街
森を進むと、何の違和感もない街並みが見えてきた。
ただ、僕の知っている街とは少し違う感じがする・・・。
何て言うか、変わった服装を着ている人がたくさんいる。
入口には何やら街の名前的なものを掲げた看板がある。
「東京街?」
とにかく文字は読める・・・どう見ても日本語だし。
でも、僕の知っている東京に東京街なんてのはないし・・・。やっぱりこの世界は僕のいた世界とは違う異世界なんだ。
適当にしばらくブラブラ歩いて行くと、建物を描いている看板を見つけた。
「あれかな?とにかく中へ入ってみよう」
「いらっしゃい」
中へ入ると、少し小太りなおじさんがいた。
「あの・・・部屋を探してるんですけど・・・」
「見た所未成年みたいだが?」
ほらやっぱり・・・。
「16歳です」
「未成年には保護者、もしくは証人となる人が必要だよ。それともお前さん何かの覚醒者かい?」
アビスが言っていた覚醒者の事かな?
でも現状覚醒者じゃない。
「いえ、違います」
「じゃ、ダメだ。覚醒者ならまだしも、一般の未成年を保護者、証人なしに部屋を貸すなんてできないよ」
「あの、一つ聞きたいんですけど覚醒者だったら何でいいんですか?」
すると、小太りのおじさんは驚いた顔をした。
「え?君、どこの国から来たんだ?世界の誰もが知っている事だぞ?」
「あ、あの、えーっと、実は記憶喪失になっちゃって・・・」
「あ~それでか。それなら仕方ないなぁ」
とっさの思いつき嘘にしちゃ相手もよく素直に受け止めたなと思った。
「覚醒者っていうのは、自然を操れる人間の事だよ。誰しもが覚醒者になれる素質はあるが実際に覚醒者になれるのはホンの一握りなんだ。だから、覚醒者は世界の貴重存在として扱われる。様は全てに対して免除なんだよ」
それはすごい。
「何で覚醒者になれるのが一握りなんですか?誰しもがその素質を持ってるのに」
「ふむ。覚醒者になれる者には属性を持つ精霊がその者を選び契約をしにくるんだよ。」
「精霊?」
小太りなおじさんは少し呆れ顔になってたが話を続けてくれた。
「あぁ。炎や水・・・一つ一つ力を持つ精霊達の事だよ。」
「す、すごいですね」
「まれに精霊の神である守護神達が覚醒者を選ぶ時もあるみたいだが・・・。まぁ、ただの噂だ。」
(守護神って精霊の神様なんだ・・・すごいなぁ・・・んん???)
僕はふと思った。アビスって確か守護神って言っていた気がする。
「あ、あの!僕、覚醒者かもしれません!!」
「な、何だ!?急に?!」
「さっき森の中で守護神アビスって言う名前の守護神と話してたんです!」
すると突然小太りのおじさんが笑いだした。
「ハーッハッハッハ!ありえない!記憶喪失でも冗談はいえるんだな。いいか?守護神は精霊の神なんだぞ?普通の16歳の子供なんか相手にする訳ないじゃないか
」
「本当なのに・・・」
でも現状覚醒者でもないし、別にアビスに契約とかの話をされた訳でもない。
困った。けど、いつまで居てもお店に迷惑がかかるだけだし僕は諦めて店を出る事にした。
「えっと、すみません。諦めます」
「そうだな。まぁ、保護者、証人がいないなら覚醒者になってからおいで。歓迎するよ」
「はい・・・」
店を出た僕はしばらく店の前に立っていたが、お腹も空いたしとりあえず飲食店を探した。
すぐ近くにファーストフード店を見つけた。マッスって書いてある。
普通はマックでしょ?少し可笑しくて笑った。
少しだけだけど、元気が出てきた。
「いらっしゃいませー」
「店の名前は違うけど、商品は同じなんだ」
「ご注文は?」
「じゃ、ハンバーガー3つとコーラのMサイズ一つ」
「ありがとうございます。千円になります」
「千円?!金額間違ってないですか?」
「はい?ハンバーガー3つとコーラMサイズ一つですよね?」
「そうです」
「計四点で千円になります」
値段をよく見ると、コーラは百円だけど、ハンバーガー一つ三〇〇円だ。間違ってなかった。
「何だか納得できないなぁ」
とか言ってたけど食べたら、満腹になって気持ちも満足。
「まぁ、いっか。でもハンバーガー三つだけでこんなにお腹いっぱいになるもんだっけ?」
とか気にはなったけど、ここは異世界。あまり考えず店を出た。