第4話 人間とは、予想外が似合うもの
池田の指示のもと、グループ作りが開始した。
誰もが仲が良かった人と共に組んでいく。私は、瑠奈と組んだ後誰を誘うか相談していた。
「ある程度自衛できる力が欲しいから、剣道部の佐々木さんとか武田君とかどうかな?」
私がそう提案すると、まるでそう思っていたと言わんばかりに、
「そうだね!そうしよう!だったら、善は急げだね。誘ってくるよ。」
と言って、誘うために走っていった。
あー、瑠奈みたいな人望が厚いやつはこういう時に利用しやすいな。大体の人がついてくる。
これは思った以上に利用価値がありそう。これからが楽しみだ。
でも1つ疑問に思ったことがある。
いくらゲームだからって皆して慣れるのが速すぎないか?私は常日頃からグロテスクな小説とか読んだり、特にクラスに思い入れがあるとかじゃないし大丈夫だけど。
佐々木さんとか武田君とか、仲のいい友達もいるだろうに。なんで。
瑠奈は上手いこと佐々木さんと武田君を誘ってきたようだ。よく誘えたなと思って聞いたら、何しろ日本刀を持った2人を怖がりなかなか近づいて来なかったらしい。まったく、友情ってやっぱり上辺だけだ。武器が違うだけでこんなにも信用出来なくなるんだから。まぁ私は利用できるかどうかで判断しているけど。
佐々木さんと武田君は私を見て少し以外そうな顔をした。当然だろう。私みたいな地味な存在が瑠奈のグループにいるのだから。
でも、不信感は持ってないらしく自己紹介をしてきた。
「佐々木彩です。私のことは彩って呼んで。これからよろしくね。」
「武田秋人だ。俺のことも秋人でいい。」
「よろしく。新井真由美です。私も真由美でいいよ。」
皆して形式の様な自己紹介を終わらせた。瑠奈に関しては皆が知っているので誰も催促はしなかったし、自分からもしなかった。
自己紹介の後、終わったのを見計らって瑠奈が、
「じゃあグループも決まったことだし、早速リーダーを決めよう。」
と、言った。
「なら多数決で決めようよ。公平だしね。でも、反対が1人でもいたらその理由を聞いて多数派になったリーダーが改善できるならそのリーダーにする、って感じでどうかな?これなら、信用できるリーダーを選べるんじゃない?」
私はそう提案した。多数決については皆それがいいと考えていたらしく、反対なしで決まった。
そして、多数決の結果は当たり前のように瑠奈がリーダーになった。私は瑠奈をリーダーにするのは少し不安があったのだが、ここで反対すると面倒臭いのでやめた。
私達がリーダーを決めた頃には他のグループのリーダーも決まっていた。
高田と森田は伊藤ともう1人は三島貴明だった。この4人はいつもつるんでいたいじめの中心グループでもある。
他のグループは、彩を遠ざけていた女子ら4人のグループと、坂田奏汰を中心とした男子、いわゆるオタク男子の集団と、その他あまりのようなグループに分かれた。
坂田奏汰以外の全員の武器がハンドガンとナイフだったので、私達のグループと高田のグループは嫌でも目立ってしまっていた。今頃はどちらに着くか、または別の方法をとるか考えているところだろう。
「では、皆さんがグループに入られた所でグループについてのルールなどを少し紹介してからゲームを開催したいと思います。」
池田が言うことを皆は静かに話を聞いている。
やはり、慣れるのが早い。誰かの入れ知恵か?それでもここまで安定させるために何を言ったというんだろう。
「グループのコテージに入るのはそのグループメンバーのみですが、グループ同士で協力関係を持ったりするのは大丈夫です。なので、メンバーだけしか協力できない、というような事はありませんのでご安心下さい。」
これは予想していた通りだ。確認する必要がなく安心した。
でも、なんだろう。私達と高田達以外のメンバーが何か変だ。安心するならまだしも、少し微笑んでいる。まるで勝利を確信しているように。
ここで私にとって最悪のシナリオが頭をよぎった。このシナリオは私の中で既に確信に変わっていた。これはまずい。1つでもミスしたら、いや、もう手遅れかもしれない。このシナリオが本当ならば、劣勢になるのは私達と高田達だ。
「また、別グループへの食料品などの讓渡は出来ませんのでご了承ください。処分の対象になりかねませんので。」
今の私には池田の説明など頭に入ってこなかった。とにかく、このシナリオを打破することが最優先だった。でも、そんなものは思い浮かばない。そう、すでに私達は先手を打ってしまった。
「では、そろそろ普通戦争を開始させていただきます。3……2……1……」
自衛目的で彩と秋人を勧誘するという先手を。
「開始!」