球の青空野球教室 その2
球の青空野球教室 その2
「どーも、皆さんこんにちは、こんばんは。またも懲りずに始まりました第二回、球の青空野球教室!! はい拍手!!」
「ふぉ―――!! よっ! 待ってました!!」
「えーでは始めましょう」
「ねぇ! テンション下がるの早くない?! せっかく盛り上げたのに」
「はいはい、えっと今回からはこのヤンキーをレギュラーに格上げしてお送りしていきます」
「よっしゃ! 出世だな!」
「それではテンポよく参りましょう。今回のゲストは清龍女子野球部の変態紳士、校内で多発している謎のセクハラ事件はすべてこの人が犯人! 沖田清彦先輩です!!」
「……感激」
「なんで?!」
「……変態は誉め言葉」
「実は今回のテーマはキャッチャーとのことですが」
「キャッチャー? だから清彦先輩が呼ばれてんのか」
「……名捕手」
「本業はキャッチャーなんですか?」
「ちげぇよ。清彦先輩以外にできる人がいなかったんだ」
「……いたしかたなく」
「ほう」
「……無理やり」
「ほう」
「……押し倒して」
「ほうほう」
「それぜってー記憶違いだろっ!」
――小休止
「えー早速本題なんですが、キャッチャーとは? これはまた哲学というかなんというか。清彦先輩はどう思いますか?」
「……フィールドの監督」
「あーたしかにそんなこと誰かが言ってたなぁ。あとは扇の要とかよ」
「……重要な役割ってこと」
「清彦先輩の言う通りです。守備時にあらゆる指示を出しますがその中でも重要なのがピッチャーに出すリード。これの重要性はパツキンヤンキーでも分かるでしょう」
「パツキン言うなっつーの。てか思ったんだけどよ、師匠が配球を読めねえとか言ってたじゃねえか。あの配球ってリードとチゲえーのか?」
「……全然違う」
「やっぱそうなんすね。どう違うんすか?」
「……」
「先輩?」
「……文字数が足りない」
「は? どういうことっすか?」
「あなた知らないの? 清彦先輩はある文字数以上は一気に話せないのよ」
「んだよそれ! ツ〇ッターかよ!」
「そういう設定なの、しかたないじゃない」
「意味わかんねえ……」
「代わりに私が説明するわ」
「あぁ頼むわ」
「簡単に言うと試合の前に考えるのが配球で、試合中にピッチャーに指示を出すのがリード。つまり相手選手の今までのデータから導かれる理想が配球。よく机上の空論という言い方をするわ」
「じゃあ必ずしも配球通りって訳じゃねえのか」
「そういうことね。リードはバッターの配球をもとにその日のピッチャーやバッターの調子、ランナーの有無とか、あらゆる要素を加味して組み立てる。それがリードよ」
「はー、配球の応用みたいな感じか。でもなんかキャッチャーって大変そうだなあ」
「そうかしら?」
「あぁ、他のポジションより頭使うしよ。プロテクターは暑そうだし、何より地味っつーか、それだけやって報われねえっていうか」
「……そん」
「そんなことないわ!」
「うお! 何だよ急に!」
「たしかにピッチャーとかと比べたら一見地味かもしれないけど。こんなに楽しいポジション他にはないと、私は思っているわ!」
「お、おう。ぐいぐい来るな」
「バッターと相手ベンチ、つまりは相手監督との駆け引き。一球一球思考して、何度も何度も実戦で試行して、それでも相手が自分の予想を上回ってきた時の高揚感! あれは何度味わっても飽きないわ! そう! まるでアニメの最終回のオチが毎回の考察を上回ってきた時のそれと酷似してて……」
「待て待て! 落ち着けって! アニメの話はよく分かんねえし、お前のキャッチャーへの情熱も良く分かったよ」
「そう、分かってくれたのなら嬉しいわ。……あれ? 清彦先輩は?」
「だから言ったんだよ。おまえが滅茶苦茶喋っから拗ねて帰っちゃったぞ。ああ見えて清彦先輩はガラスのハートなんだ、ちゃんと気ィ使え」
「あーまたやっちゃったわね。カントリームーア差し入れないといけないわ」
「何だお前またって、それにあの人カントリームーアで機嫌直るんのかよ。まあたしかにうめえけどよ」
「ええ、さっきもそれで許してもらったわ」
「んだよそれ。あの人ほんとに意味わかんねえな」
「ゲストも帰ってしまったことですし今回はこの辺にしておきましょうか。ではまた」
「まだやんのか、ぜってーまともな奴が来ねえよ」