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老老異世界  作者: かすた
7/9

事情


「もう良くなったのか?」


「はい!大分!ありがとうございます!」


「よかったねぇ」


 病み上がりなのに元気な娘っ子だ。

今回は和子に聞いてこい、と言われたこともきかなきゃらん

かってしたたるなんちゃらのように当たり前に家に招いてもらうと、水を出してくれた。


「そういえば聞きたいことがあるんだが」


「はい!なんでも」


「えーと、何何」


 まとめたメモ用紙を取り出して

持ってきたチラシに書くように用意する。

 和子の書いた文字は自分たちで書くよりも小さくて

天然の太陽の光が射し込むこちらでは若干見えずらい。

 視力も特に良くなっているわけでもないらしい。


「えーと、ここはどこだ」


「ほうれん村です」


 こりゃ前に聞いたな。


「お嬢さんの名前は?」


「アンです」


「じゃあこの村の人口は?」


「えーと、今は1人です」


「え、嬢ちゃんひとりかい?」


「はい、元々は廃村で、少し歩いていけば街があります。」


「そりゃ大変だなぁ、どうりで人を見かけないと思った」


「はい。たまに足りないものを街に買い物に行くんです」


 いやまさか一人でこんな所に住んでるとは…

ばあさんと2人でも寂しいような気もする毎日なのに、夜はすっかり暗くなりそうなこちらで、

どれだけ心細いことだろう。


「えーと、この世界は危険なことはないか?要は獣が出たり物とり、の類だな」


「魔物はたまに出ますが、廃村になったのも盗賊が襲ってきたらしく…」


「危険だらけじゃな…」


 物騒だなぁ。

現代日本でもなかなかない、ましてや魔物なんて出るわけもない。あ、でも昔まだ、町寄りに家を建てていたあの頃に泥棒に入られたこともあったなぁ、

 夢の…世界じゃないかもしれんがとりあえず夢の世界と呼ぶことにしたこんな電話もないところだと確かにあちらより物騒になるだろう。


「ええっと、でも盗賊は街の領主様が捕まえてくれて今は大丈夫なはずです」


「領主がいるのかぁ」


「すごいですねぇ、とーちゃん」


 うんうん、と頷きながら疑問も当然あるが、どんどん話が逸れそうなので後で覚えてる時に聞こう、と

メモにあるとおり質問して答えを書いていった。


「そういえばなんでこんなところに住んでるんだ?」


「あ、えーっと…」


 少し俯いて言葉に詰まった嬢ちゃんは

何やら訳ありらしい


「なんといいますか、私はとある貴族様の庶子でして…母は私が小さい頃になくなって、しばらくは家に住ませて貰ってたのですがどうしても義理の母と折り合いが悪くて。父はいい人なのですが、変に気を遣うよりは、とここら一帯を私に治めるように、とこの廃村を相続させてくれたのでここに最近住み出したんです。」


 なんだか少し可哀想になる話だが、いわば土地を貰ったのだから全く何も考えていないというわけでもないのだろう。

 それよりも


「貴族?貴族がおるのか?」


「はい…でも割といると思うんですけど…どこから来たんですか?」


 はぁー、また夢の世界でも

自分の知識の中に貴族を登場させるなんて思いもしなかった。

 まぁ多分あうこともないだろうがのぉ。

ますますここが夢かどうかわからなくなった。

 まぁ適当にどこから来たかについては誤魔化しておくことにして。


 ここの空いてる家に住んでも大丈夫か聞いてみると、

大丈夫、と教えてくれた。今度街に行く時に役所に申請もするが特に何も言われることもないだろう、と

逆に何も無いところで、本当に手助けもできないが、と謝られたが。


 まぁ、ここがどこなのか全く分からないが

枯れていくばかりの人生に楽しみができたと思って、しばらくはまた頑張るかのぉ。


「じゃあ、早速掃除しましょう」


 結局何件か見せてもらって

内装はそんなに変わらないらしいが、

 水を汲むのも重労働なので、運ぶのが近い方が、と井戸に近いところの家に住まわせて貰うことにした。

ばあさんははたきやらを借りてきて室内を掃除するようだ。

腰は大丈夫かねぇ。


「さて、耕すかねぇ」


 そういえば税のことを聞いてなかった

ここは少し裏にある土地が少ないらしく井戸にちかくて便利だが嬢ちゃんは選ばなかったと言っていた。

 しかし年寄りには水を汲むのが辛い。

もしも税が一律ならどうしようかねぇ、こちらの金もわからないし、何か代わりになるものがあればあちらから持ってくるのもいい。


「おお、確かに狭いなぁ」


 ある程度耕すと嬢ちゃんのところより狭い

これは自給自足は無理だなぁ、娘っ子一人で住むなら援助があっても理由が理由だし買い物をしてなんとかする、というわけにもいかんだろうし。


 ペットボトルにうつしたみずをまいて種をまく。


「嬢ちゃんに買い物は頼むとして…換金出来るものかぁ」


 さっきたまに街に行くので歩くのは辛いだろう、とお世話になったからと買い出しをしてくれると言っていた、そういえばこっちで夜を過ごしたことがないが。

 毎日とりあえずあっちに帰るつもりだし、食べ物はなんとかなるだろうし、まぁいいだろうと納得した。

 布団はどう考えてもこちらには持ってこれないだろうが、


「じいさん、そろそろ帰りますよ」


「そうさなぁ」


 前回と同じように手を繋いで、布団の上で目をさますと

和子が血走った目でこちらを見るもんだから思わず体ごと引いてしまった。


「お、おはよう」


「おはよう!それよりスーッときえてぱっと体が現れたんだけど!!」


「あれまぁ、そんなことになってるのか」


「不思議ですねぇ」


「まったくなぁ、それより和子少し寝たらどうだ」


 あまりにも実の娘としては、少し見たくないところを見てしまったようで

そうすすめると

消えると困るから車で寝る、と外に出ていってしまった。


「あらぁ心配かけちゃったわね」


「そうさなぁ」


 消えたと言われても仕方なし、まぁ戻ってこれてよかったでなんとなく納得してるので

とりあえず朝メシを食べて新しい家について語り合う。

 今日は、孫が来てくれるので少し嬉しい。

話し合うことは、不思議な事だが孫というのはいつだって可愛いものだ。


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