第二話「目覚め」
目が覚めると知らない部屋にいた、確実にさっきまでの病室ではなかった。
部屋の壁は暖かさを感じる乳白色、可愛らしい勉強机やタンスがある。
なぜか見覚え……いや聞き覚え?のある部屋だけど、20年間生きてきてこんな可愛らしい部屋は見たことがなかった。
周りを見渡し落ち着いた頃、部屋の隅っこに小さな人影を見つけた。
隅の方を向いていて人相はわからないが、体は小さく子どもらしい。おそらく小さな子どもが膝を抱えて座り込んでいるのだろう。
あの子に話を聞けば何かわかるかもしれない。驚かせないように足音を立てながらその子に近づき、少し距離を開けて話しかける。
「私の名前は心堂 龍っていうの、あなたのお名前教えてくれる?」
ゆっくりと振り返ったその子は、どこかあの人に似ていた。しかし、あの人がこんなに大人しい印象はない。
「ーーー、ーー。」
その子は口をパクパクさせているが、音が出ていない。喋れないのだろうか?私がどうしようかと迷っていると、パタパタと走って机から一冊のノートを持ってきた。
「ーー。……ーーー。」
持ってきたノートには子供らしい丸い字で[宝沢 虎丸]と書かれている。あの人と同じ名前だ。
そこで私は思い出した。この部屋は虎丸さんに聞いていた幼い頃の部屋だ。もしかして私は虎丸さんの精神世界のようなものにいるのではないかと。
オカルティックでスピリチュアルな話だが、私が知らないはずのこの部屋や幼い虎丸さんを見ている今、そう考えるのが妥当だと納得した。
私が考えていると。難しい顔をしていたのだろう、少女が私の袖を引きノートを見せている。
ノートには「どうかしたの?」と書かれている。心配させてしまったようだ。
「なんでもないよ。それより、この家を案内してくれる?」
少女は少し考えた後、笑顔で頷き私の腕を引いた。引かれるがまま私は少女についていく。もしかしたらここに、虎丸さんが目を覚ますヒントがあるかもしれない。