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普通戦争  作者: みるくるみ
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第6話 人間とは、思い通りには動かないもの

真由美達が鍛錬を始めた頃。

高田達もまた悩んでいた。

坂田についてはなにも考えていなかった。いつも根暗なあいつに限ってこんなことはないと思っていた。くそったれが、めんどくせぇ。本当にめんどくせぇことしてくれた。さて、これからどうするか。

高田は1人で悶々と考えていた。奏汰は、今では1番気をつけるべきだと思っていた瑠奈よりも気をつけるべき存在となってしまった。それをどう対処していくか、その方法を悩んでいた。

森田達はというと、俺が黙っているので何も話さず、ちらちらと俺の様子をうかがっていた。

このままでは空気が重くなりそうだったので、一息つき、顔を上げて問いかけた。

「さて、これからどうする?」

その言葉に森田達は少し考えていた。しばしの沈黙の後、最初に口を開いたのは三島だった。

「奏汰達と同じように過ごすってのは?」

半ば諦めたように言った。それに賛同するかのように森田が頷いている。

しかし、圭は首を横に振り言った。

「俺はその意見には賛同しかねるな。平穏に過ごせるのならいいが、どうもそう上手くいかないような気がするんだ。まぁ、ただの勘だが。」

「俺も圭に賛成だ。まぁ、理由は似たようなもんだ。ただ、1つ思うのは連中は警察を封じ込めるほどの組織で、こんな抜け穴はないと思うからだ。」

圭は俺の意見に頷いていたが、森田と三島は顔をしかめて悩んでいた。

しばしの沈黙の後、高田が確認するように言った。

「言うが、俺と圭の意見は用心みたいなもんだ。やれることはやる、だが極力そうならないようにする。俺だって人殺しって呼ばれたくないしな。」

そう言うと、森田と三島はしばらく考えたあと納得するように頷き、言った。

「そうだね。やれることはやっておかないとね。」

「そういうことなら、賛成するよ。確かに、用心は大切だしな。」

よし、と1つ頷き、高田は言った。

「ならこれから何をするかだが、とりあえず戦えるようにはしたいと思う。ある程度武器を使えるぐらいにはな。特に、俺と圭は覚えとかねぇとただの邪魔もんだ。」

圭と三島は頷いたが、森田は若干俯き不安がっていた。賛成した手前意見しにくいのか黙っている。

森田は戦力になるかは分からんが、不安を覚えられたら、もし何かあった時邪魔になる。めんどくせぇ。一応安心程度にはさせておくか。

1つ息をつき、俺は森田に声をかけた。

「森田、大丈夫だ。もしもの時のことだし、もしなにかあっても見捨てたりしねぇから安心しろ。」

その言葉に安心したのだろうか、森田は嬉しそうに頷いた。少し頬が赤らんでいる。

ふっ。ほんとに馬鹿なんだな、こいつ。

森田の単純さに呆れつつ、改めて声をかけた。

「よし、ならペアで練習しよう。ペアは武器が同じ方がやりやすいだろ。だから、俺と圭、森田と三島だな。場所はコテージの前で適当にする。これでいいか?」

3人は頷いた。

「じゃあ早速練習だな。行くぞ。」

俺が立ち上がると、続いて圭、三島、森田と立った。

そして外に出て、それぞれが練習を始めた。




各グループが対策を始めていた頃、坂田奏汰は勝利を確信し、うっすらと笑みを浮かべていた。

これで俺は生き残れるだろう。リーダーという立場にいる以上、裏切られることは少ないだろう。だが、用心は必要だ。恨みを抱かれないようにしないとな。

高田達には武器を慣らすまでとは言ったが、実際にはそんなつもりは無い。

皆には平和のためには武力を持たない方がいいと言い、自分自身も日本刀を使えないと思わせるようにわざと下手な風に演じた。

俺だけは絶対に生き残る。例え1人になっても。

そう、俺だけが武器を使えればいい。他のやつらも見たが演じて下手なやつはいないし、普通に上手なやつもいなかった。

つまり、俺しか武器を使えない。要するにもし戦闘イベントが行われたとしても俺だけは生き残れるってわけだ。それに、高田達と雑魚どもを戦わせることも出来る。完璧だ。自分が死ぬ未来なんて想像ができない。




奏汰が勝利を確信している一方、密かに企む輩がいた。

その輩は4人いた。町田健人率いるグループだ。

4人は真剣な表情で話し合っていた。

その中、俺──町田健人は言った。

「改めて確認しておく。俺はこのまま奏汰につくつもりはない。例え、お前らが反対しても俺は1人で出ていく。それぐらいの覚悟だ。あいつには付きたくない。昔から根暗なくせに悪知恵が働くやつだ。小学校の頃から同じだった俺は知ってる。だが、無理にお前らに信用しろとは言わない。なにせ、我が儘だからな。ここで1つお前らに聞く。俺と来る気はないか?」

俺は他の3人──藤沢鷹斗、金田浩史、中村明日香を見回して言った。

ほかの3人はすぐに答えず、しばらく悩んでいた。

その沈黙を破ったのは鷹斗だった。

「俺は健人に着いていく。奏汰と健人のどちらを信用できるかって言ったら健人だ。だから、ついてく。」

その言葉をきっかけにほかの2人も口を開いた。

「僕もついていくよ。健人は責任感もあるだろうし、信用できる。」

「私も。あいつみたいな中二病野郎の下につくより健人といた方が10倍良い。」

皆が奏汰に反抗する俺に協力をしてくれるようだった。

「皆……ありがとう!」

そういうと3人は微笑んだ。良かった。皆が信用してくれて。

実際の所、奏汰の悪知恵が働くのは本当だった。俺自身、その悪知恵にはめられて、教師から怒られたことある。忌まわしい思い出だ。

頭に浮かんだその思い出を振り払い、真剣な口調で言った。

「これはただの勘なんだが、奏汰は日本刀を使えると思う。でも、もし使えるっていうなら秋人みたいに剣道みたいなのじゃなくてゲームみたいな振り方だな。まぁ、言ってしまえば──人殺しに向いた振り方って感じだな。」

健人の言葉に3人が息を呑んだ。

しばしの沈黙の後、浩史がその沈黙を破った。

「殺す、か。でも俺達は4人の上にハンドガンもある。遠くから撃っちゃえばいいじゃん。」

その言葉に俺は頷き、言った。

「そうだな。あいつは殺せるだろう。だが、周りはどうだ?あいつらは全員奏汰側だ。奏汰を殺せば周りに撃たれて終わりだ。まぁ、俺達もあいつらも撃つ覚悟はないだろうけどな。」

「それもそうだな。なら良い案が見つかるまで一応従うのか?」

俺は少し考えてから言った。

「そうだな。下手に逆らうとやられるだけだ。だから1つ提案なんだが、見つからない範囲でやれることをやろう。例えば、ハンドガンの撃ち方を覚えておこう。といっても俺は撃ち方を知らないんだけどな。」

その提案に3人は同じだというように頷き、自嘲するように笑った。

「さて、じゃあ早速撃ち方を覚えるか。弾は使い切れないぐらいあるけど、とりあえず空砲でやろう。それで、外だとバレるかもしれないから中でやろう。いいか?」

3人は1つ頷き、それぞれハンドガンを撃つ方法を探り始めた。




──疲れた。こんなに運動したのは体育祭ぶりぐらいだな。

肩で息をしている私──新井真由美の横では瑠奈がコテージの床に寝そべっていた。

「疲れたなー。でも、ハンドガンの使い方はかなり分かってきたかな。まぁまだ空砲だけどね。」

瑠奈は自嘲するように呟いた。その後、汗をかきつつもまだまだ元気な彩と秋人に向かって、

「それにしても、彩と秋人凄かったね。最後の方なんて見ててハラハラするぐらい日本刀振ってたもん。」

すると、彩は笑いながら言った。

「あんなの本調子には程遠いよ。いつもは体育館とかでやってたからね。靴だと感覚が変わるから今日は慣らしてたって感じかな。」

それを聞いた秋人が目を丸くして、

「まじかよ。俺結構靴にも慣れたなって感じで真剣に振ってたんだけどな。やっぱり彩にはかなわねーな。」

それを聞いた彩が首を横に振って言った。

「そんなことないよ。秋人も体育館の時の方が強かったよ。本調子になるまで頑張ろうね。」

笑顔で彩に言われて秋人は照れたように顔を背けた。若干頬が赤らんでいた。彩もまた、同じような顔をしていた。

私は暇潰しになりそうなネタを見つけ、思わずにやっとしてしまった。瑠奈も同じようだ。にやっとしている。

瑠奈が私の視線に気づき、1つ頷きあうと瑠奈は彩に私は秋人に近づき、ぼそっと言った。

「夜は静かにしてよ?」

ぶっ!と2人同時に思いっきり吹き出した。頬を赤らませ、何度も咳き込んだあとにそれぞれがあたふたとしながら言った。

「な、なにを言ってるんだ!」

その様子があまりに面白くて私と瑠奈はほぼ同時に吹き出した後、お腹を抱えて笑った。

笑い終えた後、一息ついて、瑠奈が話し始めた。

「さて、リア充いじりはまたにして休もうか。ご飯を食べようか。さっき冷蔵庫の中を見たけど調理の必要なさそうだったからすぐ食べられるよ。」

「ちょっと待って。」

やっとのことで落ち着きを取り戻した彩が言った。

「汗かいたから先に風呂に入りたいな。」

「確かに、汗くさいままじゃ嫌だしね。じゃあ未来の旦那さんの秋人と入っといでよ。風呂なら騒いでもそんなに騒音にならないだろうし。」

ぶっ!と、また2人同時に思いっきり吹き出した。

またもあたふたしながら言った。

「わたっ私とあ、秋人はそ、そんな関係じゃ、ないよ?」

彩は頬を赤らませている秋人を横目に見ながら言った。まるで肯定しているかのような動揺ぶりだった。

「嘘つかないでいいからさ、ね?付き合ってても文句言わないから。だから──入っといで?」

肩で息をしている2人に瑠奈がとどめの一言を言った。

もう吹き出す気力もないのか、2人揃って床に突っ伏した。

「い、1週間前…から…つ…付き合って、る…。い、言った…から…も、もう…やめ、て……。」

もうギブアップというように彩が自白した。それを聞き、瑠奈はさらににやっと笑い、私に言った。

「秋人引きずって風呂に連れてってあげて。私は彩を連れてくから。」

私はふざけて「イェッサー!」と敬礼をした後、動く気力のない秋人を風呂に引きずっていった。

2人を引きずった後、瑠奈と2人で会話していた。

「あの2人出来ちゃってたねー。まぁグループ作る時からなんかチラチラ見てるなーとは思ってたけど。」

そんなことを言う瑠奈に私は軽く笑いながら言った。

「お風呂で営んでるか確認しなくていいの?耳そばだてなくていいの?」

その問ににやっと笑って言った。

「流石に初日にしないでしょ。あと喘げば聞こえるでしょ。」

「それもそうか。営むまで2人を今日みたいに突っ込むのかー。腰が痛くなりそうだね。」

「おっさんか!」

あはは、と笑いながら瑠奈が突っ込んだ。

唐突に瑠奈が落ち着いた声音で言った。

「明日も練習かなー。」

「多分ね。武器も慣れてないし、ゲーム開始2日で何か起こるとは考えにくいし。」

「そっか。」

瑠奈が短く返事した。そして、おもむろに立ち上がり、

「さて、そろそろお風呂あいたかなー。」

と言ってお風呂に入る準備をし、浴室に近づいた。

すると、瑠奈がぴたっと止まった。

「どうしたの?」

そう聞くと、瑠奈が若干顔を引き攣らせて私を手招きした。

まさか、と思い近くに行き耳をそばだてると──中から彩の甘い喘ぎ声が聞こえてきた。それはもう、はっきりと。

瑠奈と顔を見合わせ、さらには引き攣らせ、お互いに一言。

「まじか……」

これから夜は静かになりそうだが、お風呂は先に入った方が良さそうだ、と思った。

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