大都市の入口
グリーンブリッジの最大都市、ヴェール。
そこにはグリーンブリッジの人口の3分の1が集まっているという。
そして噂でしかないが、グリーンブリッジの緑の異能者がそこにいるという。
アシロは鉄道を下りてすぐ、人の多さに圧倒された。どこを見ても人人人。
人ばかりだ。
アルドリアール島は人口5000人の小さな島。こんな人混みは初めてだった。
上を見上げると、ヴェールの中心部か、高い塔が建っていた。
とりあえず情報収集と思い、塔をめざし、街中を歩き始めた。街に出ている店を見ながら歩いていると、ミントの言った通り、物価がアルドリアールの3倍以上だった。
ミントのところで食料を調達しておいてよかったと思う。
アシロは荷物から買った携帯食料を取り出し、かじりながら苦笑いをした。
ピピピピピピピ......
突然、音を出しながら端末が震えだした。
ポケットから取り出すと画面を見る。青白い光で光りながら、黒の文字が空中に浮かび上がる。
【公共施設通行端末をお買い上げ、ありがとうございます。ただ今からこの端末の簡単な説明をさせていただきます。】
どうやら間違えてボタンを押してしまったらしい。
どうせ使い方は知らないといけないので、道脇に寄ってその場に座り込む。
【この端末は、グリーンブリッジ専用です。公共施設に入るために必須なものであり、さまざまなことにご利用いただけます。いつも持ち歩くことをお勧めします。まず、この端末にはグリーンブリッジの地図が搭載されています。GPS機能により、自分の位置が把握できます。そのため、お子様の迷子対策にもご利用可能です】
そう説明すると同時に、グリーンブリッジの地図が浮かび上がり、数秒でまた説明に戻った。
【また、他の端末のナンバーをご登録いただきますと、連絡を取ることも可能です。次は、公共施設通行パスの説明に移ります。この端末は、公共施設の出入口に設置されています、専用パネルに画面をかざしていただきますと、端末が自動的にデータを送り、公共施設がご利用可能となります。主な公共施設は、図書館、資料館、移動エレベーター、空中移動バス、そして緑の塔、これが主となっております。他にも細かな施設や移動手段にご利用できます】
公共施設の説明がでると、文字の背景にその施設がホログラムとなって浮かび上がり、説明が終わるとそのまま消える。
【他、細かい説明、端末の機器詳細に関しては緑の塔窓口にて、説明データを配布しておりますので、それをご利用ください。これにて、端末の説明を終了させていただきます。それではいいグリーンライフをお過ごしください】
説明が一通り終わると、画面の中央に扉のマークが表示される。それを指で押してみると、メニュー一覧が浮かび上がった。
どうやらメニュー表示のマークらしい。
画面下に小さく同じマークがあったので押してみると、初めの画面に戻った。
アシロは端末をポケットに戻して立ち上がると、一息吸って、緑の塔をめざし再び歩き始めた。
数十分、何も変わることなく歩いていると、ようやく塔が見え始めた。
アシロは荷物を背負い直し、塔への一本道に足を踏み出す。
道のはじめにホログラムの看板が立っていて、緑の塔とかいていた。
「これが緑の塔か…」
つぶやき、塔を見上げる。
さっきよりも近いからか、塔はとても高く見えた。