識チートを活用しただけに好評、しかし汎用車両は史実通りの失敗を運用側が。

そして、本格的な車両が求められます。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 輸送車をテクニカルみたいな使い方されたら被害甚大になりますよねテクニカルは非装甲ゆえの高機動が売りですから
[一言] 彼の場合、最悪コラテラルダメージとして割り切れるからな(インパールの惨状を見つつ)。 正味他の面子がこの段階で戦死される方が不都合と言う現実。
[気になる点] リバースブレット。とは? ウィキペディアにも無かったので。 [一言] 弾丸をひっくり返して使用できるものなのですか? 炸薬は使えないし、真っ直ぐ飛ぶとも思えない。 もう少し詳しくお願い…
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