検討会議
「それだけ?」
「いや、実はさ、その夢に可愛い子が出て来るんだ」
ん?
「それで、オンネトーに運命の出会いでも待ってるんじゃないかという中二病的発想となった訳だ」
「中二病の女好きか、最低だな」
「おい、酷いな」
順一は終始おどけた口調で、喋っている。
「どんな感じの子なんだ?」
「小柄な子で綺麗なロングヘアーでさ、水面に立ってるんだぜ、まぁ夢だからな」
おい、ちょっと待てっ!
確認するべきだろう。
「その夢、普段は音が無かったり、しないか?」
純一が少し驚いた顔をする。
「そして昨夜の夢から音があって、その女の子と話せたりしてないか?」
「え? 何? どういう事だ?」
「その反応はあたっているって事だよな?」
「ああ」
やばい、理由は分からないがガチのやつだ
「同じ状況なんだよ」
「・・・え? 何が?」
「昔から繰り返し、同じ夢を見るのも、女の子が水面に立ってるのも、今朝の夢で始めて会話できたってのがだよ」
「・・・何それ、マジかよ」
何だよこの状況は、すげぇイライラする。
「とりあえず、夢の内容を比較しねぇ?」
順一のその提案に相槌を打つ。
「そうだな。えっと、その夢の景色って何ていうんだろう、光が溢れてる見たいな感じ?」
「そうだな少女マンガの回想シーン見たいなイメージかなぁ」
順一のその表現は適切だ。
「後は場所が違うだけで、彼女たちが水面に立っていて、今朝の夢で始めて話をしたところまで同じか」
「蒼・・・どんな話しをした?」
順一は真剣な眼差しだ。
「少し恥ずかしい内容になるんだが・・・」
「やっぱりそうか、俺は告られた」
なっ!
何だかすげぇイライラして来た。
「似たようなもんだ、夫になる方と言われた」
順一の顔を見る。
順一も相当イライラしてるな。
落ち着こう。夢の登場人物だぞ。
「俺ら彼女が実在しているみたいな前提でイライラしてるけど、夢の登場人物だぞ。まぁ女神って言ってたのが本当で実在するなら二人の夢に入り込むとか可能かも知れないけど」
「ちっ、女神ってとこまで同じかよ、二股確定じゃん」
「落ち着こうぜ順一、たかが夢の話だ」
もう、たかが夢とは思えなくなっているんだが、自分を落ち着かせる為にも口に出す。
フレイアが夢の登場人物じゃなく実在していたら嬉しいけど、この状況は嫌だな、そもそも二股かけているなら幻滅だ。
「そもそも、あんな高飛車なタイプは蒼好きじゃないだろ? 俺はタイプだけど」
ん?
「高飛車?」
フレイアってそんなタイプじゃなかったよね
「そうだろ?」
「いや、あどけなくて礼儀正しい感じだったけど」
・・・・・・・・・・・・・・・
「蒼、その子どんな外見?」
「小柄で金髪のロングヘアー」
順一は大きく息を吐く
「こっちは黒髪のロングヘアー」
先程までのイライラが急激に引いていく。
「ヨシ、ここからは酒も入ってる事だし非現実的な方向で検討を行う」
正直、全く酔っていなかったが開き直る事にした。
「順一、ここからは隠し事無しだ。良いなっ!」
「おうっ!」
「まず俺たちは女神たちに惚れているって言うか、気になっている。そうだよな?」
「まぁ、そうだな」
ここで否定されたら俺だけが恥ずかしいところだった
「で、あの夢が何で、彼女たちが何かを確認しなければいけない」
「俺らがお互いの目的地に着けば分かるんじゃないの?」
俺は順一のその楽観的な意見を否定する。
「まて、不用意に対応すると水死体が2つあがるぞ」
「えっ! 何で」
「男を虜にして殺す悪霊や妖怪って線は無いか?」
そう思いたくはないが、可能性は結構高い。そもそも夢で何回も見ているとは言え、話したのは今朝の夢だけ、しかもごく短い時間だ。なのにフレイアの事がこんなに気になるのはおかしい。
「そ、そんな事は・・・」
「はっきり言ってこれは超常現象だ・・・正確な判断はできない」
・・・・・・
お互いしばらく無言となってしまった。
話題を変えようと思ったのか順一が聞いてくる。
「そういえば、そっちの子は名前聞いたのか?」
「あぁ。フレイアだってさ」
「何か聞いたことある名前だな」
「北欧神話の女神だな、そっちはスカアハだっけか? 」
ケルト神話だったか? でも女神だったかな、確か女王みたいな感じだった気がする。
一部のゲームには登場するがそんなにメジャーじゃない。
「ああ」
「ケルト神話か?」
「そうなのか?」
・・・・・
「なぁ、ケルト神話やスカアハって名前今まで聞いたことあった?」
「いいや」
フレイアはメジャーな女神だし、俺の夢に出てきても、不自然じゃない。
だけどケルト神話やスカアハを知らない順一の夢にスカアハが出てくるのはおかしい。
超常現象確定だ。
「なぁ・・・俺、これはマジだと思うんだけど、おまえどう思う?」
「俺は最初から期待込みで半分ぐらいマジだったんだけど、お前との話で100%マジだ」
確かに状況はアレがただの夢じゃない事を物語っている。
「そうだよな、お前朝から道東に早く行きたいって行ってたもんな。これが理由か」
確かにフレイアと実際に会えるなら、俺も早く行きたいが、何点か心配がある。
「心配事が3つあるんだけど。」
順一は無言で話を促してくる。
「まずはさっき言ったように、彼女らの目的だ。」
「俺らと付き合いたいんじゃないの?」
「だから、何で俺らが選ばれたのかが謎過ぎる。彼女らが女神だとして女神に惚れられるほど面良いか? 何か特別な力あるか?」
「確かに、そうだな。」
「後、俺はあの夢の場所は実際の神の子池やオンネトーじゃないと思うんだけど」
「何で?」
「だってあんな風に光って無いじゃん」
「うっ確かに」
「それともう1つ心配がある。神話上ではフレイアも確かスカアハも結婚してるんだ。子供もいる」
・・・・・・・・・・
「マジかぁ・・・、それは聞きたくなかった。でもさ、子供がいるような歳には見えなかったぜ」
「フレイアも子供がいるようには見えなかった。神話とは違うって事か? 分からないことが多すぎる。」
「・・・・・・・なぁ、ちょっと思ったんだけど・・・。直接、聞かねぇ?」
「え、彼女らに? どうやって?」
「夢でに決まってんじゃん」
「いや、わざとあの夢見るとか無理だろ」
「やったこと無いけど出来そうじゃね?」