ゆめとは
昼間はあれこれ話してて昼寝をしなかったので思ったよりも早く寝入ることが出来たのだろう。
テレビだってつけてはいたものの見たおぼえもない。
ポケットからでてきた、ばあさんが書いたチラシを取り出すとポケットから出して確認してみる。
・水(五百ミリリットルのペットボトル)
・米(ビニール袋に入れたもの1合)
・薬(箱だとかさばるので3回分)
・飴玉を何粒か
・ハンカチ
・ライター
全てあるようだ。
若い娘が好きそうなもの、ということでチョコレートも浮かんだものの、寝ていて溶けたら大惨事だし、なんせ夢だから、という大人として少し恥ずかしいことをしているような気持ちになったので、やめたのである。
それでも飴やら水やらを持っているのはやっぱり恥ずかしいような気もするが
いつもの如く林にこれ、持ち物を軽くチェックした後、
最近、歩き慣れた道をばあさんと歩いていくと
一声、声をかけてから家に入りばあさんは一目散に娘の寝室に入っていく。
正確には娘の家なのだから、気軽に立ち入るのもどうかと思ったもののまぁ夢だからなぁなぁになっている。
テーブルと椅子がある奥には、竈があったのをこの前確認した。
竈の上に2口の穴があってここに鍋をはめ込んで料理をするのだろう。
ほぉほぉ、こんなになってるのかと思いながらも
さて、ばあさんはここで料理をするつもりなら火を起こしたほうがいいなぁと
外に出て畑の横に積んである薪置き場からいくつかまきを運んで
ついでに林で拾った小枝を上に載せる。
燃えやすいものは、と考えて持ち物を書いたチラシに火種を作ることにした。
「おお、燃えるもえる」
団扇でも持って来て火を大きくするんだったなぁ、と反省していたが竈のよこに何やら筒のようなものがあったので鞴の代わりだろうと拝借する。
「あら、とーちゃん、火つけてくれたの」
汗を吹きながら、順調に大きくなった火を見ていると、ばあさんもいつの間にか竈を見に来たようだ。
「おお、娘はどうした」
「寝てるんで、ハンカチを取り替えたところですよ。まだ熱は下がらないみたいですけどね」
「そうか、そりゃ大変だな、もう少しで火もちゃんともえるだろう」
「しかし竈なんて久しぶりですよ、使えるかねぇ」
「なーに!ものの試しだやってみるといい」
そうですねぇ、と備え付けの棚から金属製の重そうな鍋をおろそうとしてよろめいたばあさんに慌てて寄っていく
「それは俺がやるから」
「すいませんねぇ」
夢の中だって怪我したら多分痛いだろう。
火だってなんだか熱く感じたし、垂れ流す汗の感覚もある。
夢から覚めたら寝汗でびっちょりかもしれん。
どうせ夢なら若くしてくれたらいいのになぁ、となんて言いながらも
「やっぱり小さいペットボトルじゃ粥にするにはたりませんねぇ」
「今度は2Lのにするか」
「抱いて寝なきゃなりませんよ、」
「そりゃ大変だ」
と、カラカラ笑いながら
しかし、ペットボトルを抱いて寝るんだろうな、と予感した。
重い鍋をえっちらおっちら持ちながら
水瓶からばあさんに水をすくってもらって
これはといだらまた手間がかかるなぁ、うちは無洗米で良かったとどうでもいいことを考えながら水につける。
「とーちゃんは力持ちだねぇ」
頼られて悪い気はしない。
それにバァさんもなんだか孫に食べさせる時のようなみたいな張り切り方のように
腰も幾分か伸ばしている。
粥を作るからしばらくはつけたままで、と鍋を端っこに置くと椅子にすわった
「またみかんでも持ってくればよかったねぇ」
「そうだなぁ、体温計も持ってくればよかったなぁ」
呑気に二人で話をしながら
しばらくして水もしみただろうと竈に鍋をおいて炊き出す
「こりゃ火加減がむずかしいねぇ」
なんて言いながらも、娘の様子をまた見に行ったり、カップに水を入れて持っていったりしながら鍋を時折開けようとするのを諫めながら働き回っている。
少しすると米の炊ける甘い匂いが室内に充満するとやっと、ばあさんは蓋を外した。
「じいさん、少し味を見てくれないかねぇ」
「おお」
お玉で少しすくってたべてみると
コメの甘い味がした。
「あらお塩は・・なんだか少しくろいねぇ」
真っ白な塩ではなかったが小さい壺に入ったものをぺろりと舐めて今度は調味料も持ってきたいですね、と塩をふっている。
「そういえば今更ですけど、お嬢さんはパンのがよかったかしら?」
「ぁあ、そうだったなぁ、まぁ元気になってからそれは聞けばいいんじゃないか?」
「それもそうですね。」
そういえば、外人の娘っ子だったと思ったものの
ばあさんは納得したのか深皿に粥を盛ると、スプーンを差して
娘の部屋に持っていくのについていくと
娘は赤い顔でまだ荒く息を吐きながら眠っていた。
「起きれるかねぇ?少し食べてから薬を飲もうね」
「あれ?おじいさん?」
やはり熱で覚えていないだろう婆さんの顔をぼんやり、見ながらこちらを見遣ると、
少し驚きつつも身体を起こそうとするので、手伝ってやった。
「これは、ばあさんだ、大丈夫かぁ?」
娘はそれでもあまり頭が回らないのか
台所をかりたことや、勝手にお邪魔したことをばあさんに粥を食べさせてもらいながら聞いている。
「そう、なんですか、それはお手数をおかけしました」
「大丈夫、とーちゃん、お水をペットボトルの持ってきて」
「はいよー」
薬とともにペットボトルを渡すと
欠けたコップにそそいでばあさんがのませる。
「薬のめる?」
「薬、高価なものでは」
「高くないから大丈夫よ、ほらゴックンして」
遠慮してても断るのも辛いのかなんとか飲み干すと
また横にならせた。
「少し、お嬢さんが良くなるまでたまにくるけれど、ちゃんとやすんでね」
「すいません…」
スースーと寝息を立て始めたのを確認して
ばあさんが食器を洗うというので
水瓶から水をボウルのようなところにだしてはこんでやる
「とーちゃんは次に来る時に何か持ってこれるか確認しておいてね」
「しかし、足りないモンだらけだがなぁ」
ばあさんが欲しいといっていた調味料や、大きめのペットボトルも抱いて寝なきゃならんし、食器もかけたのじゃないのが欲しい。
畑にある農具だと些か物足りないし、鍬やらはうちにもない。
スコップならポケットに入るかのぉ
と色々、家の中を見て回った。