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三姉妹が俺の恋路を邪魔しに来たッ!  作者: ゆいまる
一章 這い寄る世界
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疑惑

「少年、最近自分の生活が大きく変わった事があったろう?」

 神妙な面持ちに変わり少女は語り出す。

「大きく...変わったこと?」

「そう。たとえば、親しい人が出来たとかの」

 ふと頭の中で美雪の顔がよぎった。

「そ、それがどうしたの?」

 少女が馬乗りになったまま俺の耳元まで顔を近づけくる。

 すんすんと匂いを()いで、

「少年から一番強く香りが出ておるのじゃよ」

 あまり人に匂いを()がれる事は恥ずかしいのだけど、たぶんそういう意味じゃない気がする。

「香り?」

 少女は身体を起こし不敵な笑みを浮かべた。

「もしかしたら私達が(・・・)探してる人物かもしれんのじゃよ。」

 可愛い声に年寄り臭い言い回しでこの娘の本心は読めないが、言葉のニュアンスが俺に不吉な予感を呼び起こす。

「私に教えてくれんかの?少年。」

 ひとつ固唾(かたず)()んで彼女を見る。

 日陰の中、逆光に浮かぶ彼女は微笑んでいるもののその笑みが本心でない事は俺にだってわかる。それに今、この娘は<私達>と言った。事情は分からないが俺の頭の中、耳の裏辺りで激しく警鈴が響いてる。

「さあ~誰の事かわからないな」

 ケロっとした顔で答える。

「なに?」

 彼女の目が見開き問い返してくる。構わず続ける。

「変わった事ならたくさんあるしなあ。学年が上がったばっかでクラス替えで新しい顔も増えたし見知った3年の先輩は卒業して、後輩も出来たし。変わったことばかりだよ」

「それに今日転校生が来たし、今もこうして見ず知らずの女の子に(・・・・・・・・・・)馬乗りにされてるもんなぁ」

 そう言ってニヤリと笑みを返した。

 彼女は俺を知っていると言っていたが、(俺は君の事を何も知らない他人だ)という意味を含んでやった。

 しばしの沈黙。無言で俺の瞳を覗き込んで来ている。

「ふっ、確かに唐突じゃったかの」

 目を伏せ静かに笑いながら少女はそう言った。とりあえず開放してもらえそうだ。思わず安堵のため息を漏らす。

「それじゃあ少年、携帯を出しな」

「え"っ!?」

 満面の笑みで言われギョっとして声を漏らす。

「な、なんで携帯?」

 俺の携帯をどうするつもりだ?そんな疑念が広がる。

「もう私と少年は同じ釜の飯を食った親しい仲なのでな。番号を交換するのじゃよ」

 ゴソゴソとポケットから自分の携帯電話を出して言った。

「釜の飯?ああ、弁当の事か」

 そう来たか!と思った瞬間、ご飯粒を舐め取られた事を思い出しカァと顔が熱くなり、もし美雪に知られたらと思いサァーっと青ざめた。

 そんな俺の表情の変化に気づかず俺の制服のポケットに手を突っ込みまさぐり出す。

「あっ、ちょッ!?」

 ガサッ

「なんじゃこれは?」

 取り出したのは俺のポケットに常駐している飴玉だった。

「これじゃないのう」

 そう言って袋を開けて口に放り込む。

「違うなら食うなよ!」

 しまった!思わず突っ込んでしまった。正直この娘と関わりたくない。フレンドリーにするのは危険だ。

「梅味も中々だのう」

 俺の胸中なんか構わず反対の携帯の入ってるポケットに手を突っ込んできた。

「おっ、あったあった!」

 指先の感触ですぐ分かったようだ。

 ふとポケットの中をまさぐる彼女と目が合った。すると悪い顔でニヤリと目尻が緩んだ。


「痛ッい痛たたたたッッ!?」

「おかしい、この携帯中々取れんのう~」

「違っ!それ違ッ」

「少年の携帯はフニフニしてるのう~♪」

「お前ッ直前に携帯触れてただろッ!!」

「そうだったかの?」

 フニフニフニ

「揉むなぁーーーッ」

「おっ!この携帯膨らんできよったぞ!どんな原理なのじゃ?」

「本っ気で怒るぞッ!!」

「カッカッカッカ♪」


・・・・・・・

「グスッ...」

 恥ずかしさと情けなさでそっぽを向いてうなだれる。

「男が簡単に泣くでない」

 やっとで俺の携帯を取り上げ自分の携帯と赤外線送受信している。

「もうお婿に行けない...」

「その時は私がお婿に貰ってやろう」

 カッカッカと笑いながら言う。冗談じゃない!こんな奴のお婿に行ったらいったいどんな羞恥プレイをさせられるかわかったもんじゃない。

 パタンと折りたたみ式の俺の携帯を閉じて胸の上に置かれた。

「それじゃあ、またの。翁 孝太」

 すくっと立ち上がりやっと身体の拘束を解かれた。

 俺の携帯に着信を知らせるライトが点滅していたので履歴を覗く。

琴宮(ことみや)鈴音(すずね)

「お前、1年に転校して来たっていう琴宮の三女?」

 視線を目の前の少女に移す。

 逆光越しに少女は笑みを浮かべていた。やっぱり体格はかなり小さい。小中学生でも普通に通用するな。

 そこへ静かに風が通り過ぎ長い髪とスカートを揺らす。

「あっ」

 白とピンクのストライプ。てっきりキャラ物か動物の絵がプリントがあるかと思ったが一応年相応の下着は着けてるみたいだ。

 隠すこともせず、にこやかな笑みのまま右足を上げた。

グシャッ・・・

 顔面に黒い靴底が広がったと思った頃には俺の意識は遠のいていた。





    ◇ ◇ ◇


今回書き方を変えてみました。見やすくなったかのう

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