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老老異世界  作者: かすた
9/9

さて、と


 起き上がると、前まで寝ておきると当たり前に見えた、いつも通りの天井がみえる。

 紀ちゃんはまだ寝ていたので起こさないよう居間に向かう。

こんな目覚めも久しぶりだ。


「昨日は行きませんでしたねぇ」


「紀ちゃんがいたから、なんとなくもったいなくてなぁ」


「私もですよ。」


 孫がいる、と張り切ったのだろう。

朝からいつもなら簡単にすませる飯をばあさんは早起きしてまで、豪華に作ったらしい。

 紀ちゃんが好きな甘しょっぱいひじきの煮物。甘くない卵焼き、味噌汁に焼き海苔、味の素をふりかけた漬物に、買い物してないから、と缶詰の魚を出していた。


 夜はひじきを混ぜ込んでひじきご飯にする、と言っていた。


「おいしい!」


 起き出した紀ちゃんは、懐かしそうに噛みしめながら、後で好きなものを作ってもらえた、と三つ上のお兄ちゃんに自慢すると言っていて、自分が作ったものではないがくすぐったい気持ちになる。


「昨日は行かなくてよかった。」


 どうやら気の持ちようで行き来できると知ったらしい紀ちゃんは安心したのか昨日よりにこやかだ。

 紀ちゃんはいつでもニコニコしているがそれでも不安だったのか、体調とともによく眠れたかたずねてくる。


「ぐっすりだよ。少し筋肉痛だが」


「そっか!よかった!でも今日は少し、本当に消えるか確かめたいから逆に念じながら寝てほしいかな」


「そりゃ、もちろんいいが仕事はどうした?」


「休みとったから大丈夫!」


 今日はどうやら逆にあちらに行くことになりそうだ。

しかし、孫がいるのにあっちに行くのはなんだかもったいない気もする。


「大丈夫、私も明日は連れていってもらえるか実験するし!」


「え」


 孫より遅く起きた和子は朝食を食べながら紀ちゃんの言葉に驚いて目をまん丸にしている。

 どうやら昨日は居間で寝ていたらしいが特に変わったことは無かったらしい。

朝ばあさんに起こされて手伝わされるのはごめん、とまた車で仮眠していたそうだ。


「いや、紀ちゃん…」


「大丈夫、大丈夫」


「でもとーさんもかーさんも、なにかあったら…」


「とりあえず確認しないとどうしようもできないから」


 和子は昨日紀ちゃんの予想を聞いてから、あまり話すぶんには慣れたものの、あちらに行かないでほしい、らしいがのりちゃんの言葉に渋々納得した。

 とりあえず明後日までは2人ともこちらにいることにしたと話していた。


 そこからは久しぶりに何処かに行こう、と、和子の運転で大型のショッピングモールに買い物に行ったり、あちらで足りないものを買いに百均に行って、としばらくぶりの外出を楽しんだ。


 あっという間に夜になって最近の日課になったポケットに菓子つめたりペットボトルを抱いたりと、準備をしながら布団に入ると紀ちゃんに少し笑われたが

あちらの衛生状態が分からない水を飲むのは、と賛成してくれた。昔は井戸や川でも飲んでいたものだが、やはり今のような生活になれると気になってしまう。

 未知なる感染病があっても困る、ということで

何故か除菌スプレーも持たされた。

「やれやれ、紀ちゃんは心配性だね 」


「仕方ないですよ。しかし本当に違う世界なんですかね。」


 慣れきった林のなかに

二人で1本ずつもってきたペットボトルを手に立ち上がる。

気力が充実すると

足取りも軽いように思える。

 婆さんの曲がった腰も最近では前よりも伸ばしているせいか、すこしシャキシャキと動いてるように見える。

歩き慣れていなく杖をそこら辺の木で代用もしているが、最近は良く歩くようになったからか、気力が漲ったからか、杖なしでも歩ける距離が伸びた。

 紀ちゃんのいう異世界に関しては

なんせ行動範囲がとても狭いので確認するすべもない。


「まぁ、俺らは畑して、こっちでなんかすることもないだろう」


 そうですねぇ、とのんびり歩きながらも

少しだけふいたかぜが心地よく

急ぐことも今更ないですから、と家に向かっていく

いつもはお嬢ちゃんに会いに行くのだが

荷物が多いので取り敢えず家においてからばあさんが様子を見に行くそうだ。


 そのついでに税のことやら何が買えるか、なども聞いて換金できるようなものも持って言ってもらう。

のりちゃんが言うには

ビー玉や、ガラス玉、砂糖に胡椒などは換金の定番だ、と言っていた。ので、首を傾げながらも言われた通りに小分けにしてポケットに詰め込んできた。

 お嬢ちゃんに預けても別にあちらでは一個一個が高値になるものでもないので安心して預けられるだろう、と

何が定番なのかはわからないが、小説の中では定番らしい、

あと馬鹿なことを聞くが魔法があるかも聞いてこいといわれた。

魔物がいるなら魔法が使えるかもしれない、と。


「ふぃ~」


 運んだペットボトルを床におろす、

こちらではどうなるか分からないから、とポケットに入るサイズの保存食や、調味料、少し間抜けだが手に握ったままの百均の袋にかいだしたものを詰めてペットボトルを片腕で抱きながら持ってきた


「しっかしよく買ったなぁ」


 ガサガサと後半はよく見もせずカゴに入れたものだったが……、袋を漁ると

軽いプラのコップやプラの食器、米を入れるのに虫やらが入ってこないように、とタッパーと

缶詰をいくつか、タオルに

筆記用具などなど


 とりあえず最低限ということでも買いすぎたように思う。

ばあさんが備え付けの棚やらなにやらに勝手に分けるだろう、と机に放置して、水撒きのために畑に向かう

流石にバケツは袋に入れられそうになく

買ったもののあっちに置いてくることになった。

紀ちゃんは真剣な顔でかぶればいいと言っていたがそれは流石に遠慮した。


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