プチパニック
「こんにちわーあれ?テレビつけてないの?珍しいね」
かさかさと何やら買ってきてくれたらしいものを、挨拶もそこそこに和子はせっせかと冷蔵庫にいれていく。
ヨーグルトは早く食べてね!
これはもう賞味期限切れだから捨てるからね、と手早く分類も済ませていく
「それがな、和子、最近不思議な夢を見るんだ」
「とーちゃんと2人でね、おんなじ夢を見るんだよ」
「へぇ、珍しいこともあるね」
「それが毎日でな」
「ポケットに色々入れていくんだがそれが消えていくんだ」
「なにそれー、布団にこぼれてるんじゃない?」
冗談を言っていると思ったのか、笑われてしまった。
昼寝する間にどこかへ行ったら困るから、と見ていてもらえんか、と頼むとまぁそれ位なら、と頼まれてくれた。
何を言っているのか、という顔をされたが。
「とーちゃん!かあさん?」
一瞬林にこれて、さぁ、娘の家に、と歩き出すと
急に和子の必死な声が聞こえたので
目を覚ましてしまった。
「なんだ、まだ少ししか行けてないぞ」
「いや、だって、とーちゃんとかあちゃんが急に、消えたから、え?」
「え?消えた?」
ペタペタと自分たちの体を確認するが
特に、変わったところもない。消えたところなんてないし
和子が持ってきてくれてあの娘にやろう、と、そのままポケットにいれた一口羊羹もそのままだ。
「え?なんで?え?」
和子は焦ったように体を触って確認している
まさか、消えるなんてそんな…
「いや、おかしいよ、おかしいでしょ?!お医者さん行こう」
「いやいや、和子や、お医者になんて言うんだ、」
医者に連れていかれても
体が寝てる間に消えるなんて
相談もできないし、まず三人揃ってボケたのかと思われる。
「そ、そっか、でも…」
「消えるとは不思議だな」
和子は頭を抱えて悩み出したので
こりゃだいじになった、と思いながら結局はまぁ帰ってこれるからいいよな、とばぁさんと不思議旅行みたいですねぇ、とのんびり話し出した。
まぁ帰ってこれるのだ、命の危険もないしそこそこに張り合いがあるようにもなって、損は体の疲労だけだし、それだって医者から散歩しろだ、なんだといわれているから結局は運動不足の解消にもなるし、沈みがちだったばあさんもいきいきとしている。損は無いに等しい。
「いや、そんな旅行とかそんなんじゃなくて…とりあえず何日か泊まるから!」
「いや、おまえ、泊まるって…」
さっさと携帯電話でどこかへ連絡をとりだして
何日か泊まる、と伝えると
そわそわと色々いじりだした。
「紀ちゃんに聞いてみないと…」
とりあえず孫に相談することに決めたらしいが
相談してもそんなことは知らないだろう、となんとなく思った。
「とりあえず今日行く時になにをもっていくか確認しよう」
「そうですねぇ」
和子がいてもいなくても
あまりやることに変わりないので、どうしてもそちらの話になる。
分からないものは分からない。
合間合間に細かく聞いてくる和子に色々説明しながら、だが。
「ちょっと待って、私も寝たら消えるなんてことないわよね」
「それはわからんなぁ、来たくないと思えば大丈夫じゃないかい?」
そんな無茶な、と言いながらあれやこれや言いながらまた考えこんでいる。
「そうだ、今日は寝ないでおいて、明日は紀ちゃんに来てもらって、それで見てもらって」
「ばあさん、あの嬢ちゃんが元気になったならチョコレートやら持っていってやらんか」
「そうですねぇ、あとはお醤油もだしも持っていったから。お菓子でもあげましょうねぇ」
「いやいや、なんでそんな話に…」
黒電話のような音が鳴り出すと
和子は携帯を取り出す。
「あ、紀ちゃん?大変なのよ!母さんたちが、え、違う具合が悪いとかじゃ、いや、それより大変なような?うん、後で説明するから、明日休みよね?うん、具合は大丈夫だって、うん、ちょっとまだ話せないから明日こっちに来てちょうだい」
なんだか大事になってきたなぁ、と
和子は電話をきると
今日は寝ないで様子を見る、消えても戻るまで様子を見るから!と断言して
結局夜まで話し合った。
「では、おやすみな和子。」
「おやすみ。えーと、なんてゆうか気をつけて