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三姉妹が俺の恋路を邪魔しに来たッ!  作者: ゆいまる
一章 這い寄る世界
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遭遇




 気が付いた時には午後の授業はとっくに始まっており、遅刻してしまった。

 美雪からメールが来ていて放課後も忙しいらしく今日は先に帰ってて欲しいとの事だった。

 今日は朝しか会えてなくて少し寂しい気もするが、美雪も陸上部の期待のエースだし仕方ないか。

(そういや、お母さんは寺の用事とかで遅くなるんだっけか。お父さんにメールしてから帰り際晩飯の食材調達に行くか)

 今朝の母の話を思い出し今晩の献立(こんだて)を思案する。

 まあ、小さい頃からの事なのでそれなりに料理は出来る、というか覚えさせられた。

(お父さん仕事で疲れてるからって言って全然台所に立とうとしないからなぁ)

 HR(ホームルーム)が終わりすぐさま琴宮次女に人だかりが出来たのを確認してから教室を出た。

 姉へ晩飯のリクエストがあるかメールを送る。

ジャジャジャジャーン

 校門を出る辺りで【ベートーベン・運命】が響く。姉の着信音だ。

『今日は友達との集まりがあるので晩飯はいらぬ(ハート)』

 大学生は気楽そうで羨ましい限りだ。ちなみに、姉からのメールには何故か必ずハートマークが入っている。

(ふむ、献立の決定権は俺に回って来たのだがどうしようか)

 少し立ち止まり財布の中身と相談する。

 長距離荷物持って歩くのは嫌なので大型スーパーではなく家の近くの小さいスーパーで食材調達する事にする。

(なるべく荷物も軽くしたいし、お手軽に半熟目玉焼きハンバーグで良いか。となるとひき肉と玉ねぎと...)

 メニューが決まり足取りも軽くなった。




    ◇ ◇ ◇



 夕方の人通りの多い商店街、一定の間隔を空け同じ方向へ同じ歩調で歩く2人が居る。

ピタッ

 前方が唐突に立ち止まる。

 1テンポ遅れて後方を歩く人影も立ち止まる。

(どうしたものか...)

 前方を歩くのは孝太だ。

 後方から付いて来る人物には学校を出た所ですぐに気づいた。というか、向こうが自分に追いついて来た時点で気が付いた。

 最初ギョっとしたけど話しかけてくる様子もないのでとりあえず無視することにしたのだが、ここまでの道のりまでずっとこんな調子なのだ。

 そっと振り返りずっと付けて来ている琴宮次女(・・・・)の顔を見る。

 不機嫌そうに前で腕を組む次女と目が合うが、プイっと横に顔を逸らすだけでそれ以上のアクションは何もない。

(も、もしかしてあれは尾行的な事をしてるのか?それにしては堂々としすぎではなかろうか?もっとこう、気配を消すとか人ごみに紛れながら身を隠すとか、それ以前に校門出た所で本人のすぐそばまで全速力で走って来たら誰だって気づくよね!?)

 こっちが苦笑いで会釈をしても完全に無視を決め込んでいる。

 胸の下で腕を組んでるせいで多少強調されてるとはいえ中々のバストサイズだという事がわかる。

 ただでさえ綺麗な容姿で目立つのだ。やはりと言うか、すれ違う男性の(ほとん)どが彼女に視線を奪われていた。

(まあ、ここ商店街だし、流石にナンパするような(やから)はいないか)

 そう思った直後勇気ある男子高校生2人が声をかけに行っている。

 しかし、制服はだらしなく着こなし、頭は茶髪で腕や胸元からアクセサリーの(たぐい)が見える。

 琴宮次女はキッと睨み「話しかけないで!」と怒鳴りつけているが相手に怯む様子はない。

(仕方ない)

 流石に見過ごす訳には行かない。もちろん喧嘩は得意じゃない。しかも向こうは身の丈170半ばと180程もある。殴り合いになったら瞬殺されるのは明白だが、ここで逃げるのは男以前に人として終わっている。

 なんとか相手の気を逸らして琴宮を逃がした後大声で助けを呼ぶか。たとえ周囲が関わろうとしなくても不良2人は怯むだろう。その一瞬を突いてダッシュで逃げれば後はなるようになれだ。

(その後また琴宮の方に行かないように引き付けないとなあ。買い物前で荷物無くて良かった)

 馴れ馴れしく琴宮の肩を掴み、それを琴宮が払いのける。

「よしっ!」

 腹が決まった所で2人の男子生徒の元へ駆けつけよう...とした瞬間。

「HEY、YOU!」

 突如2メートル程もある巨体が割って入った。

 黒服に身を包んでいるがかなりの筋肉を誇っている事が一目で分かる。黒人で頭はスキンヘッド、目にはサングラスを掛けていた。

(どこぞのSPですかッ!!?)心の中で突っ込んだ。

 場違い過ぎて周囲が凍り付いている。もちろん男子学生2名も真っ白になって固まっている。

 黒服様はそれぞれの胸ぐらを掴み路地裏へ消えて行った。2人とも足浮いてたぞ!?

 琴宮次女は掴まれた肩をハンカチでパンパンっと払った後駆けつけようとした体勢のままボーゼンと固まっている俺に気づいてフンッと不機嫌そうにそっぽを向いた。

 その10メートル程後方に身の丈2メートルはあるだろう黒服が3名電柱の後ろからこっちを観察しつつ、内1人がインカムで何かを話している。

御三方(おさんがた)、全然隠れきれていないっすよーッ!!)

 見つけるなと言う方が無理な程目立ちまくっていた。

 ふぅ~っとため息を吐いて恐る恐る声をかける。

「あ、あの、琴宮さん?なにをしてらっしゃるのでしょうか?」

 震え声で尋ねる俺を琴宮次女はキッと睨んで来た。

「話しかけないで!今アンタを尾行してんのよ!」

(やっぱり尾行でいらっしゃいましたかぁーーーッ!?しかし、それを本人にカミングアウトするのはいかほどーーッ!?)

 表面上は「は、はぁ。」と苦笑いで済ませたが心の中で大いに突っ込ませて頂いた。

「じゃ、じゃあ俺...自分はスーパーに寄らさせてもらうので失礼しますね~」

 そう言ってお辞儀した後180度振り返りダッシュで逃げた。

「ちょ!待ちなさいっ!もっとゆっくり歩きなさいよ!」

 尾行者が尾行対象者に指示する場面とか生まれて初めて見た。というか遭遇した。。。

 前方に男子学生、その後方から美少女が追い駆け、そのまた後方から黒服巨漢3名が小さな商店街を駆け抜けるという前代未聞の異様な光景が生まれた。

「た、助けてぇええええええええッ!!」

 俺は大声で叫んだが、残念ながら周囲は関わろうとはしてくれなかった。





    ◇ ◇ ◇

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